20081224 日本経済新聞 朝刊

 死亡保険や医療保険などの生命保険商品の販売が銀行に認められてから一年が過ぎた。三菱東京UFJ銀行など大手四行の販売件数は計一万五千件と、生保全体の一%未満にとどまる。最近になって販売は増えつつあり、三菱東京UFJ銀や三井住友銀行では月一千件前後が売れている。
 銀行での保険販売は二〇〇一年以降、段階的に認められ、昨年十二月に全面解禁された。それまでは年金など貯蓄性の保険商品しか売ることができなかったが、死亡保険など保障性の強い商品も扱えるようになった。
 販売件数は死亡、医療保険など保障性商品を集計した。個人年金など貯蓄性保険は含まない。生保全体の〇七年度の新契約は八百二十九万件。四行はその〇・二%弱にとどまる計算だ。
 販売が低調な要因は、保険商品のリスクの説明などを義務づけた法令の順守を意識して、銀行が慎重な姿勢だったため。銀行で保険に入れることがあまり知られていない面もある。
 販売件数が最も多いのは三井住友銀の七千七百件。保険会社から中途採用した二百四十人が販売してきたが、来年からは一般行員にも広げる。生命保険の取扱店舗も現在の九十から年度内に大幅に増やす。
 三菱東京UFJ銀は今年度上期から急増し、六千件になった。保険会社の出向者ら四百五十人の専門担当者が販売。現在は七十―八十人の一般行員も一部商品の販売を始めた。
 みずほ銀行は一千件を販売。医療保険二種類だけの取り扱いだったが、十一月から首都圏の三店舗で死亡、がんなど新たに十一商品を扱い始めた。りそな銀行は来年四月から保険商品を大幅に増やす予定だ。各行とも窓販の成長分野として生命保険に期待している。


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20081224 日本経済新聞 朝刊

 富国生命保険はがん保険の保障内容を拡充する。従来は入院時にかかった治療費の実額を保障していたが、通院による治療も保障対象にする。がん保険は入院一日当たりの定額費用を給付する商品が一般的で、治療にかかった実額を保障するのは珍しい。提携しているセコム損害保険が開発した。富国生命の医療保険とセットにし、来年一月から販売を始める。


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20081224 日本経済新聞 夕刊

 二十三日の米株式相場は五日続落。ダウ平均は前日比一〇〇ドル安で終えた。前日に格付け会社が自動車大手三社の破綻リスクが依然大きいとするリポートを出し、格付けを引き下げたことが嫌気された。ゼネラル・モーターズ(GM)は一四%安。
 十一月の新築・中古住宅販売件数が発表され、市場心理を冷やした。いずれも市場予想を下回ったうえに、十月の販売実績がともに下方修正されたため、投資家の間で市況改善の期待が大きく後退した。
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 RDQエコノミクスのジョン・ライディング氏も「光明が全く見えない」と語る。売れ残りの住宅在庫をすべて処分するには、新たな住宅建設を完全に止めても約一年かかる。
 単なるバブル崩壊の段階を超え全国的な住宅不況の様相だ。中古住宅価格は二〇〇四年の水準に下落。米連邦準備理事会(FRB)が政策金利を当時最低の一%まで下げた年だ。あふれた資金が住宅や株などの資産に向かった。
 これをもって、クリントン政権時に労働長官を務めたロバート・ライシュ氏は「住宅バブルの始まりの地点に戻った」と見る。
 ただ住宅価格が賃貸価格の上昇ペースを上回って急上昇し始めたのは、ベビーブーマー世代が本格的に住宅購入を始めた一九八〇年代であることを考えれば、住宅バブル崩壊の終着点はもっと先になってもおかしくないという。
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 今後の注目は住宅ローン金利の低下が市況にどう影響するかだ。FRBがゼロ金利政策と住宅ローン証券購入による量的緩和を導入し、住宅ローン金利は三十年物で五%台半ばを付けている。一部のローン会社には借り換えの申し込みが殺到中という。
 ただ消費者心理が障害になる。企業の人員削減が広がり、職のある人でも将来のリスクとなる借金を背負うことに消極的になる。
 住宅価格が十分に下落し、低利ローンが借りられるようになっても、人々は家を買わないかもしれない。来年は大半の米国人にとって「貯蓄」の年となることが予想されている。
(ニューヨーク=財満大介)


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20081224 日本経済新聞 夕刊

 企業の景況感が大幅に悪化している。法人企業景気予測調査で大企業の景況感を示す指数は、これまで過去最低だった二〇〇八年四―六月期のマイナス一五・二から、十―十二月期にマイナス三五・七まで下がった。企業が内部留保や有利子負債の圧縮を優先し、従業員還元を後回しにし始めた姿も鮮明になった。原材料価格の上昇は一服したものの、企業は世界経済の急激な落ち込みで先行きを見通せなくなっている。(1面参照)
 十―十二月期の企業の景況感は米欧発金融危機の余波が実体経済に及び、国内外での販売不振や企業の設備投資の抑制などが進んだ影響が色濃く表れた。七―九月期に企業の重しとなっていた原油高の影響は薄れ始めているが、国内企業は危機的な局面にさしかかっている。
 トヨタ自動車が〇九年三月期に戦後初の営業赤字を見込むなど、今後の企業収益はドミノ倒しで悪化するおそれもある。経営環境が悪くなるとみる企業にその理由を聞くと、国内外での需要減を警戒する声が多く上がった。資産価格や為替レートの動向を重視する意見も目立ち、金融危機での保有不動産の価格下落や、円高の急速な進行に敏感になっている。
 大企業の利益配分姿勢としては「内部留保」が六一・二%(複数回答)と首位で、設備投資や株主・従業員への還元を上回る。雇用環境の一段の悪化も避けられそうにない。大企業・製造業に雇用の過剰感が出始め、全産業ベースではパートの雇用に過剰感があると答える企業が増えてきた。企業活動の停滞が家計に深刻な影を落としつつある。


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20081223 日本経済新聞 地方経済面

 景気の世界的な急降下が雇用不安を募らせている。人手不足感があった年明けの風景は一変し、企業で働く人々にとっては厳しい年の瀬を迎えた。百年に一度ともいわれる経済危機。中国地方で暮らす人々の日常を追い、世界とつながった地域経済のこれからを考える。
 広島と岡山の県境にあるシャープ福山工場(広島県福山市)。派遣社員として勤務した二十七歳の独身青年は、来年三月までの任期を残し十一月いっぱいで雇用契約解除となった。
 「おまえ、大丈夫か」。山口県で暮らす父がニュースで知って電話してきた。だが「ああ、来たかという感じでしたね」と冷静に受け止める。国内雇用市場の三分の一を占める非正規社員千七百三十万人。その一人として思う。誰を責めても解決しないと。
来春までに半減
 一九八〇年代後半に稼働した福山工場は大規模集積回路(LSI)事業本部としてシャープの半導体製造の中核を担ってきた。ここ数年は液晶に押され派手さはないが、この半導体を内蔵した携帯電話は国内外で販売を伸ばした。収益の増加は会社に利益を、地域に税収や雇用面で貢献してきた工場の一つだ。
 青年は工場で半導体チップの検査工程が担当だった。数値が基準内であれば合格品、それ以外は不良と選別する。勤務は朝九時半から夜九時四十分と、夜九時半から朝九時四十分の十二時間。昼夜二交代のローテーションだ。一カ月に十四日働き、手取りは二十万円を超えた。“寸志”として四カ月ごとに五万円の賞与も出た。
 だが八月の終わりごろ、明らかな工場内の異変を感じた。一日四ケタあった生産量が二ケタに減った。米証券大手リーマン・ブラザーズが破綻した九月十五日以降は、金融危機が実体経済に乗り移ったかのように落ち込みが激しくなった。
 「おれたちそろそろヤバイかなあ」。派遣元から来た百人の仲間たちとつぶやくようになったころ「今月いっぱいでやめてもらうことになったから」。十一月初め、派遣元の担当者に一人ずつ呼ばれ、告げられた。
 福山工場では十一月までに三百人を超える非正規社員が勤務していたとみられるが、シャープは来年三月末までに約百六十人を削減する方針だ。需要の先行きが一段と不透明さを増す中、同社は三重県と奈良県の小型液晶製造ラインの閉鎖を発表。企業は競争力を高める生産体制の再構築に乗り出し、雇用者には働き方の見直しを迫る。
必死になる時代
 派遣社員を中心とした雇用調整の動きはシャープにとどまらない。マツダは防府工場(山口県防府市)で派遣社員を約七百人、三井金属の子会社も派遣・パートを七百人削減する。三菱自動車水島製作所(岡山県倉敷市)は二百五十人、出雲村田製作所(島根県斐川町)は百五十人を削減。日立金属は主力の安来工場(島根県安来市)で派遣社員の一割に当たる約二十人を減らす。
 中国地方は米国や中国の堅調な景気に支えられ輸出を伸ばしてきた製造業の工場が多い。人手不足を派遣社員の拡大で補ってきただけに、大規模な雇用調整が地域経済に与える影響は大きい。
 青年は契約解除後、岐阜県にある工場に正社員募集の求人を見つけ、早速エントリーシートに記入しメールを出した。慣れ親しんだ福山市内のアパートを出て正社員として働く日を待つ。ただ正社員として採用されても雇用の安定の保障はない。遠く離れた米国経済の激変で、自分たちが住む地域の企業も個人も必死にならなければ生き残れない時代に突入した、そう感じている。
 中国五県の有効求人倍率は年明けから七月まで一・〇五倍から一・〇九倍の間で横ばいが続いていたが、七月を境に急速に落ち込んだ。十月には〇・九五倍となり四年ぶりに一倍を割り込んだ。広島をはじめ岡山、山口の山陽三県で雇用情勢の悪化が目立つ。
 各県で新規求職者が増える一方、新規求人の伸びは鈍く、広島では十月に有効求人倍率は〇・九二倍に落ち込んでいる。当初は建設・不動産業などから進んだ雇用削減の波は、中国地域の基幹産業である製造業にも急速に広がった格好だ。
 厚生労働省が十一月二十八日時点でまとめた〇九年三月までに失業したか失業を見込む非正規労働者数は五県で三千二百人を超えており、この数はさらに膨らむ見通し。この時点で千六百人弱を見込んでいた広島県では「二千人は超える勢い」(広島労働局)という。
 中国経済連合会の景気動向アンケートによると、雇用が「不足」と答えた企業から「過剰」と答えた企業の割合を引いた雇用判断BSIは、十一月にはマイナス一七・二ポイント。プラス六・八だった八月の前回調査から一転して過剰感がはね上がっている。
 雇用過剰への対応として五割を超える企業が「派遣・パート社員の抑制」「新規採用の抑制」と応えている。今後は新卒社員の採用抑制や正社員削減の動きも進むとみられ、雇用情勢のさらなる冷え込みは避けられない見通しだ。


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