先日のクライアントが、まだまだ隠し球をもってやがりました…
あれだけ散々粉飾仕訳を見つけて訂正させたのだから、いい加減もういいだろうと思っていたら、決算書にはまだお宝が眠っていました。
今回発見されたのは、古典的も古典的、いまや公認会計士試験の監査論の教科書には(ひょっとしたら簿記論だったかも?ちょっと記憶があいまい…)必ず載っている、「カイティング」という粉飾でした。
「カイティング」というのは、小切手を利用した粉飾です。
例えばA銀行の当座口座の小切手を1億円振り出して、B銀行に持っていきます。
すると、B銀行では小切手を受け取った段階で、預金残高に1億円プラスされます。
しかし、A銀行ではその小切手をB銀行が交換所に持って行き、交換所経由でA銀行に帰ってくるまでは、預金残高を減らさないのです。
これを利用すると、本当は全財産はA銀行にある1億円だけなのに、銀行の記録上は、さも2億円の預金があるかのように装うことができるのです。(つまりA銀行に1億円、B銀行に1億円の計2億円)
通常、我々会計士は監査手続きにおいてこの「カイティング」を発見するために、小切手のカットオフ(期間帰属の適正性チェック)手続きを行います。
つまりH17.3.31が決算日だとして、H17.3.31までに振り出された小切手について、漏れなく全てが預金残高のマイナスとして帳簿に記帳されているかを確かめるわけです。(上の例で言えば、小切手を振り出した段階で、A銀行の預金残高にマイナス1億円と記帳していることを確かめるわけです。)
しかし、まことに残念ながら、今回その小切手のカットオフチェックを担当したのが、経験の浅い会計士補だったために、「カイティング」が行われていたのを見落としてしまっていました。
期末監査も終盤にさしかかったころに、ベテラン会計士が何かがおかしいことに気づき、調査を進めた結果、発覚したわけです。
しかし、知識として知ってはいましたが、まさかこの目で本物の「カイティング」を見る日が来るとは思いもしませんでした。それほどにこの粉飾手法は古典的なのです。
こんな粉飾にまで手を出さないといけないなんて、このクライアントは今後どうなってしまうのでしょうか…
(と言っても、従業員の使い込みをごまかすために行われたのではなく、単純に期末の資金手当てとして行われており、会社の方がこういう場合はどうやって会計処理すればいいのかわかっていなかっただけっぽいですが…)