20090107 日本経済新聞 朝刊

「骨太方針」骨抜き 中長期方針 原案を了承
 政府の経済財政諮問会議は六日の会合で、経済財政の中長期方針の原案を了承した。国と地方を合わせた基礎的財政収支を二〇一一年度に黒字にする財政再建目標は「困難になりつつある」として、事実上の先送りを表明。当面は景気回復に最優先で取り組む姿勢を打ち出した。ただ旗印としてきた「経済財政運営の基本方針」(骨太の方針)を守るとの記述もなくなり、今後の方針は極めてあいまいになった。
 「経済財政の中長期方針と十年展望」(仮)と題した原案は、昨年一月にまとめた「進路と戦略」を引き継ぐものだ。これまでは一一年度を目標年次として政策の方向を示してきたが、残り期間が短くなったため、一〇年代を視野に入れた新しい方針を示す。月内に閣議決定する。
 焦点の一つである財政健全化を巡っては「世界的な金融危機と経済悪化を受けて、我が国経済及び税収は想定外のペースで落ち込んでいる」と経済環境の悪化を強調。基礎収支を一一年度に黒字化する政府目標は「達成が困難になりつつある」と初めて認めた。
 そのうえで「財政規律の観点から、現行の努力目標のもとで、景気回復を最優先としつつ財政健全化の取り組みを進める」と表明。「目標達成時期が遅れる場合でも、遅れをできるだけ短くする」とした。
 達成が難しいと認めながらあえて撤回しなかったのは、新しい目標が立てられないからだ。会合後に記者会見した与謝野馨経済財政担当相は「新たな目標は経済の前提がないとつくれない」と指摘。民間エコノミストの間でも「今は新しい目標を設定しても、経済の変動が大きすぎて達成の道筋を描けないはずだ」と一定の理解を示す声がある。
 ただ、今回の原案では歳出改革についての明確な方針も消えた。政府は社会保障費の伸びを毎年二千二百億円抑制するなどの歳出削減策を〇六年にまとめた「骨太の方針」で決めたが、今回の原案では「骨太の方針」についての記述がなくなった。経財相は会見で「〇六年の骨太は『バイブル』のように残る」と語ったが、歳出削減の取り組みまで緩む可能性がある。
 財政再建に再び向かうために必要な成長力の強化についても、具体策はこれからだ。昨年一月の「進路と戦略」では一一年度の実質経済成長率を「二%程度かそれ以上」としたが、今回の原案では「一一年度以降、平均で一%台半ば」。事実上の下方修正となっている。
 政府は昨年末、消費税を含む税制の抜本改革を一一年度から実施するよう準備するとした「中期プログラム」を閣議決定した。消費増税を含む歳入の手当てに道筋をつけても、歳出改革や成長戦略が滞れば、財政再建に向かう時期は一段と遠のくことになる。
 ▼基礎的財政収支 行政サービスに使う経費を、新たな借金をしないで毎年の税収などで賄えているかどうかを見る指標。赤字の日本では、経費の一部を新規の公債発行で補っている。財政の「フロー」にあたる収支の均衡は財政再建の第一歩だ。ただ、基礎収支の均衡だけでは債務残高は減らない。債務残高の国内総生産(GDP)比を引き下げる「ストック」の改善につながらなければ、財政再建は進まない。



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