人間の脳のパフォーマンスは、親から受け継いだ遺伝子と、栄養、育児、社会的交流、ストレス、病気など多くの外部要因との相互作用で決まります。
ということは、少しでも頭を良く働かせるためには、遺伝子は変えられないので、食事などの外部要因をどうにかする他ありません。
妊婦のお腹の中の赤ちゃんだけでなく、大人でも、中枢神経系の幹細胞は分化【*1】を続け、大脳の神経細胞やグリア細胞が作られているそうです。
*1 分化:細胞が分裂を繰り返し、ある特定の機能を持つ細胞になること
その脳に大切な栄養素は、主に以下にあげる脂質と微量栄養素になります。
①脂質
脳の(乾燥重量の)半分は脂質で、脳内の脂肪酸の約50%はアラキドン酸(n-6系)とDHA(n-3系)です。
これら脂肪酸の摂取は、胎児・新生児の海馬の細胞増殖に影響を与えるようです。
また、DHAは認知能力に関連する機能をコントロールし、神経細胞の分化を促進させ、脳内の遺伝子発現に影響を与えます。
ホスファチジルセリン(リン脂質の一種)は、脳内の信号送受信に重要な働きをし、この物質の補給で、認知機能の低下を防ぎ、記憶力の向上を助けます。
ガングリオシド(スフィンゴ糖脂質の一種)【*2】は、細胞間認識や細胞接着、細胞の運動性、成長などの機能を仲介します。ガングリオシドの構成成分であるシアル酸は、脳の発達、学習、記憶に関与します。
*2 ガングリオシドとは、糖鎖上に1つ以上のシアル酸を結合しているスフィンゴ糖脂質の一種
多く含む食品
アラキドン酸(n-6系):肉類、魚類、レバー、卵。アラキドン酸は、ナッツ・種実類、豆類などに多く含まれるリノール酸から体内で合成されます。
DHA(n-3系):脂ののった青魚。DHAは、亜麻仁油、えごま、くるみなどに多く含まれるα-リノレン酸から体内で合成されます。ただし、リノール酸の摂取量が多いと、体内での合成が阻害されます。
ホスファチジルセリン:さば、鶏の心臓、レバー、ニシン、白豆、まぐろなど
参考文献:健達ネット「認知症に対するホスファチジルセリンの効果は?」
ガングリオシド:野菜、果物。特にさつまいも(特に皮)。
参考文献:日本油化学会誌 9 (10), 473-481, 2009
食材食品ナビ「ガングリオシド」
②微量栄養素
・ビタミンB6、葉酸、ビタミンB12、コリン、グリシンべタイン【*3】などはホモシステイン濃度と関連し、脳の発達に関与する代謝と関連しています。
・ビタミンD:シナプス伝授の重要な役割を持つカルシウムの腸管吸収を良くする
・鉄:正常な脳の発達、ミエリン鞘形成、神経伝達に必要。
・亜鉛:神経発生、神経細胞の移動、シナプスの形成、ミエリン鞘形成、細胞内・
細胞間信号伝達の調節など
・ヨウ素:甲状腺ホルモンの合成に必要。甲状腺ホルモンは胎児・出生後初期の
正常な脳の神経細胞の移動とミエリン鞘形成に必要。
*3 グリシンベタイン:トリメチルグリシンともいう有機化合物。多くの生物体内に多く含まれ、野菜、キノコなどの植物にも含まれる。特に甜菜に多く含まれる。
参考文献:wikipedia「トリメチルグリシン」
多く含む食品
ビタミンB6:さつまいも、バナナ、ピスタチオ、かぼちゃ、モロヘイヤ、かぶの葉
葉酸:緑の濃い葉野菜、アスパラガスなど
ビタミンB12:卵、乳製品など動物性食品。
コリン:卵、大豆、ささげ
グリシンベタイン:野菜、キノコなどの植物。特に甜菜。
ビタミンD:きくらげ、しいたけなどきのこ類
https://ameblo.jp/vege-dietitian/entry-12793718255.html
鉄:大豆製品、緑の濃い葉野菜など
亜鉛:豆類、ナッツ類など
https://ameblo.jp/vege-dietitian/entry-12794461638.html?frm=theme
ヨウ素:昆布、わかめ、のりなどの海藻類
「ブレインフード」たくさんありますが、取り入れやすい食品から、毎日の食卓に取り入れていきましょう~
参考文献:「脳に良い食品ー脳のパフォーマンスと健康に果たす食事の役割」
栄養学レビュー No.115 2022 Winter p109~129