20081117 日本経済新聞 朝刊

 人からお金をあげようと言われて、あなたはどんな反応を示すだろうか。
 相手が家族や気心の知れている親類なら、迷うことなく懐に収める人が多いだろう。
 親しくない人に持ちかけられれば警戒心が先に立つに違いない。「ただより高いものはない」。言い習わしは何となく身についているものだ。
 お金をあげようといっているのが国ならどうか。政府・与党が来年三月までに渡すという総額二兆円の給付金だ。
 金額は自民、公明両党が一人一万二千円、十八歳以下と六十五歳以上の人は二万円と決めた。所得の高い人にも配るかどうかは、すったもんだの末に各市区町村の判断に任せることにした。所得制限について麻生太郎首相は「法律いるから、めんどくさいことになりゃせんか?」などと、初めから距離をおいていた。
 賛否を聞いたところ、賛成六三%、反対三七%と好意的な反応のほうが多い。国に対してはあまり警戒心がないのだろうか。賛成した人の半数弱が「家計が厳しいので助かる」と答えている。
 たしかに、日々の食卓に欠かせない食料品などの値上げで家計は以前より苦しくなっている。それを見越して自民党はこの給付金を生活支援と位置づけた。「広く、かつ迅速、公平に」(中川昭一財務相)配ることに意味があるので、所得制限の手続きを法で手当てする時間や手間はかけられないというわけだ。半面、それは来るべき衆院選を意識したばらまき政策だという批判につながっている。
 給付金に反対という人は景気浮揚の効果を疑う。「貯蓄に回る可能性がある」「地域振興券もあまり効果はなかった」「財政を悪化させる」の三つの答えを合わせると五七%になった。また首相の意に反して全回答者の七三%が所得制限に賛成しているのは、低所得層にしぼって配ったほうが経済効果が大きいとみているからだろう。
 二兆円はどう用立てるのか。霞が関の埋蔵金が狙われているが、首相も与党もはっきりと語っていない。やはり、これは警戒すべき政策だ。
(編集委員 大林尚)
 調査の方法 調査会社ヤフーバリューインサイトを通じて十一月七―九日にインターネットで実施。全国の二十歳以上の男女千人が回答。



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20081117 日本経済新聞 朝刊

 自民党の柳沢伯夫税制調査会小委員長は十六日のNHK番組で、将来の消費税率の引き上げについて「三%ぐらいの名目成長率がコンセンサスだ。そういう経済が実現された後にお願いしたい」と語った。年末に策定する今後の税制改革の全体像を示す「中期プログラム」で、三%程度の名目成長率の達成を消費税増税の前提条件とする考えを示したものだ。
 麻生太郎首相が三年後の消費税増税に言及していることに関しては「三年後というのはわかりやすいが、我々は日本の潜在成長力に見合った成長を安定的に実現した暁にお願いしたい」と指摘した。



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20081116 日本経済新聞 朝刊

 二〇〇八年から始まった「ふるさと納税」。文字通り「自分の出身地に税金を納める制度」と思っている人も多いが、現実の制度の仕組みはかなり違う。記者が実際に体験し、制度の実態や使い勝手を点検した。
 「この制度は誤解が多いんです」。こう話すのはふるさと納税の応援サイト「ふたくす」を運営する特定非営利活動法人「ありがとうネットワーク」理事の吉戸勝さん。
 対象は出身地に限らず、応援したい自治体ならどこでもいい。また直接自治体に税金を納めるのではなく、寄付をすることによって所得税や住民税を軽減(還付)してもらう制度だ(図A)。初年度に適用を受けるには、年内に寄付をすませる必要がある。
 内閣参事官時代に制度の創設にかかわった高橋洋一・東洋大学教授によると「市民が自分で税金の使い方を決めることで、健全な自治体間競争を促すこと」が狙いだ。
 記者は香川県高松市の出身。離れてかなりたつので、何かしたい気もする。市役所に電話すると、担当者が丁寧に寄付の方法を教えてくれた。使い道は学校の整備などに充てる「人づくり事業」など、十項目から選べる。
使い道指定で差
 しかし、お金に色はない。「当該事業の資金が足りていれば他に使われてしまうのでは」と聞くと「そういう場合は基金に繰り入れ、翌年度以降にその事業に使うよう決めています」。総務省によると、同様に条例で使い道を決めて指定できる自治体と、特に決めずに一般財源とする自治体が混在している。
 寄付の仕方は自治体で異なる。高松市は銀行や郵便局の振り込みなど何種類か方法がある。自治体によってはクレジットカードも使える。
 寄付の全額分、税金が軽減されると思っている人もいるが、これも誤解。軽減対象は寄付のうち五千円を超えた部分であり、逆に言うと最低五千円は必ず自己負担になる。手数料のようなイメージかもしれない。五千円を上回る額は寄付の額と所得によって自己負担額が変わってくる。
 計算式は総務省のサイトなどで見られるが、非常に複雑。自分で計算するのは至難の業なので、表Bに収入別の軽減額の目安を示した。住民税の特例控除の上限が「所得割」という部分の一割までと決まっているため「寄付金額が多くなると控除の上限を超える部分が大きくなるので自己負担が増える」(税理士の福田浩彦さん)。より詳しく軽減額のメドが知りたい場合は、大阪府のサイト(表Bの欄外)などで自動計算できる。
 記者は高松市に三万円を寄付した。この金額なら〇八年度の所得税と〇九年度分の住民税の合計で、“手数料”の五千円だけ引かれた二万五千円が軽減される。ただし、軽減を受けるには、一般に確定申告が不要な会社員でも申告が必要。「普及を阻むハードルの一つ」(地方自治総合研究所の菅原敏夫研究員)だ。
 ところで、どれくらいの金額が集まっているのか。総務省は「全体は未集計」という。高松市の担当者に聞くと「まだ三十数人、百万円ちょっとでしょうか」(十月下旬時点)と少し声が沈んだ。大阪府のように漫才コンビの「爆笑問題」と事務所社長だけで一千万円の寄付があり、全体で三千二百万円(五―十月)を超える自治体もあるが、多くはまだこれからのようだ。
 三万円を銀行で振り込んで一週間すると、確定申告で必要になる領収書のほか「ふるさと高松応援団員証」というカードが送られてきた。「菊池寛記念館」など十施設への入場が一定期間無料になる。
様々な特典用意
 自治体にはこうした様々な特典を用意するところがある(表C)。佐賀県では「特産品のイカで飾ったクリスマスツリーがあるのを知っていますか?」など同県にまつわる“トリビア”を印刷したトイレットペーパーも選べる。
 栃木県那須塩原市では地元を訪れた際にホテルや飲食店の割引が受けられる。「ふるさと納税を機にぜひ訪れてほしい」(企画課)という狙いで、割引は地元業者の自主的な負担。特典や使い道については各自治体のサイトや「ふたくす」(http://www.f-tax.jp/)などで分かる。
 一部で別の“恩恵”があるかもしれない。住民税が減ると、東京二十三区など国民健康保険料を住民税額を基に決める自治体では、連動して国保料が下がる可能性もある。ただ、一部の人だけ有利なことに不公平感もあり、厚生労働省と総務省が調整中だ。
 ふるさと納税には根本的な批判もある。野口悠紀雄・早稲田大学大学院教授は「地方税は居住地の地域サービスを受ける対価。住んでいない地域に税金を送る制度は全くおかしい」と指摘。加えて「本来、寄付は自己犠牲を伴う行為。税額控除を認めるのは寄付の崇高な理念を踏みにじるもの」と厳しい。そう言われると“自己負担”を気にした自分がやや恥ずかしい。
 自分で税金の使い道を決めるという魅力と、こうした批判を考え合わせて、それぞれの価値観が問われる制度かもしれない。(田村正之)
 高橋洋一・東洋大学教授の話 ふるさと納税の目的は都市と地方の財政格差の是正だと一部で誤解されているが、違う。大事なのは国民自らが納税先を選択できるという点だ。これまで国がすべて配分を決める仕組みのもと、天下り先に多く配分するなど、多くの無駄の温床になっていた。ふるさと納税の金額はわずかでも、いわば「家計が主計官」になることの始まりだ。ただ、導入時に様々な省庁の抵抗もあり、税の軽減の仕組みなどが非常に複雑になったのが残念だ。
 国民が自由意思で税金の配分をできると、自治体の首長は応援してもらうために街づくりなどで魅力的な施策を打ち出さざるを得なくなる。ふるさと納税で豪華過ぎる特典を付ける自治体もあるが、そうした行動の是非も含めて、市民が総合的に自治体を評価すればよい。

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20081113 日本経済新聞 北海道朝刊

若者の雇用対策など 優先求める声も
 「思い切って使いたい」「ばらまきだ」――。十二日、与党が今年度内の支給で合意した「定額給付金」への感想を、札幌市内や東京都内で聞いたところ複雑な反応が広がった。家計が厳しさを増す中、給付を素直に喜ぶ声が上がる一方、景気への効果を疑問視し、雇用対策などの優先を求める意見も相次いだ。(3面参照)
●賛成
 個人消費の停滞ムードが強まる道内。札幌市の会社員、藤下勉さん(50)は「パアーッと使って景気回復に貢献したい」と話した。
 六十五歳以上と十八歳以下の人は給付金が加算されるが、東京都大田区の主婦(64)は「来月で六十五歳になるからぎりぎりセーフ。子や孫にお小遣いをあげたい」と顔をほころばせた。
●疑 問
 JR札幌駅前で同僚らと食事をしていた会社員の障子和幸さん(59)は「二兆円の財源を若者の雇用対策などに回すべきでは」と政策に苦言を呈する。
 「おばあちゃんの原宿」として知られる東京都豊島区の巣鴨地蔵通り商店街。かばん屋を営む木崎茂雄さん(65)は「給付金なんか全くアテにしていない」と言い切る。「お客の財布のヒモは固くなる一方。世間のこの暗い雰囲気を何とかして」と苦笑する。
 給付の窓口となる自治体も戸惑いを隠せない。札幌市の上田文雄市長は十二日、所得制限を巡り「市町村で判断が分かれ、混乱するのでは」と懸念を示した。事務量が増えるという自治体側の問題に加え、「市民にも不公平感を招きかねない」と指摘した。
●反 発
 有権者の「人気取り」ともとれる政策に反発する人も少なくない。
 ススキノで買い物中だった札幌市の主婦(62)は「単なるばらまきで国民をばかにしている」として、「食料品の消費税率を下げた方が家計は助かる」と注文した。
 東京都練馬区の会社員、児玉信吾さん(40)は最近、小遣いを月五万円から四万円に減らしたが「給付金は選挙対策にしかみえない。手間がかかるならもらわなくてもいい」と言い切る。
 同新宿区の早稲田商店会で飲食店を経営する山内康行さん(41)は「価格を維持するため仕入れ先を変えるなど、どこも経営は必死。一時的にお金をばらまいて、何年後かに消費税増税などで吸い取るのは納得できない」と話した。


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20081113 日本経済新聞 地方経済面

 日に日に寒さが増し石油暖房機の出番が増えてきた。石油情報センターによると、新潟県内の灯油店頭価格(十日時点)は十八リットルあたり千六百十五円で昨年の同時期より一・四%高い。夏ごろの高値に比べれば落ち着きをみせつつあるが、依然として高水準にあり、冬の家計を圧迫しそうだ。
 世界的な原油価格高騰を反映する形で、県内でも今春から灯油価格が急上昇。ピークとなった八月は二千三百円を超え、三年前のおよそ二倍という異常な高値となった。ただ九月ごろから欧米を中心に景気減速が鮮明になったことで原油価格が下がり、灯油も今年初頭くらいの価格水準まで戻した。
 ただ、なお高値圏であることに変わりない。千七百円前後とほぼ現在と同水準だった昨冬は、家計や中小企業への負担が重いとして、県や市町村が灯油代助成などの対応に乗り出したほどだ。
 加えて、灯油以外の光熱費は来年一月から値上げが相次ぐ見通し。燃料価格の高騰が遅れて料金に反映される仕組みのためで、さらなる追い打ちとなる格好だ。
 北陸ガスは十二月に値下げ(標準家庭で月額六円)を実施するが、来年一月には一転して月額百八十八円の大幅値上げを予定している。東北電力も当初予定より値上げ幅を圧縮したものの、一月から標準家庭で月額三百十四円引き上げる。
 物価が全般的に上昇傾向にあることもあり、昨冬より家計や企業財務の負担感が増すのは間違いない。県内経済の悪化傾向が顕著になりつつあることが懸念されており、光熱費上昇が個人消費の低迷に拍車をかけないか注意する必要がありそうだ。


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