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レジオネラ菌

レジオネラ菌(Legionella pneumophilla)

レジオネラ菌


レジオネラ菌は様々な自然或いは人工的な水環境に生息し、医療施設の上水道システムに微量で侵入し、ビルのクーリングタワー、シャワーヘッド、蛇口、呼吸器療法用の器具、加湿器などの環境で増殖する。

レジオネラ菌は水温25℃~42℃、水流のよどみや水垢、自由アメーバの存在、これらの条件が揃うと爆発的に増殖し、エアロゾルにより空気中に飛散し、これを吸い込む事により感染する。


近年ではレジオネラによる病院感染予防が重要視され、水道水のレジオネラ対策が実施されているが、熱水や塩素による消毒では十分な効果が得られず、水道水の紫外線照射、二酸化炭素、銅銀イオン化装置、モノクラミンなどによる上水の消毒が試みられ、効果を上げている。


参考→厚生労働省:レジオネラ症防止指針

   

マイコバクテリウム属:非結核性抗酸菌

マイコバクテリウム属(Mycobacterium spp.):

非結核性抗酸菌(Non-Tuberculous Mycobacterium:NTM)


非結核性抗酸菌(NTM)は、水道水から検出されるが、自然界や病院環境中に存在する。

病原性はきわめて低く、宿主側の免疫状態と大きく関連する日和見感染症の起炎菌である。

病態として成人での肺疾患、小児での頸部リンパ節炎、軟部組織・骨感染症、エイズなどの免疫能低下患者の全身感染症を引き起こす。


NTMと結核菌との大きく異なる部分は、たとえ排菌していても人から人へ感染する事が極めて稀で、水に関連する器具・器材などを介して感染していく事である。

しばしば起こるのがNTMで汚染された水で洗浄された気管支鏡である。

M.chelonae、M.gordonae、M.xenopiが気管支洗浄液で検出された場合は胸部レントゲンや臨床症状を考慮して判断が必要である。

塩素系の消毒薬には耐性であり、M.aviumやM.kansasiiはアルデヒド系の消毒薬にも高度耐性であるので注意が必要である。



微生物で汚染された環境や器具からの病院感染Ⅱ

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供給源となる環境 微生物 感染経路 頻度(重要性) 感染対策
空気フィルター アスペルギルス 空気 中等度 汚染フィルターを定期的に交換
加湿器
ネブライザー
レジオネラ
アシネトバクター
空気
飛沫
高度 使用しないことが一番
使用時には減菌水を入れ、容器は使用ごとに消毒
病院外での建築 リゾプス
アスペルギルス
空気 高度 95%のフィルターを院内で使用
鳩の糞 アスペルギルス 空気 低度 病院全体の空気を濾過
吸入液 緑膿菌
クレブシエラ
セラチア
吸入 中等度 無菌操作で準備
シャワーヘッド レジオネラ吸入 低度 易感染性患者には使用しない
気管支境緑膿菌
セラチア
結核菌
接触 中等度 ガイドライン遵守
人工呼吸器 緑膿菌 吸入 中等度 ガイドライン遵守
汚染された消毒剤 緑膿菌 接触 高度 外部からの汚染防止
透析液 グラム陰性桿菌 接触 中等度 ガイドライン遵守
心電図電極 グラム陰性桿菌
黄色ブドウ球菌
接触 なし 使用後の消毒
ディスポ使用
電子体温計 クロストリジウム
デフィシレ菌
接触 低度 使用ごとに消毒
消火器内視鏡 サルモネラ
緑膿菌
接触 高度 適切な洗浄と消毒
ベッドマットレス 緑膿菌
アシネトバクター
接触 中等度 マットレスカバーの使用
湿布薬 緑膿菌
バチルス
接触 中等度
水道水 緑膿菌
結核菌
フラボバクテリア
セラチア
アシネトバクター
レジオネラ
接触 中等度 水準基準に準じる
圧トランスデューサー 緑膿菌
エンテロバクター
セラチア
接触 中等度 無菌操作
ディスポ使用

微生物で汚染された環境や器具からの病院感染Ⅰ

<><><><>                       
供給源となる環境 微生物 感染経路 頻度(重要性) 感染対策
手洗いシンク 緑膿菌 接触
大きい飛沫
低度 汚水と手洗いは別にする
吸引器具 クレブシエラ
サルモネラ
緑膿菌
プロテウス
接触
大きい飛沫
低度 エアロゾル化防止
適切な消毒
水銀体温計 サルモネラ 接触 低度 毎回使用後に消毒
尿量測定器材 セラチア 接触 中等度 患者ごとの消毒
手洗い
電気搾乳機 緑膿菌
クレブシエラ
セラチア
摂食 中等度 ガイドライン遵守
経腸栄養器材 グラム陰性桿菌 摂食 低度 無菌的取り扱い
冷蔵保存
閉鎖システムの利用
食事サルモネラ
黄色ブドウ球菌
クロストリジウム属
ビブリオ属
A型肝炎ウィルス
ノーウォーク・ウィルス
摂食 高度
製氷機と氷 レジオネラ
エンテロバクター
緑膿菌
サルモネラ
クリプトスポリジム
摂食
接触
中等度
カーペット なし 高度な汚染を避ける
生花 グラム陰性菌 なし ICUや易感染性患者の部屋では使用しない
新鮮野菜 好気性グラム陰性桿菌
リステリア
なし 易感染性患者では使用しない
ペット(愛玩動物) サルモネラ なし
聴診器 ブドウ球菌 なし 定期的に消毒剤で清拭
トイレ なし 手洗いが重要
医療廃棄物 なし

環境から感染を証明するための7段階レベル

レベル1 環境表面(或いは物品器材)上で微生物が生存できる。

レベル2 環境表面(或いは物品器材)から感染の原因となった微生物が分離される。

レベル3 原因微生物が環境表面(或いは物品器材)上で増殖可能である。

レベル4 感染の原因として他の伝播経路では説明できない。

レベル5 比較対象研究で汚染器材への曝露と感染との関連が証明される。

レベル6 前向き研究(prospective study)で汚染器材への曝露を患者の一群に割り付けた場合、曝露と

      感染との間に関連性が認められる。

レベル7 原因除去により感染が減少または消失する。



環境整備で得に問題となる微生物

1.環境には多くの微生物が存在するため、清潔・・・つまり微生物の種類と量を感染しない程度に減らす

  が病院感染対策における環境整備の基本である。

2.レジオネラは水道水や加湿器、ネブライザーの管理が重要であり、アスペルギルスは病院の改築時に

  注意が必要となる。

3.グラム陰性桿菌は水や水周りに繁殖するので、環境や器具はよく洗浄、消毒した後、完全に乾燥させ

  る。

4.乾燥環境に長期生存するMRSA、VRE、デフィシル菌は丁寧な清掃、あるいは低度消毒薬(芽胞化し

  たデフィシル菌には無効)による清拭が必要である。

5.非結核性抗酸菌は水周りに存在し、塩素系やアルデヒド系の高度消毒薬に耐性傾向がある。