入院というのは酷く退屈だ。
病人であれば本当に大人しくしている他ないけれど、あたしは別に病気じゃない。
だから、なんとかして脱走したいといつも思ってるんだけど―――
世の中そう甘くはないみたい。
施療院に入院して、数日が経過した。
準備も何もなく担ぎ込まれたものだから、着替えがなくなってしまって。
施療院で売ってる下着やシャツを買うのも勿体無いものだから、こっそり家まで取りに帰ることにした。
こっそり、誰にも見つからないように家に行こうとしたんだけれど―――
それは傍から見ればバレバレだったらしい。
後ろから唐突に声を掛けられると、あたしは心臓が口から飛び出るほど驚いてしまった。
あたしに声を掛けてきた人は、カヴォロさんという自警団員だった。
彼に施療院を脱走してきたことをすぐに見破られ、お説教を食らう。
……でもまあ、本当に見つかりたくない人に見つからなかったのは、不幸中の幸いと言えなくもない。
とりあえず自警団にいる友達にだけはバラさないで、と彼に口止めを。
代わりに、彼にはそのうちこっそりとお酒の差し入れをする―――ということで合意した。
こんな裏取引は悪いことだとは分かってるけど……ま、まあ、魚心あれば水心ってことで……。
彼と色々な話をして、最後には家まで行って着替えを取ってから、施療院に戻るまで護衛して貰った。
なんとなく、ぐうたらなダメ団員ってイメージの人だったけれど……
案外、能ある鷹は爪を隠すっていうのは彼のことなのかもしれない。
遭遇者:カヴォロ