ひとりで強大な敵と相対するのには限界があるというのは、先日知った。
でも。
それを知っていてもなお、ひとには独りで事を成さなくちゃならない時がある。
―――あたしにとっては、それが今日だった。
両親の仇、黒い翼のヴァンパイア。
彼を倒さない限り、永遠にパパとママは呪われたままだ。
あたしの出した果たし状に、彼は意外なほどあっさりと応じた。
「父親と同じ運命を辿る娘が助けを求める姿を見たい」と、彼は言った。
あたしは彼と闘う時に備えて、充分に支度をしてきたつもりだった。
武器を揃え、以前の記憶を頼りに何度も闘いをシミュレートした。
なのに。
あたしのそんな小細工を嘲笑うかのように、彼は圧倒的な力であたしを捻じ伏せてきた。
剣は砕け、聖別された釘も撃ち尽くし。
胸元を、腕を断たんばかりに斬りつけられ、鞭を振る力もなくなった。
彼の容赦ない攻撃にあたしは全く太刀打ちできなかった。
―――分かっていたことではあったけれど。
そんな彼の胸に杭を突き立てることが出来たのは、全くのまぐれだった。
思えばもうぐったりしてしまった半死半生のあたしを見て、彼が油断したのが原因だったのだろう。
それから先のことは、もう覚えていない。
気がつけば、あたしはまた施療院のベッドの上にいた。
彼が死んだのか、それともまだ生きているのか―――それは分からない。
でも。
生きているなら、また―――追いかけるだけだ。
遭遇者:シメオン