俺のビジュアル道(笑) -4ページ目

貴重音源レビュー:BAISER

BAISER「配布VT」

1.E.G.O.
2.Psychotic Desire
3.発狂
4.薔薇の供物

発狂黒系からダンスビート、ポップチューンまで様々なスタイルを渡り歩いたBAISERが、真っ黒いイメージで活動していた極初期に配布した(と思われる)ビデオ。
配布時期は不明ですが、'93~'94年で、アルバム「接吻」をリリースする前であるのは確かです。

なんと、2曲が未CD化で、スタジオ音源(ブッキング用のデモテープ等はあるかもしれないですが)には収録されていない、このビデオでしか聞けない曲になっています。


#1はエレドラのビートが印象的なニューウェーブパンクをベースに、エフェクトのかかったボーカルを聞かせる曲。
演奏シーンは基本ライブシーンで、冒頭と終盤にヒットラーの演説をSEに使用したり、ドイツ軍の演習映像を加工したり、軍服ビジュアルとリンクした映像が挿入されています。

軍服の紫がかっこいい!

#2はポジパンの王道スタイルを、ビジュアル系らしいダークで攻撃的な音使いの演奏やエロティシズム満載の歌詞で聞かせるナンバー。

こちらもライブシーンにスタジオ音源を重ねている映像。
ここでは、この頃のビジュアル系らしい網網の衣装をはだけさせ、ハードなライブが行われたのが分かる映像になっています。

#3はCD「接吻」にも収録されていたナンバーですが、そこに収録されているSEやノイズをミックスしたものと違い、シンプルなバンドサウンドで聞かせるテイクになっています。(このビデオ以外では聞けないはず)
こちらも軍服紫が髪を振り乱すハードなライブ映像になっています。

#4もCD「接吻」に収録されていますが、そちらと比べるとシンプルなアレンジが施されたテイク。VA「TURN OVER "CROW"version」に提供されたテイクに近いです。
こちらは配布か何か分かりませんがデモテープの存在が確認されています。
エンドロール(と言うかメンバークレジット)に音を重ねているだけのため、ギターソロの途中でフェイドアウトしてしまうのがあまりにも惜しいです。


レーベルにも所属していないド・マイナー時代の作品のため、存在も知らない人が多いですが、極初期のライブがどんな雰囲気で行われていたか分かる貴重な映像と、未発表曲&未発表テイクのみで構成された貴重な音源になっているため、是非、コレクターでなくても見て聞いて欲しい作品になっています。

貴重音源レビュー:Feria

Feria「キリストの夢」

1.キリストの夢

名古屋の正統派ダーク&ハード&メロディアス路線のバンドFeria。


前回紹介した「爪 -a nail is stained with blood-」同様、初期メンバー(MOTOMI、Akihito、紫乃、RIN)によって作成された配布デモテープ。こちらは'99年1月13日に配布されたという情報がグラスレさんに載っていました。

教会音楽を思わせる荘重なコーラスのSEを用いたイントロダクションから一転、ハード&スピーディなビートをバックに突き進むナンバー。
こう書くと「よくある感じの曲」となりそうな印象ですが、しかし、曲の中心になるフレーズや歌メロは非常にキャッチーで、Feriaの全レパートリーを通じて「最高傑作」と呼んで差し支えない完成度になっています。

デモテープのため、音像はチープではありますが、語りの被せや、ブレイク部分にボーカルの囁きを入れることで耳に残る展開にしたり、各所に取り入れられた工夫が完璧に機能しています。
 

最後のサビの後に、一度だけ出てくるCメロも非常に印象的で、速いビートの曲にしては5分近い尺の曲を飽きさせることなく聞ける曲構成に仕上げているところは、非凡な才能が発揮されていると言えます。
 

また、間奏のギターソロもかなりテクニカルで、ボーカルラインのテンションをしっかり後半へ引き継ぐよう、縦横無尽にフレーズを聞かせる、かなり高いレベルで聞かせてくれます。

「ダーク&ハード&メロディアスとはこうやるべきである」というお手本のような曲で、この頃のビジュアル系をこよなく愛する人なら絶対に聞いて欲しい一曲。


と、完全自主制作でここまでの曲を完成させたポテンシャルは非常に高いのですが、全国販売したデモテープでは、この曲の再収録も無く、少々難解な楽曲展開とハードさに偏った曲を収録していたため、バンドの印象がイマイチぱっとしなくなってしまっていたのが少し残念。

ここまでのキラーチューンになり得る楽曲があったのなら、もっとそこを推していっても良かったかなぁ…と。


なお、楽曲としては、MOTOMIが歌ったテイクはこのデモテープでしか聞けず、その後、ボーカルがTETSUYAに変わった際、インフォメーションクラブ会員限定で作ったデモテープに再録ver.を収録。
後者はベストCD「終焉の響き」に収録されています。

「ヘタ」とまでは言わないけど、「上手い」とは口が裂けても言えないMOTOMIのボーカルと違い、声量も音感も安定感抜群のTETSUYAのテイクは、この曲の魅力が100%引き出されており、ダークビジュアル系の名曲として挙げても差し支えないレベルなので、全ビジュアル系ファン必聴の1曲になっています…が、あまりにもレアな楽曲のため、誰ともこの思いが共感できなくて、非常に辛いです。


名古屋ビジュアル系の至宝…になり損ねたバンドの最高傑作。
その実力は、見かけ倒しとはかけ離れた、ビジュアル系史上にも残せうる名曲。

貴重音源レビュー:Feria

Feria「爪 ~a nail is stained with blood~」

1.爪 ~a nail is stained with blood~

名古屋の正統派ダークビジュアル系バンドFeriaが、初期編成(MOTOMI、Akihito、紫乃、RIN)の頃に作成・配布したデモテープ。

1stDT「氷の籠」リリース後に配布されたようですが、正式な日と会場は不明。
恐らく、100本程度の配布と思われます。


「氷の籠」の時点で、SEや語りを効果的に使い、同時期の新人インディーズバンドの中では、ビジュアルだけでなくサウンド面、楽曲アイデア等のセンスやアレンジ力、完成度は頭一つ抜けていた印象のあるバンドですが、こちらも「配布だけで終わらせるには惜しい」完成度の高い楽曲になっています。

語りにディレイをかけたイントロダクションから、浮遊感のあるリフ、さらに疾走感に乗せたメロディアスなギターリフへと繋げるイントロの展開だけで「おっ!」と思わせてくれます。

さらに、ゆったり歌いだすAメロから一転、シャウトの掛け合いが入るハードなBメロ、疾走感に乗せてキャッチーなメロディを聞かせるサビ…と、ダーク&ハード&メロディアスを順番に(しかも無理なく)聞かせる楽曲構成力はレベルの高さをうかがわせてくれます。

速弾きで一気にボルテージを上げ、メロディアスに聞かせるギターソロもなかなかテクニカルで◎。


この楽曲は、ベースの紫乃が脱退したライブ(か、新ベーシストとの最初のライブ)で「爪と十字架…」のタイトルで再録し、再配布されています。
そちらのテイクは解散後にこっそりとリリースしたベストCD「終焉の響き」でも聞けるのですが、最初に配布されたこちらのテイクはこのデモテープでしか聞くことが出来ません。

元々100本程度の配布であり、さらに、バンド自体が根強い人気を持っているため、市場にはなかなか出てこなく、出てきても「それなりの値段」で扱われることが多いです。

しかし、楽曲としては、正統派名古屋ビジュアル系のかっこいい所を詰め込んだような魅力を有しているので、オークションに出てきたときは、多少無理をしても聞いてみて欲しいです。


なお、配布テープですが、上質紙にしっかりと印刷されたジャケット、業務用テープにラベルがしっかりと貼付されているので、この手の配布テープでは真贋は分かりやすいです。

貴重音源レビュー:CRUNCH

CRUNCH「Hi CANDY!」

1.Hi CANDY!

ex-STELLA MARIAのNaoya、ex-wyseのNatsuを中心に(当時、ショップではそこ推しだった)結成されたCRUNCH。

メロコア調の、アップテンポでパンキッシュな演奏とキャッチーなメロディを聞かせるスタイルが、青春パンク全盛だった時代に合い好評を博しましたが、バンド自体は非常に短命で、1年経たずに自然消滅してしまいました。

こちらは、結成後間もなく作成されたDT「くらクラ」リリース後の東名阪ツアーで配布された1曲入デモテープ。
東名阪揃えると背帯部分が繋がるデザインになっています。(こちらは大阪版。他の会場デザインは見たこと無いです)


ヘビーなイントロダクションから、ファンキーなリフとキメキメの跳ねたリズムで聞かせるアップテンポなロックチューンになっています。

線は細いながら、エモーショナルに声を絞り出すボーカルも、スタイルに合っていて○。

難しい展開をするリズムながら、機械的にならず、ほど良いラフさで聞かせる楽器陣も、全国区のバンドで名を馳せたのも伊達じゃないレベル。


前述のとおり、短命で、音源も3曲しか残されていないのが残念になる、良いバンドです。


ミクスチャー、メロコア、ファンクと、当時の流行をそのまま取り入れたと感じる部分もありますが、端々にビジュアル系らしさを失ってないアレンジが聞けるため、15年以上経った今聞いても、(サウンドのチープさは否めないですが)スタイルの古臭さはあまり感じず、流行をビジュアル系風に上手く料理している、という意味では昔から繰り返されてきたビジュアル系の処世術を垣間見れるような一曲…バンドです。


実は、関西ビジュアル系の集結したスーパーバンドだったのかもしれません。

全員が引退してしまった今、いまさらこのバンドの復活は無いと考えていいでしょうが…その時代にどんなスタイルが売れていて、ビジュアル系にその波が来ていたのかが分かるという意味で、良い資料・サンプルのような気がします。
 

貴重音源レビュー:TRESOR

TRESOR「Psycho -prototype-」

1.Psycho -prototype-

ex-Freesiaのメンバーが中心となって'99年から活動していた大阪バンドTRESOR。
メンバーチェンジが多く、後期では同じくFreesiaを母体としていたMystic Moonのメンバーが合流し、解散後にギターのKenとRyu(このデモテープの時点ではRyuは加入前)はドレミ團のツインギターとしてメジャーシーンで活躍する他、出入りしていた人間がその後のシーンで存在感を見せるバンドに在籍しているのが面白いです。


こちらは'00年3月23日、大阪BIG CATで配布されたデモテープ。ジャケットが3種類あるそうですが(グラスレ調べ)、他のデザインは見たことありません。

勢いのあるビートに乗せて、攻撃的なシャウト主体のボーカルを聞かせるハードナンバーになっています…が…

ボーカルの声量が弱々しく、細い声質でおまけにスタミナ切れで後半息切れ…と、カラオケで調子外れに叫んでるような印象で、ボーカルがとにかくガッカリ。

ツインギターにはなっていますが、ほとんどシングルのような印象。しかしながら、シンプルながら勢いのあるリフ、緩急つけたギターソロと、なかなか面白いプレイを聞かせてくれています。

バックのレベルは及第点以上ですが、ボーカルがとにかく残念。


当時のビジュアル系として、レパートリーに煽れるハードナンバーを用意しておくのはお約束だったとは言え、あまりにもボーカルキャラに合わないスタイルのため「これは無い…」となってしまうのが正直なところ。


ボーカルがボイトレで力強くなり、声質に合った曲を揃えていたら…バックのレベルを考えるとまだまだ伸びた気もしますが…

当時のビジュアル系が「やらないといけない」と思い込んで、無理矢理やって空回り…という悪例のような一曲。

音源として非常にレアですが…無理して聞くことはないかな…