有史以来、原発事故はスリーマイル、チェルノブイリに次ぐ3件目。事故の規模としてはレベル7でかつ原発4基が同時に爆発/メルトダウンと言う最大規模だし、温暖化防止の切り札として原発建設を世界的に進める中で冷や水をかぶせる形となったことでインパクトも大きかった。
経済的には併せて南欧諸国=PIIGSの破綻が、世界中の経済を大きく揺さぶった。
EUの共通通貨ユーロを基軸とする経済統合が危ういものであることを示してしまった。ギリシャでは過去の政権が債務残高等を偽って国債を乱発し、イタリアではベルルスコーニが人気取りのバラ撒きを続けた挙げ句、債務が膨らみ国債が消化されなくなった。
その結果、歴史的な円高になってしまった。
国内経済では、リーマンショックから漸く立ち直りかけたところに大震災に見舞われた。直接の被災もさることながら、東北の電子部品工場等の被災でサプライチェーン全体がストップする事態となった。
しかし、危機に連帯して立ち向かって回復するのは日本は強い。やるべきことが明確だから。早期に回復してV字というかナイフエッジの回復を見せた。
そこへ欧州危機と円高である。
日本企業はこれまでも何度も限界と言われてきたが、輸出産業の国内立地はさらに厳しくなった。中小企業は海外への進出を一段と進め、M&Aも多くなった。大企業は、国内生産拠点を縮小し海外へ拠点を移し、また海外企業の買収を進めた。
要は国内の売上はもう狙わず、利益だけは何とか確保したいと言うことだろう。
IPO環境は、前年よりはIPO企業数は増えて、38社となった。年間200社以上がIPOした2002年と比べるとまだまだ六分の一の水準だ。調達金額ではさらに少ないだろう。
大型IPOは今年はカルビーとネクソンくらいだ。ネクソンが他国市場でなく東証でIPOしたのは良かったが、日興アセットは上場を延期した。
また、ベンチャーIPOとしては、ディジタルメディアプロフェッショナルやモルフォ、ブレインパッドと言った注目ベンチャーが上場してそれなりに高く評価されて良かったが、一方、ベルグアースなどは公募価格ベースですら時価総額が10億円に満たなかった。まだまだ新興市場に対する投資家の評価は厳しいものがある。さらに問題なのは依然として機関投資家が無視しつづけていることだ。
まあ、経緯は複雑なものがあるものの、プロ向け市場の東証AIMにメビオファームが上場した。しかし、上場したと言っても、公募はなく、日々の取引もほとんどない。ひょっとすると皆無かも知れない。連日、新聞のメビオファームの行には「ー」(取引なし)になっている。
そして、終盤になって大王製紙とオリンパスの不祥事が発覚して、日本の企業統治に大きな疑問符がついた。どちらもその間抜けさには唖然とさせられるものだ。大王製紙はFXで空けた損失をカジノで取り返そうとした経営者の発想も呆れ返るし、数十億円を黙って融通した財務もそれを見逃した取締役も監査役も間抜けだ。オリンパスもバブルに踊らされて大穴を空けた当時のトップにも呆れるが、それを公表できなかった肝の小ささにも呆れる。可哀想なのはそれを引き継いだ経営者で、前任者の不祥事を暴く勇気が無かった。それを穴埋めするために無謀なM&Aを断行する勇気はあったのに。
こうして2011年を振り返って見ると、2011年は成長しようとするとモグラ叩きのように叩かれ潰されて、成長しきれなかった一年のような気がする。ただ、成長しようとするモチベーションとパワーは感じさせるものがある。どうしたら、ハンマーで頭を押さえつけられずに成長できるだろうか。