20090107 日本経済新聞 朝刊
金融行政は二〇〇九年、「平時体制」の抜本的な見直しを迫られる見通しだ。公的資金による資本注入の対象を拡大したり、欧米で金融危機の震源地となった大手証券会社への検査・監督を強化したりすることが焦点となる。中小企業融資をめぐる数値目標の導入も論点になりそうだ。
■公的資金 政府は〇九年度の予算編成で金融安全網の拡充を盛った。金融機関に公的資金を予防的に注入する新しい金融機能強化法の公的資金枠を二兆円から十二兆円に増額する。預金保険法の「危機対応勘定」も十七兆円の枠を維持。公的資金の資本注入枠は合計で二十九兆円に上る。
公的資金の注入対象は銀行など預金取扱金融機関に限っているが、金融システムの混乱を未然に防ぐという観点でみれば、大手証券会社や保険会社も無視できない。米国は大手証券や保険会社、ノンバンクに公的資金を注入した。
日本は生命保険会社が破綻した際に契約者を公的資金で保護する安全網を用意しているが、将来の損失に備え、資本を積んで経営破綻を回避する仕組みはない。公的資金注入の是非を含めて議論になりそうだ。
■証券の検査・監督 金融庁や証券取引等監視委員会で本格的な議論に発展しそうなのが、大手証券会社の検査・監督体制の見直しだ。欧米の金融危機では、証券会社による「投資銀行業務」のリスクの高さが浮き彫りになった。日本の証券検査はこうしたリスクを正確に検証する体制を十分取れていない。
証券会社の検査は〇五年に金融庁から監視委に移管されたが、検査はインサイダー取引など法令違反行為の摘発や顧客資産の分別管理の検証に注力しがち。リスク管理体制など経営の根幹に関する検査は苦手とされる。金融庁との共同検査の導入も議論になりそうだ。
金融商品取引法は証券会社を「単体で監督する」と規定しており、連結対象の企業に行政権限は及ばない。持ち株会社や兄弟会社の投資会社などには原則として行政処分できないなど問題がある。業務の複雑化に伴い、監督体制を見直すべきだとの議論が浮上しそうだ。米国のように証券会社が銀行持ち株会社などになれば、銀行並みの規制がかかる。
■中小融資 金融庁や中小企業庁は銀行界に中小企業融資の円滑化を再三要請してきたが、効果は十分に上がっていない。融資判断の領域に行政が踏み込めないことが大きな問題として横たわっている。
自民党の金融調査会・財務金融部会は〇九年初頭から中小企業融資の実効性を高める方策を議論する。
集めた預金のうちどの程度を貸し出しに回しているかを示す「預貸率」の目標設定を銀行などに義務づけるべきだとの意見が一部に出ているほか、預貸率が異常に低ければ行政処分の対象にすべきだとの意見もある。一律的な数値目標の導入には銀行界の反発も予想される。
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