Virus Control -2ページ目

事例6

Legionella pneumophilaにより汚染された、経食堂超音波プローブを挿入された患者3例に、レジオネラ肺炎患者が発生している。

通常、レジオネラはエアロゾル化した飛沫を吸入して発症するが、本例はプローブを洗浄した水がレジオネラで汚染されている事が判明しており、汚染プローブを食道内に挿入した時にレジオネラが肺へ吸引され発症したものと考えられた。


事例5

M.ChelonaeやM.Xenopiにより汚染された耳鼻科の器具や湯沸かし器の水から患者に感染し、それぞれ中耳炎、肺炎が起こった事が報告されている。

非結核性抗酸菌は、次亜塩素酸やグルタラールにも耐性傾向があり、消毒前の十分な洗浄が必要である。


事例4

凍結血漿などの血液製剤の溶解や、腹膜透析用の透析液の加温に使用した37℃の恒温槽内で、アシネトバクター属やシュードモナス属が繁殖し、心内膜炎、菌血症、腹膜炎を引き起こした事例が報告されている。

恒温槽の洗浄、消毒、水の交換などの管理を十分にすることと、製剤はプラスチックなどの袋に入れて、直接水に接しないようにする事が重要である。

また集中治療室でのカーテンが集団発生の一因となったとの例もある。

事例3

気管吸引チューブの洗浄水がPseudomonas pauchimobilisで汚染されており、集中治療室で感染症発症を含む感染が報告されている。

気管の吸引はシングルユースのチューブを使用することが原則である。

また洗浄水は滅菌された水を使用する。



事例2

多数回使用するバイアル(リドカイン)の汚染による関節・軟部組織感染の集団発生が報告されている。

米国の外来診療で、黄色ブドウ球菌により内部汚染されたリドカイン・バイアルが複数の患者に使用されたため、汚染リドカインを注射された17人の患者のうち5名に関節及び軟部組織の感染症が発生した。

リドカインは製造元の指示は室温保存であったが、冷蔵保存したためバイアル内で黄色ブドウ球菌が生存し続け(約2週間)、汚染したバイアルで関節内や軟部組織に注射後、感染症が発生した。

薬剤の保管方法と取り扱いを常に確認し、多数回使用するバイアルより単回使用のバイアルを使用する事が必要。

事例1

1996年1月

東京都新宿区の大学病院で、レジオネラ菌による病院感染が原因で、新生児3人が肺炎や気管支炎を起こし、内1人が死亡した。

新生児室の給湯設備の湯からは検出されておらず、タンクから蛇口までの配管の途中で菌が増殖していたとみられる。

同病院の給湯設備の温度は60℃に設定してあり、蛇口付近の水温は50℃まで下がっていた。

また、ミルクの加温器、加湿器などからも菌が検出され、加湿器によって病室(新生児室)に充満した結果、集団感染した可能性があるとみられている。

マルトフィリア菌

マルトフィリア菌(Stenotrophomonas Maltophilia)


グラム陰性菌の中で緑膿菌に次いで頻回に臨床材料から分離される菌である。

しばしば長期に抗菌剤を投与されている時に菌交代減少として分離される。

カルバペネム系を含むβラクタム系やアミノグリコシド系に耐性であり、肺炎、菌血症、尿路感染、髄膜炎、創部感染などを引き起こす。

創部感染と汚染された氷による集団発生の例がある。


セパシア菌

セパシア菌(Burkholderia cepacia)


病院感染の起炎菌として重要である。

緑膿菌と同様、様々な湿潤な環境下で生存増殖する。

本来、病原性は少なく広域抗菌剤を使用した後に菌交代減少として出現する事が多く、呼吸器感染、尿路感染、菌血症など日和見感染症として発症する。

人工呼吸器の温度計、IABP(動脈内バルーンポンプ)の貯水槽、血液ガス分析器、ポビドンヨード液、多数回使用のバイアル、ネブライザーの汚染による集団発生の例がある。


アシネトバクター属:アシネトバクター菌

アシネトバクター属アシネトバクター菌(Acinetobacter baumanii/calcoacetics)


アシネトバクター菌は土中や水、或いは病院の環境や人の皮膚常在菌として分離され、セフェム系に耐性であり、近年分離頻度が増加する傾向と共に、カルバペネム系薬耐性菌(メタロβラクタマーゼ産生)も報告されるようになっている。


病院感染としては保菌から肺炎や敗血症などの日和見感染症を引き起こす。

クロルヘキシジンに抵抗性があるので、要注意。

蘇生器、人工呼吸器、アンビューバッグ、輸液製剤、加湿器、圧モニターのトランスデューサーの汚染による集団発生の例がある。


シュードモナス属:緑膿菌

シュードモナス属緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)


シュードモナス属は土壌、植物、汚水、有機物中に認められ、病院環境では湿潤な場所を好み、食物、切り花、流し、トイレ、床掃除のモップ、呼吸器具、透析器具などや時には消毒剤からも検出され、わずかの栄養でも増殖する事ができる。


緑膿菌はシュードモナス属の起炎菌であり、他にP.putida、P.pickettiiなどがあるが、その中でも緑膿菌は病院感染起炎菌の代表であり、様々な病原因子を生み出し、肺炎、皮膚感染、尿路感染、菌血症などの感染症を引き起こす。


通常は入院患者や慢性的な疾患のある患者以外で保菌する事はあまりなく、日和見感染症として発症する。

よって、宿主の状態が保菌から発症へのステップを左右する。

注射用水や含そう水、熱傷患者の洗浄に使用するシャワーの汚染による敗血症、理学療法用のプールの汚染による毛嚢炎、内視鏡からの感染などの例がある。