あたしには魔法や薬学の知識というものが全くない。
だから、不思議な効力を持つ薬。傷をたちどころに治す魔法―――そういうものに憧れる。
出来るなら、そういう薬や魔法の効力に浴してみたいと思う。
―――と思ったけどこれだけはヤ。
大通り近くのカフェで、かつてシメオンと闘った時に急造コンビを組んだ女の子と待ち合わせ。
あれだけの力を持つ吸血鬼と闘って、お互い生きて帰れた上に再会できたのは奇跡に近い。
元気そうな彼女の姿を見て、心から安心した。
安心したついでに、ムクムクとイタズラ心が湧いてきて。以前ヴァレンタインに貰ったクッキー……
例の、語尾が「ござる」になっちゃうクッキーを彼女に試してみることにした。
きっかけの掴み方が悪くて、彼女には思いっきり警戒されちゃったけど。
すったもんだの末に彼女がクッキーを食べると、効果はたちまちのうちに発揮された。
笑いを堪えるのに、こんなに苦労したことはない。
でも、結局爆笑してしまって―――分厚い本で頭を殴られた。
いやまあでも、悪いのはあたしだから文句も言えないんだけど……。
鬼の形相でクッキーの作者を訊ねる彼女に負けて、ヴァレンタインのことをバラしてしまった。
一応、結果報告を兼ねて彼に注意してって手紙を送っておいたけれど……
こ、殺されたりしてないよ……ね?
遭遇者:クロウ