人生パンク道場 (角川文庫)  人生パンク道場    町田 康


 一つの質問に長い答えで15ページ。短いものは4行。どちらにも、いえ、すべての答えに町田氏のやさしさやまじめさが感じられます。こんなふうに視野が広がり深まるのなら、相談者も納得。すぐに解決とはいかなくても、忍耐強く考えて行動しようと思えたはずです。

 町田氏の小説でもそうですが、ギャグのような文章の中に散りばめられた美しい言葉の数々が心に沁みました。

 息子の進路に悩む父親への言葉。

『親が子に与えられる唯一のものは星を見て進むべき方向を知るための羅針盤。なるべく善きことをし、なるべく悪しきことをすな…。』
 あとがきの文。

「頼りない道案内であったが、しっかりと握った手だけは離さなかったという自負はある。」

何よりの答えですね。

 

 

矢村のヤ助 (かこさとし語り絵本 1) 矢村のヤ助 (かこさとし語り絵本 1)  加古 里子


 この本には、同じ作者なのに二通りの終わり方があるようです。わたしが読んだのは新しい方。

 民話には、そこで暮らしてきた人々の、子どもたちに伝えたい願いや戒め、そして楽しさが込められています。かこさんは戒めより、前向きに生きる力を伝えたいと思ったのでしょうか。

 最後の方、山鳥に手を合わせるおっかさんと、きっと口を結んだ一心に畑を耕すヤ助の、それぞれの思いが胸を打ちます。語りを聞いた女の子に

「山鳥さんを返して」

と泣かれた話もいいですね。読み聞かせの力を感じます。絵の力強さもこの話にぴったりです。


スロウハイツの神様(上) (講談社文庫) スロウハイツの神様(上)   辻村 深月

 
 初めての作家。なかなか物語に入っていけず、何度も住人紹介のページに戻ってしまいましたが、やがてひき込まれて閉じられなくなり、心地よいような、その陰に何か悲しいできごとが隠れていて怖いような気持ちで読み終えました。

 タイトルにある神様はどんな展開を用意しているのか、まったく予想できない状態で(下)に進みます。

スロウハイツの神様(下) (講談社文庫) スロウハイツの神様(下)   深村 深月


 とてもすてきな物語に出合えたのだなあと、幸せな気持ちになれる作品でした。仲間を思う気持ち、創作への情熱、そして好きな人への打算のない愛。あゝ、こんなふうにつながっていたのかと展開の見事さにも感心しました。

「小説にできることって何だろう。」その答えの半分は、多分、読んだ側にあるのだと思います。そこにいる人に思いを巡らすように、そこにある作品に思いを巡らす…。そう、「結局愛だよね。」につきますね。 

 余談ですが、(上)で出てきた狩野の好きな映画『ミツバチのささやき』、わたしも好きなのでうれしかった!

サブマリン (講談社文庫) サブマリン  伊坂 幸太郎


 重く、答えの見えないテーマですが、陣内さんのおかげで人を嫌いにならず、希望の感じられる作品でした。

 「チルドレン」から10年ぶり。はた迷惑だけど、心の中にたっぷりの愛情を隠し持っている陣内さんはすてきな大人です。迷言も多いけど名言もたくさん。監察中の青年の家に行って発した言葉、

「友達が遊びに来ているんだろうが」

を読んだときには、こちらまで胸が熱くなってしました。

 深い海の中からゆっくり光のさす方へ…伊坂さんの思いが伝わってきます。

 


4こうねんのぼく (そうえんしゃ・日本のえほん) 4こうねんのぼく (そうえんしゃ・日本のえほん)  ひぐち ともこ


 大人は悲しくて下を向いてしまうけど、子どもはこんなに素直に未来を見つめるんですね。その素直さに胸が詰まります。4光年を旅して遡れば、4光年前のあの頃が見える…。わたしも何光年か前の星に行けたらと、星を見て祈ります。星の光にはたくさんの願いがこめられているんです。

 


百年の家 (講談社の翻訳絵本) 百年の家 (講談社の翻訳絵本)  J.パトリック・ルイス,ロベルト・インノチェンティ

 

 荒れ地を拓き、家を建て畑を耕しコツコツと暮らしを組み立てる人々の素朴さと根気強さ。その暮らしを見守る石の家が静かに語ります。

「みんなが無邪気でいられた時間はすてきだった。でも、短かった。」 

 たくさんの人々が暮らしを営み、そこから旅立ち、亡くなっていきました。恐ろしい戦争もやってきました。それでも静かに佇む家。

 廃墟になった家が最後のページで華やかに蘇ります。新しい住人は、百年の歴史を知りません。新しい家にも百年の重い時間がまた訪れるのでしょうか。



[現代版]絵本 御伽草子 付喪神 (現代版 絵本御伽草子) [現代版]絵本 御伽草子 付喪神 (現代版 絵本御伽草子)  町田 康
 

 なるほど、こんなふうに世の中には意識と会話が生まれ、やがて分裂し戦いへと向かっていくのかと、賢いたちから教えられました。信仰や宗教がどうやって生まれるのか、権力を持つものから持たないものへの搾取の構造、そして、戦いの虚しさも、みんなたちに教えられました。ビームあびまくり。 

 賢いは、ときに形而下から形而上学的分野へと意識を高め、空を仰いでは自分を潰したくなったりします。恐るべし、物たち。恐るべし、町田氏。

 最後の2行「平成の今、何とかしなくては」は、ほど賢くないわたしには難しい宿題で、考え込んでいる間に令和になってしまいました。

 

 

        霧 写真を張り付けると、なぜか90度回転して横向きになってしまいます。

           諦めて文だけ。

          10連休! 娘夫婦はいつも通り出勤なので、わたしは孫といっしょ。

          子どもをみてくれる人がいない家庭はどうしているのか気にしながら

          あと2日。

          春休みと合わせて読書の進まない4月でした。