20090130 日経MJ(流通新聞)

日本保育 新卒を120人採用  ポピンズ 紹介事業に参入
 保育サービス各社が保育士などの人材を積極的に採用する動きを強めている。保育園への入園を希望する待機児童が都市部で増えているほか、景気後退を背景に女性の就労意欲も高まっており、保育需要が拡大しているためだ。一般企業が採用を絞り込む中、保育各社は優秀な人材を獲得できる好機とみて採用強化にかじを切っている。
 JPホールディングス傘下で保育事業を手掛ける日本保育サービス(名古屋市)は今春、新卒の保育士を百二十人採用する。当初の百人の計画から上方修正、二〇〇八年の六十六人からほぼ倍増させる。すでに九十五人を確保。看護師、調理師や栄養士を含めると百五十人の増員となる。
 大量入社は採用環境の“好転”が背景だ。〇八年前半までの景気回復局面では、職業としての保育士の人気が相対的に低迷。資格を取得しても一般企業に就職する新卒が少なくなかった。ところが同年秋から状況は一変。「学生の意識が変化したことはもちろん、学校側も安定した仕事として保育士を推すようになった」(山口洋JPホールディングス社長)
 もとより保育業界は女性の社会進出を背景に、待機児童問題の解消が急務とされていた。だが、必要な保育園数を確保するため株式会社の保育所運営に道を開く規制緩和は進んだが、肝心の保育士の確保が難しく新規開園が進まないというジレンマを抱えていた。
 景気後退で保育業界が「就職先」と見られるようになった今、「(いよいよ新規開園に)取り組まないわけにはいかない」(山口社長)との意識が広がっている。
 追い風の下、新卒とともに脚光を浴びているのが保育士資格を持つOBだ。百五十万人とも言われる有資格者のうち、就労者は三十万人強(常勤換算)。結婚・子育てで家庭に入った層が相当数いるとみられ、保育士として働いた経験があるだけに即戦力としての期待が高まる。
 こうした“鉱脈”を掘り起こそうと、ポピンズコーポレーション(東京・渋谷、中村紀子社長)は保育士などの資格を持つ人材の派遣・紹介事業に参入した。人材データベースを整備し、条件が合う人を全国の保育園や自治体に派遣する。特定非営利活動法人のNPOポピンズ(東京・渋谷)が運営する「再チャレンジ研修」を通じたOB集めが当面の課題だ。
 同研修は二月の東京を皮切りに、今年は全国十二カ所で展開する計画。独自の研修課程で現在の保育現場に通用するように再教育し、新設した専門部署「人材派遣事業グループ」が保育園や自治体などに営業する。
 「今年は人材集めと教育を優先し、まず百―百五十人程度の派遣・紹介を目指す」(横尾隆義取締役)。データベースは三年後に一万五千―二万人規模(自社のベビーシッターと保育士含む)に広げる方針。将来は中立性を担保する観点から派遣・紹介事業の別会社化も視野に入れる。
 〇八年に試験的に実施した再チャレンジ研修では、日本保育サービスやベネッセスタイルケア(東京・渋谷)など同業他社が就職相談ブースを設けるなど、競合の壁を超えた取り組みも芽生えた。
 景気後退局面では家計収入維持のために働く主婦や、出産しても辞めない女性正社員が増える見通し。保育需要は一層の拡大が予想され、機動力で勝る株式会社形態の保育サービスが存在感を高めることは必至だ。保育業界が雇用の受け皿として一定の役割を果たせるかどうか、注目が集まっている。
(天野賢一)

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20090130 日本経済新聞 夕刊

 企業部門の不振が家計に波及し、日本経済は負の連鎖が鮮明になってきた。米欧発の金融危機に伴う世界同時不況が深刻さを増すなかで、輸出の減少が響いて収益が悪化した企業には強い調整圧力が働いている。生産・設備投資などの抑制を加速するとともに、雇用調整も急ピッチで進めている。家計の不安感も急速に拡大し、支出を抑える姿勢が広がってきた。(1面参照)
 二〇〇八年十二月の主要経済指標が発表されたのを受け、与謝野馨経済財政担当相は三十日の閣議後の記者会見で「生産で今ほど鋭角的な落ち込みは経験したことがない。失業率や有効求人倍率の悪化も極めて深刻な問題だ」と懸念を表明。先行きの見通しについても「底入れ時期は今は予想不可能だと思う」と語った。
 米欧発金融危機が世界的に実体経済にも波及、日本も昨年十月以降、猛烈なスピードで落ち込み始めた。三十日に政府が発表した二〇〇八年十二月の各種の経済統計をみると、昨年末時点では急降下に歯止めをかけられず、むしろ秋から年末にかけて、月を追うごとに悪化の度合いを増した様子がうかがえる。
 円高の進行から企業収益は一段と下振れするおそれがあり、雇用指標は今後もさらに悪化する公算が大きい。民間エコノミストの見方は「雇用調整はむしろこれから本格化する」との悲観論が大勢。非正規労働者の雇用不安が正社員にまで広がるとの見方が背景にある。失業率の上昇ピッチが一気に速まる可能性もあるという。
 雇用問題を巡っては、日本経団連と連合が雇用の安定に取り組む方針を確認している。ただ仕事を分かち合うワークシェアリングの導入論議などに具体化の道筋は付いておらず、労使双方の主張も隔たりが大きい。このほど成立した〇八年度第二次補正予算でも景気押し上げ効果は限定的との見方が強い。

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20090129 日本経済新聞 地方経済面

 関東財務局千葉財務事務所は二十八日、二〇〇八年十―十二月の県内経済情勢を発表した。景気の総括判断を四期連続で下方修正し、前回調査(七―九月期)の「このところ一部に弱い動きがみられる」から「悪化しつつある」とした。米国発の金融不安による企業の収益悪化に加え、個人消費の落ち込みが県内経済に深刻な影響を与えている。
 「晴れ」から「雨」まで七段階で示す景気判断は前回調査の「くもり」から下から二番目の「小雨」へと二段階引き下げた。「小雨」は〇四年四月の調査開始以来最も低い水準という。一都九県の関東管内の評価も「くもり」から「小雨」に変更した。
 千葉財務事務所は引き下げの理由を「景況悪化が個人消費だけでなく、雇用や企業収益まで幅広く影響を与えている」とし、今後も「不透明感が増し楽観視できない」と厳しい見方を示した。
 個人消費で大きな割合を占める県内百貨店の売上高は〇八年三月から九カ月連続で前年同月比を下回った。
 千葉三越は「食料品は比較的堅調だが婦人服や宝石など服飾類の販売は苦戦が続く」と話し、生活必需品以外の支出を切りつめている様子がうかがわれる。
 コンビニエンスストアの販売額は前年同期を上回ったが、たばこ自販機用成人識別ICカード「taspo」の導入の影響が大きく、「たばこの販売増が無ければ前年割れが続いたはず」(県内のコンビニ)との声も聞こえる。
 県内経済の中心の一つである新設住宅着工戸数は前年同月比を〇八年六月から六カ月連続で上回った。新日本建設は「住宅ローンの利率が下がり、販売は若干上向き始めた」と話すなど好材料も浮上している。
 ただ、販売価格の下落は続いており、千葉財務事務所は「買い控えの姿勢がみられる」という。〇七年六月に施行した改正建築基準法の着工遅れによる反動増の影響も大きい。
 金融不安をきっかけに設備投資を見送る企業も現れた。県内企業の〇八年度下期の設備投資額は前年同期比九・五%減と、上期の一一・一%増から大きく落ち込んだ。千葉市内の建設機械メーカーは「七月以降の受注は前年の半分に減った。大型投資は控える」とため息をつく。株安、円高が進めばさらなる投資抑制につながる恐れもある。

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20090129 日本経済新聞 大阪夕刊

 【ワシントン=米山雄介】米連邦準備理事会(FRB)は二十八日開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で、最重要の政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を現行の年〇・〇―〇・二五%で据え置くことを賛成多数で決めた。声明は市場への資金供給策として「長期国債を購入する用意がある」と、実施に向け準備段階に入ったことを明記。金融緩和の一段の強化に含みを持たせた。景気判断を下方修正するとともにデフレへの懸念もにじませた。
(関連記事3面に)
 今回はオバマ新政権発足後、初のFOMC。声明は「景気回復と物価安定へすべての手段を動員する」と改めて宣言。政権と足並みをそろえて、米経済再生に全力を挙げる姿勢を鮮明にした。
 FF金利については「しばらくの間、例外的に低い水準になる可能性がある」との表現を踏襲。事実上のゼロ金利を当面続ける方針を確認した。低金利が長期にわたって維持されるとの安心感を市場に与えることで金融緩和効果を高める「時間軸効果」を引き続き狙う。
 長期金利の低下要因となる長期国債の購入では「信用市場の改善に効果的と考えられるなら、その用意がある」と明記。「利点を検討している」とした前回声明から実施に向け一歩踏み込んだ。
 バーナンキ議長が「信用緩和」と命名した市場への資金供給策では「多額の政府機関債や住宅ローン担保証券(MBS)の購入を続ける」と説明。住宅市場のテコ入れへ「状況に応じてさらに拡大する用意がある」と強調した。
 中小企業や家計の資金繰り支援へ、中小企業向けローンなどから組成した資産担保証券(ABS)を裏づけにした新融資制度を始めることも改めて表明した。
 景気認識では「経済はさらに弱まった」として判断を下方修正。「世界的に需要が著しく減退している」と分析した。今年の遅い時期に緩やかな景気回復が始まるとの見通しを示す一方、「下振れリスクは非常に大きい」と警告した。物価面では「インフレ率が経済成長や物価安定を促す水準を当面下回るリスクがある」と指摘。直接的な表現を避けながらも、デフレへの懸念をにじませた。
 採決ではバーナンキFRB議長ら八人が賛成。一方、リッチモンド連銀のラッカー総裁は国債購入による通貨供給量の拡大を主張し、一人反対に回った。
 ▼信用緩和 債券の買い取りや金融機関への融資などを通じ、信用収縮が起きている市場に直接、資金供給する形で金融緩和の効果を狙う政策の枠組み。米連邦準備理事会(FRB)が事実上のゼロ金利に移行した前後に打ち出した緩和策の総称として、バーナンキ議長が自ら命名した。
 中央銀行のバランスシート(貸借対照表)が結果として拡大し、市場への資金供給が増える点では「量的緩和」の一種といえるが、日銀が実施した量的緩和と違って当座預金残高などの政策上の数値目標は設定しない。

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20090129 日本経済新聞 大阪朝刊

奨学金増額やバイト紹介
 急激な景気悪化で学費などの支払いが困難になった学生を支援する大学が相次いでいる。奨学金の給付対象者を増やしたり、学内での仕事をアルバイトとして紹介したり。「学生が勉強をあきらめずに済むようにしたい」。保護者が解雇された新入生ら向けに急きょ入学金免除の特別枠をつくる大学も現れるなど、不況風が学びの現場にまで吹き付けている実態が浮き彫りになった。
 「学費が払えず辞退するという入学予定者はこれまでほとんどいなかった。推薦入試が終わった昨年秋、十件以上の相談を受けて驚いた」。大阪工業大などを経営する学校法人常翔学園(大阪市)の広報担当者は話す。
 これを受けて同学園は二十八日、奨学金の支給対象を従来の二年生以上から二〇〇九年度は新入生にまで広げることを決定。奨学金の総額も前年度の三割増の約八億五千万円にする。対象者は五百人近く増える見通し。増加分の対象者は経済事情のみを理由とし、学力や生活態度に関する基準を初めて取り払った。
 申請する学生には保護者の解雇など、学費の支払いが困難になったことを証明する書類を提出してもらう。担当者は「何とか学生が勉強をあきらめずに済むよう、入学辞退を相談してきた人には改めて連絡したい」と力を込める。
 立命館大(京都市)も経済的理由で修学が困難な学生への奨学金を〇九年度は前年度より拡充。在学生向けは二億円多い総額約五億円とし、対象人数も約千二百五十人へと約五百人増やす。入学直前になり諸費用が払えなくなった入学予定者への入学時給付奨学金も対象者を二百人、予算は一億円とともに十倍にする。
 昨年十月以降、学生から「家業の経営が厳しい」「親が失業した」などの相談が相次いだことから、大学側は家計事情の急変で修学を断念する学生が増えると判断した。受験生からの奨学金に関する問い合わせは一日約二十件に上るという。
 入学金免除の対象者に特別枠を設けるのは大分大(大分市)。当初予算のほかに約一千万円を用意。〇九年度の新入生のうち最大四十人を対象とする。入学金や授業料の免除制度は以前からあったが、今回は昨秋からの不況の影響を直接受けた家庭に対象を限定。通常は必要な学力基準も不問とし、保護者が解雇されるなどした新入生には入学金全額(二十八万二千円)を免除する。
 学生の生活費を支援しようと、学内アルバイトを紹介する大学も。
 県立広島大(広島市)は今年四月以降、学費の支払いが困難との相談に来る新入生には学内の仕事を紹介する。対象は約十人。地域貢献事業で使う資料の作成など学生の勉強を妨げないような仕事を中心にし、一日八時間の労働で約七千円の収入になるようにする。

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