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Walking in the Air

ファンタジーPBCサイト「鉱山都市フランネール」の登録PC、ニコルの活動日記です。



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入院というのは酷く退屈だ。


病人であれば本当に大人しくしている他ないけれど、あたしは別に病気じゃない。


だから、なんとかして脱走したいといつも思ってるんだけど―――


世の中そう甘くはないみたい。



施療院に入院して、数日が経過した。

準備も何もなく担ぎ込まれたものだから、着替えがなくなってしまって。

施療院で売ってる下着やシャツを買うのも勿体無いものだから、こっそり家まで取りに帰ることにした。


こっそり、誰にも見つからないように家に行こうとしたんだけれど―――

それは傍から見ればバレバレだったらしい。

後ろから唐突に声を掛けられると、あたしは心臓が口から飛び出るほど驚いてしまった。


あたしに声を掛けてきた人は、カヴォロさんという自警団員だった。

彼に施療院を脱走してきたことをすぐに見破られ、お説教を食らう。

……でもまあ、本当に見つかりたくない人に見つからなかったのは、不幸中の幸いと言えなくもない。


とりあえず自警団にいる友達にだけはバラさないで、と彼に口止めを。

代わりに、彼にはそのうちこっそりとお酒の差し入れをする―――ということで合意した。

こんな裏取引は悪いことだとは分かってるけど……ま、まあ、魚心あれば水心ってことで……。


彼と色々な話をして、最後には家まで行って着替えを取ってから、施療院に戻るまで護衛して貰った。

なんとなく、ぐうたらなダメ団員ってイメージの人だったけれど……

案外、能ある鷹は爪を隠すっていうのは彼のことなのかもしれない。



遭遇者:カヴォロ

ひとりで強大な敵と相対するのには限界があるというのは、先日知った。


でも。


それを知っていてもなお、ひとには独りで事を成さなくちゃならない時がある。


―――あたしにとっては、それが今日だった。



両親の仇、黒い翼のヴァンパイア。

彼を倒さない限り、永遠にパパとママは呪われたままだ。

あたしの出した果たし状に、彼は意外なほどあっさりと応じた。

「父親と同じ運命を辿る娘が助けを求める姿を見たい」と、彼は言った。


あたしは彼と闘う時に備えて、充分に支度をしてきたつもりだった。

武器を揃え、以前の記憶を頼りに何度も闘いをシミュレートした。


なのに。


あたしのそんな小細工を嘲笑うかのように、彼は圧倒的な力であたしを捻じ伏せてきた。


剣は砕け、聖別された釘も撃ち尽くし。
胸元を、腕を断たんばかりに斬りつけられ、鞭を振る力もなくなった。

彼の容赦ない攻撃にあたしは全く太刀打ちできなかった。

―――分かっていたことではあったけれど。


そんな彼の胸に杭を突き立てることが出来たのは、全くのまぐれだった。

思えばもうぐったりしてしまった半死半生のあたしを見て、彼が油断したのが原因だったのだろう。

それから先のことは、もう覚えていない。


気がつけば、あたしはまた施療院のベッドの上にいた。

彼が死んだのか、それともまだ生きているのか―――それは分からない。


でも。


生きているなら、また―――追いかけるだけだ。



遭遇者:シメオン

背中を、そして時には命さえ預けてもいいと思うパートナーの存在。


そんな相手がいれば、多少の無茶も出来る。後顧の憂いなく闘うことが出来る。

志を同じくする、呼吸の合った仲間。


そんな仲間や友達に恵まれたあたしは、本当に幸せ者だ。



かねてからの約束通り、セリの弟子シアと一緒にグレニッツ廃坑へ原石を取りに行く。

どんな魔物がいるかも分からない危険な廃坑に潜るというのに、シアとあたしはひたすら呑気だった。

騎士の話、馬で遠乗りに行く話、師匠や親の話―――恋の話。

そんな色んな話をしながら、どんどん坑道の先へ踏み込んで行った。


廃坑の入り口近くじゃ原石なんて見つからないという訳で、あたしたちはかなり奥へと進んだ。

チームワークが何より大切で、ほんの小さな物音にさえ注意しなければ命取りになる。

でも、シアとあたしのチームは我ながら初めてとは思えないほどに息が合っていたと思う。

彼女と一緒にいると勇気が湧いてくる。彼女とならどんな強い敵にも勝てそうな、そんな勇気。


背中を預けて進むこと暫し、坑道の奥の採掘現場で魔物の襲撃に遭ったあたしたちは戦慄した。

そこに巣食っていたのは、巨大な樹妖。根をまるで腕や鞭のように振るうそれは、余りに強大だった。


シアが捕らえられ、あたしも痛打を食らって悶絶する。

けれどあたしたちは樹妖の養分にはならなかった。


沢山の偶然があったとはいえ、シアとあたしのコンビネーションが強大な魔物を倒したのは事実だ。

独りで遭遇していたなら勝てなかっただろう。二人だから勝てた、力を合わせたから勝てたんだ。


樹妖が持っていた魔法の石を探索成功の証拠として持ち帰る。

二つに割れた魔法石の片方はあたしが持つことになった。


シアとあたしが力を合わせて闘い、無事に初仕事を終えられた記念に。


背中を預けて一緒に闘える仲間。

それは、あたしの何より得難い宝物のひとつだ。



遭遇者:フェイシア/樹妖

ひとは独りで生まれ、そして独りで死んでゆく。


最初と最後はどうあっても独りでいなければならない。生まれる前と死んだ後、ひとは必ず独りだ。


だからひとは生れ落ちてから死ぬまでその寂しさを埋める為、絆を求めるのだという。


―――絆。それはとても脆くて切れ易いものだけれど、それなしでひとは生きてはいけないのだ。



雷雨の晩に、彼と教会で逢う。

彼の大きな手。確かな力。温もりはあたしに安堵を与えてくれる。

髪を撫でてくれる時の彼の笑顔はただ、ひたすら優しい。


彼からふたつ、贈り物を貰った。

ひとつは魔法の、紫のノート。そしてペン。

もうひとつは、彼の本当の名前。


彼の心が嬉しくて、ノートが結んでくれる彼との絆が愛しくて。

神の寝所だというのに、あたしはつい羽目を外してしまった。


彼があたしにしてくれること、齎してくれるものは余りにも多くて、大きくて。

あたしはその何万分の一さえ返すことが出来ない。

あたしは一体何をすれば、彼の想いに見合う想いを彼へと伝えられるだろう?


とりあえずは、彼に心配をさせないように。彼が安心してあたしの闘いを見ていられるように強くなろう。

それから彼が恥ずかしい思いをしないよう成長しよう。えーと……肉体的にじゃなくて精神的に。


彼は気が長いのでいつまでも待っててくれるらしい。

……おばあちゃんになっちゃう前になんとかできるといいな……。



遭遇者:ガルーダ

あたしには魔法や薬学の知識というものが全くない。


だから、不思議な効力を持つ薬。傷をたちどころに治す魔法―――そういうものに憧れる。


出来るなら、そういう薬や魔法の効力に浴してみたいと思う。


―――と思ったけどこれだけはヤ。



大通り近くのカフェで、かつてシメオンと闘った時に急造コンビを組んだ女の子と待ち合わせ。

あれだけの力を持つ吸血鬼と闘って、お互い生きて帰れた上に再会できたのは奇跡に近い。

元気そうな彼女の姿を見て、心から安心した。


安心したついでに、ムクムクとイタズラ心が湧いてきて。以前ヴァレンタインに貰ったクッキー……

例の、語尾が「ござる」になっちゃうクッキーを彼女に試してみることにした。

きっかけの掴み方が悪くて、彼女には思いっきり警戒されちゃったけど。

すったもんだの末に彼女がクッキーを食べると、効果はたちまちのうちに発揮された。


笑いを堪えるのに、こんなに苦労したことはない。

でも、結局爆笑してしまって―――分厚い本で頭を殴られた。

いやまあでも、悪いのはあたしだから文句も言えないんだけど……。


鬼の形相でクッキーの作者を訊ねる彼女に負けて、ヴァレンタインのことをバラしてしまった。

一応、結果報告を兼ねて彼に注意してって手紙を送っておいたけれど……


こ、殺されたりしてないよ……ね?



遭遇者:クロウ