20090107 日本経済新聞 朝刊

 二〇〇八年に新たに設定された投資信託は本数、設定額ともに四年ぶりに減少に転じた。ここ数年、新興国人気などを背景に運用各社は新しい投信を積極的に投入してきたが、世界を襲う金融危機で運用環境が急速に悪化。資金流入が細り、設定を見合わせる動きが広がっている。投信の低調な新規設定は、貯蓄から投資への流れを鈍化させる要因になりそうだ。
 金融商品評価会社のモーニングスターがだれでも購入できる追加型公募株式投信について調べた。新規の本数は前年比一割減の三百五十四本。設定額の合計は同六五%減の一兆二千五百億円だった。特に米リーマン・ブラザーズが破綻した九月以降の落ち込みが大きく、十―十二月期の設定額は八百七十億円と前年同期に比べ九割近くも減少した。
 九月以降は、運用環境の悪化や資金が集まらないことなどを理由に、募集を始めながら設定を中止する「過去に例のない異例の事態」(大手運用会社)も相次いだ。少なくとも十本の投信が設定を見合わせており、十一月には日興アセットマネジメントが「新成長国通貨ファンド」の設定を中止するなど、大手運用会社にも影響が広がった。
 新しい投信は投資家に勧めやすいなどの理由から、個人マネーを投信市場に呼び込むけん引役となってきた。〇七年には公募株式投信全体で購入額が三十五兆円と過去最高を記録したが、新興国に投資する投信が数多く設定されたことなどが大きく貢献した。一方、〇八年の購入額は十一月末までで十四兆円弱と前年同期に比べ六割も減少。新興国の株価急落など運用環境が悪化し、新しい投信にも資金が集まらなくなっている。
 すでに販売している投信の運用が悪化したため、運用・販売各社が顧客への説明などに追われ、新しい投信に人や経費をかけられない事情もある。国内最大の投信「グローバル・ソブリン・オープン」を運用する国際投信投資顧問は十一月の一カ月間で個人投資家や販売会社向けのセミナーを例年の一・五倍となる約六百回も開いた。
 投信の純資産残高は〇八年十一月末時点で四十兆五千八百億円と、〇七年末に比べ四割近く減っている。世界的な株価下落や円高による含み損が膨らんだのが主因だが、資金流入も細っている。個人マネーを再び投信に向かわせるには、魅力ある新商品を投入できるかどうかにかかっている。



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20090107 日本経済新聞 朝刊

 金融行政は二〇〇九年、「平時体制」の抜本的な見直しを迫られる見通しだ。公的資金による資本注入の対象を拡大したり、欧米で金融危機の震源地となった大手証券会社への検査・監督を強化したりすることが焦点となる。中小企業融資をめぐる数値目標の導入も論点になりそうだ。
 ■公的資金 政府は〇九年度の予算編成で金融安全網の拡充を盛った。金融機関に公的資金を予防的に注入する新しい金融機能強化法の公的資金枠を二兆円から十二兆円に増額する。預金保険法の「危機対応勘定」も十七兆円の枠を維持。公的資金の資本注入枠は合計で二十九兆円に上る。
 公的資金の注入対象は銀行など預金取扱金融機関に限っているが、金融システムの混乱を未然に防ぐという観点でみれば、大手証券会社や保険会社も無視できない。米国は大手証券や保険会社、ノンバンクに公的資金を注入した。
 日本は生命保険会社が破綻した際に契約者を公的資金で保護する安全網を用意しているが、将来の損失に備え、資本を積んで経営破綻を回避する仕組みはない。公的資金注入の是非を含めて議論になりそうだ。
 ■証券の検査・監督 金融庁や証券取引等監視委員会で本格的な議論に発展しそうなのが、大手証券会社の検査・監督体制の見直しだ。欧米の金融危機では、証券会社による「投資銀行業務」のリスクの高さが浮き彫りになった。日本の証券検査はこうしたリスクを正確に検証する体制を十分取れていない。
 証券会社の検査は〇五年に金融庁から監視委に移管されたが、検査はインサイダー取引など法令違反行為の摘発や顧客資産の分別管理の検証に注力しがち。リスク管理体制など経営の根幹に関する検査は苦手とされる。金融庁との共同検査の導入も議論になりそうだ。
 金融商品取引法は証券会社を「単体で監督する」と規定しており、連結対象の企業に行政権限は及ばない。持ち株会社や兄弟会社の投資会社などには原則として行政処分できないなど問題がある。業務の複雑化に伴い、監督体制を見直すべきだとの議論が浮上しそうだ。米国のように証券会社が銀行持ち株会社などになれば、銀行並みの規制がかかる。
 ■中小融資 金融庁や中小企業庁は銀行界に中小企業融資の円滑化を再三要請してきたが、効果は十分に上がっていない。融資判断の領域に行政が踏み込めないことが大きな問題として横たわっている。
 自民党の金融調査会・財務金融部会は〇九年初頭から中小企業融資の実効性を高める方策を議論する。
 集めた預金のうちどの程度を貸し出しに回しているかを示す「預貸率」の目標設定を銀行などに義務づけるべきだとの意見が一部に出ているほか、預貸率が異常に低ければ行政処分の対象にすべきだとの意見もある。一律的な数値目標の導入には銀行界の反発も予想される。



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20090107 日本経済新聞 朝刊

 来日した仏大手金融グループ、クレディ・アグリコルのジャン・フレデリック・ドゥ・ルース副頭取=写真=は日本経済新聞の取材に対し、「日本はアジア最大の市場。事業は今後も強化していく」と述べ、外資系金融機関の人員削減が相次ぐ中でも銀行、資産運用、生命保険の三事業を中心に事業を拡大する考えを強調した。
 クレディ・アグリコルは日本で法人向け金融のカリヨン銀行・証券、資産運用のクレディ・アグリコル・アセットマネジメント、年金販売のクレディ・アグリコル生命保険を展開している。ルース副頭取は「外資系の競争が緩和している今は事業拡大の好機」と指摘。親密なりそなグループや地域金融機関に商品を提供するなどして、預かり資産の拡大を目指す方針を示した。
 外資系銀行の間では日本企業向け融資の絞り込みが鮮明になっているが、副頭取は「大手企業に対する限度額の引き上げを検討したい」と述べた。一方で「二〇〇九年は世界的に買収を見合わせる方針を決定済みだ」として、日本でも大型買収は当面控える考えだ。




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20090107 日本経済新聞 朝刊

「骨太方針」骨抜き 中長期方針 原案を了承
 政府の経済財政諮問会議は六日の会合で、経済財政の中長期方針の原案を了承した。国と地方を合わせた基礎的財政収支を二〇一一年度に黒字にする財政再建目標は「困難になりつつある」として、事実上の先送りを表明。当面は景気回復に最優先で取り組む姿勢を打ち出した。ただ旗印としてきた「経済財政運営の基本方針」(骨太の方針)を守るとの記述もなくなり、今後の方針は極めてあいまいになった。
 「経済財政の中長期方針と十年展望」(仮)と題した原案は、昨年一月にまとめた「進路と戦略」を引き継ぐものだ。これまでは一一年度を目標年次として政策の方向を示してきたが、残り期間が短くなったため、一〇年代を視野に入れた新しい方針を示す。月内に閣議決定する。
 焦点の一つである財政健全化を巡っては「世界的な金融危機と経済悪化を受けて、我が国経済及び税収は想定外のペースで落ち込んでいる」と経済環境の悪化を強調。基礎収支を一一年度に黒字化する政府目標は「達成が困難になりつつある」と初めて認めた。
 そのうえで「財政規律の観点から、現行の努力目標のもとで、景気回復を最優先としつつ財政健全化の取り組みを進める」と表明。「目標達成時期が遅れる場合でも、遅れをできるだけ短くする」とした。
 達成が難しいと認めながらあえて撤回しなかったのは、新しい目標が立てられないからだ。会合後に記者会見した与謝野馨経済財政担当相は「新たな目標は経済の前提がないとつくれない」と指摘。民間エコノミストの間でも「今は新しい目標を設定しても、経済の変動が大きすぎて達成の道筋を描けないはずだ」と一定の理解を示す声がある。
 ただ、今回の原案では歳出改革についての明確な方針も消えた。政府は社会保障費の伸びを毎年二千二百億円抑制するなどの歳出削減策を〇六年にまとめた「骨太の方針」で決めたが、今回の原案では「骨太の方針」についての記述がなくなった。経財相は会見で「〇六年の骨太は『バイブル』のように残る」と語ったが、歳出削減の取り組みまで緩む可能性がある。
 財政再建に再び向かうために必要な成長力の強化についても、具体策はこれからだ。昨年一月の「進路と戦略」では一一年度の実質経済成長率を「二%程度かそれ以上」としたが、今回の原案では「一一年度以降、平均で一%台半ば」。事実上の下方修正となっている。
 政府は昨年末、消費税を含む税制の抜本改革を一一年度から実施するよう準備するとした「中期プログラム」を閣議決定した。消費増税を含む歳入の手当てに道筋をつけても、歳出改革や成長戦略が滞れば、財政再建に向かう時期は一段と遠のくことになる。
 ▼基礎的財政収支 行政サービスに使う経費を、新たな借金をしないで毎年の税収などで賄えているかどうかを見る指標。赤字の日本では、経費の一部を新規の公債発行で補っている。財政の「フロー」にあたる収支の均衡は財政再建の第一歩だ。ただ、基礎収支の均衡だけでは債務残高は減らない。債務残高の国内総生産(GDP)比を引き下げる「ストック」の改善につながらなければ、財政再建は進まない。



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20090107 日本経済新聞 朝刊

経団連会長 ワークシェア「選択肢」
 日本経団連、日本商工会議所、経済同友会の経済三団体のトップは六日、新年の合同記者会見を開いた。昨年末から雇用情勢が急速に冷え込み、三団体は新たな対策を検討することで一致した。経団連の御手洗冨士夫会長は雇用確保策について「ワークシェアリング(仕事の分かち合い)も一つの選択肢だ」との考えを初めて示した。
 国内景気は二〇〇九年もマイナス成長に陥るとの声も聞こえ、会見は社会的な問題になっている雇用に話題が集中した。御手洗会長は「通常国会で失業給付の充実を盛った雇用保険の見直し法案を完成してほしい」と政府に注文を付けた。企業としては「積極的な新規雇用創出に努めていく」と述べ、官民一体で介護や保育といった人手不足の分野で雇用増大を図るべきだと主張した。
 日商の岡村正会頭は「景況、雇用とも厳しい状態が続き、年度末の資金繰りに厳しさが増す」と懸念した。それを受け政府が雇用などの安全網を急ぎ始めたなかで「民間も環境分野で事業を創造し仕事を増やさないといけない」と語った。
 同友会の桜井正光代表幹事も「市場縮小が雇用調整につながる単純な図式ではない。政府、企業、働き手の三者が役割分担で連携することが重要だ」と述べ、三団体は近く経済界全体を見渡した雇用対策の検討に入る。



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