貴重音源レビュー:Feria | 俺のビジュアル道(笑)

貴重音源レビュー:Feria

Feria「キリストの夢」

1.キリストの夢

名古屋の正統派ダーク&ハード&メロディアス路線のバンドFeria。


前回紹介した「爪 -a nail is stained with blood-」同様、初期メンバー(MOTOMI、Akihito、紫乃、RIN)によって作成された配布デモテープ。こちらは'99年1月13日に配布されたという情報がグラスレさんに載っていました。

教会音楽を思わせる荘重なコーラスのSEを用いたイントロダクションから一転、ハード&スピーディなビートをバックに突き進むナンバー。
こう書くと「よくある感じの曲」となりそうな印象ですが、しかし、曲の中心になるフレーズや歌メロは非常にキャッチーで、Feriaの全レパートリーを通じて「最高傑作」と呼んで差し支えない完成度になっています。

デモテープのため、音像はチープではありますが、語りの被せや、ブレイク部分にボーカルの囁きを入れることで耳に残る展開にしたり、各所に取り入れられた工夫が完璧に機能しています。
 

最後のサビの後に、一度だけ出てくるCメロも非常に印象的で、速いビートの曲にしては5分近い尺の曲を飽きさせることなく聞ける曲構成に仕上げているところは、非凡な才能が発揮されていると言えます。
 

また、間奏のギターソロもかなりテクニカルで、ボーカルラインのテンションをしっかり後半へ引き継ぐよう、縦横無尽にフレーズを聞かせる、かなり高いレベルで聞かせてくれます。

「ダーク&ハード&メロディアスとはこうやるべきである」というお手本のような曲で、この頃のビジュアル系をこよなく愛する人なら絶対に聞いて欲しい一曲。


と、完全自主制作でここまでの曲を完成させたポテンシャルは非常に高いのですが、全国販売したデモテープでは、この曲の再収録も無く、少々難解な楽曲展開とハードさに偏った曲を収録していたため、バンドの印象がイマイチぱっとしなくなってしまっていたのが少し残念。

ここまでのキラーチューンになり得る楽曲があったのなら、もっとそこを推していっても良かったかなぁ…と。


なお、楽曲としては、MOTOMIが歌ったテイクはこのデモテープでしか聞けず、その後、ボーカルがTETSUYAに変わった際、インフォメーションクラブ会員限定で作ったデモテープに再録ver.を収録。
後者はベストCD「終焉の響き」に収録されています。

「ヘタ」とまでは言わないけど、「上手い」とは口が裂けても言えないMOTOMIのボーカルと違い、声量も音感も安定感抜群のTETSUYAのテイクは、この曲の魅力が100%引き出されており、ダークビジュアル系の名曲として挙げても差し支えないレベルなので、全ビジュアル系ファン必聴の1曲になっています…が、あまりにもレアな楽曲のため、誰ともこの思いが共感できなくて、非常に辛いです。


名古屋ビジュアル系の至宝…になり損ねたバンドの最高傑作。
その実力は、見かけ倒しとはかけ離れた、ビジュアル系史上にも残せうる名曲。