20081117 日本経済新聞 夕刊

 「将来の年金を増やしたいから、過去に免除してもらっていた分の国民年金保険料を今、追納しています」
 派遣社員として働く三十代の男性はこう言った。月十五万円前後の収入から毎月三万円超の保険料と家賃、生活費を払い、医療保険に加入し、わずかだが貯金もしている。暮らしは楽ではないが、一生懸命頑張っている様子が伝わる。
 ところが、友人の多くは国民年金に加入すらしていないそうだ。このままでは将来、無年金者が大量に発生しかねない。年金がなかったり、少なかったりして、他に生活の糧もない社会的弱者は最終的には生活保護という制度で救済することになるが、公的年金と生活保護の関係が実はすっきりしない。
 東京二十三区内に住む六十五歳以上の単身世帯の場合、生活保護制度で支給される生活扶助額は月約八万八百円。一方、満額の老齢基礎年金は月約六万六千円。六十五歳以上の夫婦なら生活扶助額は月約十二万千九百円。夫婦が共に基礎年金を満額でもらった場合は約十三万二千円だ。
 夫婦だと年金のほうが多いが、単身だと老後に備える努力もせずに生活保護を受けたほうがもらえる額が大きいという矛盾が顔を出す。詳しく見ると矛盾はさらに大きくなる。
 生活保護世帯は、家賃などを払っていれば住宅扶助として最大月五万三千七百円加算される。介護を受けた費用や病院にかかる費用も無料になる。上下水道の基本料金免除、地方税の減免、一定の交通費の無料パスなどもある。年金などでわずかでも収入があれば、生活保護費の基準額から収入などの額を差し引いた額しか支給されないが、生活保護費の支給以外の支援も大きい。
 一方、生活保護を受けなければこのような費用は自分でなんとか支払わないといけない。特に高齢者は長期の治療が必要な慢性疾患を抱えることも多く、医療費負担は重い。
 また老齢基礎年金額を満額もらえない人も多い。二〇〇七年三月の統計では、平均受給年金額は月四万七千六百円、女性だけで見ると約四万六千円にすぎない。自由に使えるお金は生活保護世帯の方が多いという矛盾も起こり得る。
 社会保障の改革論議で弱者救済の響きはよいが、頑張った人を評価する救済も必要だろう。今頑張っている若者が社会保障を見限る前に。
(社会保険労務士 音川 敏枝)

------------------------------------------------


20081117 日本経済新聞 夕刊

 白川浩道・クレディ・スイス証券チーフ・エコノミスト 輸出や生産の低迷で企業の利益が減り、設備投資も予想以上に落ち込むという「外需ショック」型のマイナス成長を確認した。個人消費などは相対的に底堅い結果となったが、今後は賃金の削減を含む雇用調整が本格化してくる可能性が高い。
 外需に続き家計関連も調整色を強めることで、二〇〇九年四―六月期まで五・四半期連続でマイナス成長になるとみる。中国の公共投資拡大など景気刺激策の効果が来年夏から出て、輸出が下げ止まり、国内景気も一定の明るさが見えてくるだろう。
 後藤康雄・三菱総合研究所主席研究員 世界的な需要の減退で、外需の減速感が想定通りはっきりしてきた。個人消費は前期より増えたが、ガソリン高の影響で減った前期の反動が出ただけで、内需も落ち込みつつある。九月以降の世界経済の混乱を考えると、国内景気は今後も悪化していくとみる。
 ただ混乱の震源地である米国などに比べれば、景気後退の深刻度は小さいとみている。原材料価格の急低下が企業収益や家計の実質所得を下支えする面があるほか、政府の景気対策が消費に一定の効果をもたらすためだ。

------------------------------------------------


20081117 日本経済新聞 夕刊

 内閣府が十七日発表した七―九月期の国内総生産(GDP)の速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比〇・一%減、年率換算で〇・四%減となった。約七年ぶりに二・四半期連続のマイナス成長を記録した。世界的な金融危機と景気低迷を受けて企業の設備投資が減少し、輸出や個人消費も伸び悩んだ。七―九月期は日米欧がいずれもマイナス成長となり、世界同時不況の懸念が広がってきた。(関連記事3面に)
 GDPの発表後に記者会見した与謝野馨経済財政担当相は「景気は後退局面にある」と言明した。二〇〇二年二月に始まった戦後最長の景気回復局面は、昨年末に終わったとの見方が多い。
 先行きについても「下向きの動きが続く」と指摘。「経済協力開発機構(OECD)は〇九年の日本経済をマイナス成長と予測した。良い材料がそろっているとは思わない」と述べ、景気の低迷が来年まで続くとの見通しを示した。
 二・四半期連続の実質マイナス成長は、前回の景気後退局面下にあった〇一年以来。当時は四―六月期から三・四半期続けてマイナス成長となった。日経グループのQUICKが「コンセンサス・マクロ(経済予測)」で民間調査機関に聞いた実質成長率の事前予測の平均値は、年率で〇・〇%の横ばい。実績はこれを下回った。生活実感に近い名目GDPは前期比で〇・五%減、年率で二・一%減。五年半ぶりに二・四半期連続のマイナス成長となった。
 実質成長率に対する内需の寄与度は〇・一ポイントのプラス。輸出から輸入を差し引いた外需は〇・二ポイントのマイナスで、〇二年七―九月期以来の大きなマイナス幅となった。
 実質GDPを項目別に見ると、内需では設備投資が前期比一・七%減と、三・四半期続けて減少した。世界的な景気後退懸念や収益環境の悪化を受け、企業が設備投資を抑えている。
 GDPの五割強を占める個人消費は〇・三%増え、二・四半期ぶりの増加に転じた。猛暑でエアコンや衣服の販売が伸び、北京五輪の効果で薄型テレビやDVDレコーダーの売れ行きが好調だった。ただ四―六月期の〇・六%減からの反発力は弱い。
 輸出は〇・七%増。鉄鋼や非鉄などが増えた。これに対して自動車や電子・通信機器など輸出の主力製品は減少した。アジアの新興国や中東向けに輸出の停滞が広がり、先行きも不透明な状況だ。輸入は一・九%増。輸入の伸びが輸出を上回り、外需が成長を押し下げる結果となった。
 過去の数値を見直した結果、四―六月期の実質GDPは前期比年率三・七%減となり、九月の改定値に比べマイナス幅が〇・七ポイント拡大した。
 名目賃金に雇用者数をかけて算出する名目雇用者報酬は前年同期比〇・二%増。増加幅は前期より〇・六ポイント縮小した。食品やガソリンの値上がりを背景に、七―九月期の消費者物価指数が生鮮食品を除くベースで前年同期比二・三%上昇しており、家計の購買力は低下している。

------------------------------------------------

20081117 日本経済新聞 夕刊

 七―九月期の日本経済は約七年ぶりに二・四半期連続のマイナス成長となった。日米欧の三極がそろってマイナス成長に転落し、金融危機が実体経済に与えた打撃の大きさが浮き彫りになった。米欧のマイナス成長はなお続くとの予測が多く、外需頼みの日本経済も景気後退の出口が見えない。世界経済が予想以上に深くて長い調整を迫られる可能性が出てきた。
 主要二十カ国・地域(G20)の緊急首脳会合(金融サミット)は十五日の首脳宣言で、世界的な金融危機と景気低迷の克服に向け、金融安定化策や財政・金融政策で協調する方針を確認した。ただ一連の対策は具体性を欠いており、世界経済の回復は二〇一〇年以降にずれ込むとの声も浮上している。
 米欧の金融危機は実体経済の悪化に飛び火した。米国では十月の失業率が十四年ぶりの高水準となり、個人消費も減退している。ユーロ圏十五カ国では通貨統合後初めて、二・四半期連続のマイナス成長となった。
 今回のGDP統計では、世界的な景気の低迷が日本国内の企業部門の弱さに直結していることが確認された。輸出の伸び悩みが生産の抑制につながり、企業収益の悪化や設備投資の減少をもたらすという悪循環に陥りつつある。
 外需にも持ち直しの兆しが見られない。反動増が期待された輸出の反発力は弱かった。
 企業部門の停滞と一線を画し、景気の底割れを辛うじて食い止めたのが家計部門だ。だが北京五輪の特需と日本の猛暑効果に支えられた形で、実態は厳しい。十―十二月期は株安による逆資産効果と冬のボーナス抑制という二つのマイナス要因が直撃する。
 米欧の金融危機の打撃が日本経済に本格的に表れてくるのは十―十二月期になる見通し。総額二兆円に上る定額給付金の景気刺激効果は不透明で、日銀の追加利下げを求める声が浮上する可能性もある。

------------------------------------------------

20081117 日本経済新聞 地方経済面

 「将来の年金を増やしたいから、過去に免除してもらっていた分の国民年金保険料を今、追納しています」
 派遣社員として働く三十代の男性はこう言った。月十五万円前後の収入から毎月三万円超の保険料と家賃、生活費を払い、医療保険に加入し、わずかだが貯金もしている。暮らしは楽ではないが、一生懸命頑張っている様子が伝わる。
 ところが、友人の多くは国民年金に加入すらしていないそうだ。このままでは将来、無年金者が大量に発生しかねない。年金がなかったり、少なかったりして、他に生活の糧もない社会的弱者は最終的には生活保護という制度で救済することになるが、公的年金と生活保護の関係が実はすっきりしない。
 東京二十三区内に住む六十五歳以上の単身世帯の場合、生活保護制度で支給される生活扶助額は月約八万八百円。一方、満額の老齢基礎年金は月約六万六千円。六十五歳以上の夫婦なら生活扶助額は月約十二万千九百円。夫婦が共に基礎年金を満額でもらった場合は約十三万二千円だ。
 夫婦だと年金のほうが多いが、単身だと老後に備える努力もせずに生活保護を受けたほうがもらえる額が大きいという矛盾が顔を出す。詳しく見ると矛盾はさらに大きくなる。
 生活保護世帯は、家賃などを払っていれば住宅扶助として最大月五万三千七百円加算される。介護を受けた費用や病院にかかる費用も無料になる。上下水道の基本料金免除、地方税の減免、一定の交通費の無料パスなどもある。年金などでわずかでも収入があれば、生活保護費の基準額から収入などの額を差し引いた額しか支給されないが、生活保護費の支給以外の支援も大きい。
 一方、生活保護を受けなければこのような費用は自分でなんとか支払わないといけない。特に高齢者は長期の治療が必要な慢性疾患を抱えることも多く、医療費負担は重い。
 また老齢基礎年金額を満額もらえない人も多い。二〇〇七年三月の統計では、平均受給年金額は月四万七千六百円、女性だけで見ると約四万六千円にすぎない。自由に使えるお金は生活保護世帯の方が多いという矛盾も起こり得る。
 社会保障の改革論議で弱者救済の響きはよいが、頑張った人を評価する救済も必要だろう。今頑張っている若者が社会保障を見限る前に。
(社会保険労務士 音川 敏枝)


〈エコノQの答え〉
〔問1〕(3)スポーツ用品。辻谷工業は陸上の砲丸、ニッタク(日本卓球)は卓球製品、モルテンは球技のボールなどで有名
〔問2〕(3)広島県。熊野町。170年もの筆づくりの歴史があり、全国シェアは80%にもなる
〔問3〕(1)赤色系。夜光時計の文字盤では世界シェアほぼ100%を誇る
〔問4〕(2)痛くない注射針。テルモとの共同開発で針の先端は0.2ミリメートルしかない。岡野工業はプレス加工技術で知られている企業
〔問5〕(3)ノーベル賞の晩さん会用のナイフ・フォーク類。特別にデザインされた製品だが、一般にも販売されている




------------------------------------------------