20080430 日本経済新聞 朝刊

 大手生命保険七社が企業年金から運用を受託している団体年金(特別勘定)の二〇〇七年度の運用利回りは、平均でマイナス一四・八一%と〇二年度以来五年ぶりにマイナスとなった。株式相場の低迷や急激な円高により運用成績は全社で二ケタのマイナスだった。上位から下位までマイナス幅に約三%の開きも出ており、企業年金の受託競争に影響が出そうだ。
 団体年金の特別勘定は一定の運用利回りを保証する一般勘定と違い運用実績をそのまま運用利回りに反映する。企業は一般勘定に上乗せして生保に委託する。生保七社の〇六年度の運用利回りは平均五・四八%だった。
 〇七年度は十二月までの平均利回りがマイナス三・七九%で、年が変わってから運用成績は大幅に悪化した。三月に為替が円高に振れ年金資産に組み入れられているドル建て資産が大幅に目減りしたことなどが背景だ。
 運用成績のマイナス幅が最も小さかった大同生命保険は、年度の後半に海外の株式相場が下落したことから「外国株式の組み入れ比率を大幅に落とした」という。マイナス幅が最も大きかった住友生命保険は「サブプライムローン問題が保有する内外株式に与えた影響が大きかった」としている。〇八年度は「株式への投資配分をやや抑えめにする方針」という。
 企業年金では多くの企業が加入する適格退職年金制度が一二年に廃止されることから、確定拠出年金(日本版401k)などへの移行ニーズを狙って生保や信託銀行が受託を激しく競っている。

------------------------------------------------


20080429 日本経済新聞 朝刊

 後期高齢者医療制度の問題をまとめた。
 Q なぜ批判が集まっているのか。
 A 一言でいえば制度の分かりにくさにある。「何のための制度か」「保険料は上がるのか」――。厚生労働省はこうした点を丁寧に説明してこなかった。高齢者は不安にかられたまま四月十五日に年金から保険料を天引きされ、一気に動揺が広がった。
 七十五歳以上を「後期高齢者」と呼ぶネーミングも反感を買った。高齢者だけの担当医制導入も「行きたい病院に行けなくなるのでは」などと不安が広がった。
 Q そもそも制度導入の目的は何か。
 A 高齢者の医療に必要な財源の管理を市町村ごとではなく都道府県単位に広げ、保険の財政を安定させる狙いだ。医療費の膨張を抑え、高齢者に応分の負担を求める設計になっている。
 Q 厚労省は混乱にどう対応するのか。
 A 総務省や自治体と協力し、制度のPRに努める構えだ。野党の主張する制度廃止や抜本的な見直しには慎重だ。
 Q 高齢者の保険料は上がったのか。
 A 厚労省の説明によると、高い所得を得ている高齢者の保険料は上がり、低所得者は下がる傾向にある。しかし「実際に何割の高齢者の保険料が上がるのかは分からない」とも説明しており、混乱の原因になっている。都市部などでは低所得でも保険料が上がる例もみつかっている。
 Q 今後の焦点は。
 A 六月半ばの第二次年金天引きがスムーズに行くかどうかだ。扶養者(子供)が会社員の場合、七十五歳以上には四月から新たに保険料の負担を求めるはずだったが、一時的に免除されている。


------------------------------------------------


20080429 日本経済新聞 朝刊

 七十五歳以上の人を対象とする新しい医療制度が始まって一カ月たとうとしている。二十七日に投開票された衆院山口2区の補欠選挙で民主党候補が勝利したのは、与党が狙うガソリン税の暫定税率復活と、この制度への批判票を集めたためだ。
 補選敗退を受けて福田康夫首相は早速、舛添要一厚労相に「国民目線でしっかり対応してほしい」と、制度の運用に見直すべき点がないかどうかを検討するよう指示した。
 首相指示を待つまでもなく、制度運営は多くの課題を抱えており、改めるべき点が多々ある。いまだに保険証が届かない人が約二万人いる、厚生年金などから天引きされる保険料の額が本人に直前まで正確に知らされていなかった――などだ。
 こうした運営上の失策は早急に改善する必要がある。それには事務を担当している市区町村の広域連合が当事者意識をしっかりと持つことが必要だ。広域連合は都道府県単位の寄り合い所帯であり、保険運営者としての自覚に欠けている。高齢者の立場をおもんぱかって懇切丁寧な運営を尽くすことが不可欠である。
 もちろん厚労省にとっても人ごとではない。保険料をなぜ年金から徴収するのか、かかりつけ医の体制がどう変わるのか、などについて説明責任を果たしてこなかったことを真摯(しんし)に反省してほしい。
 この制度の財源構成は次の通りだ。高齢者への公的な医療給付費のうち五〇%を国と自治体の税金で賄い、四〇%は現役の働き手が健康保険制度を通じて拠出する。残る一〇%が高齢者本人の保険料負担だ。
 少子化や長寿化が進むなかで限られた医療財源を効率的に使う観点から、高齢者に相応の負担を求めるのは理にかなっている。保険料を年金から天引きすることは徴収の確実性を高めるためにもやむを得まい。
 給付費の九〇%を税と現役拠出金で支援する仕組みは、罹患(りかん)率が高まり保険原理が働きにくくなる高齢者にとって、むしろ有利な財源構成といえるのではないか。
 従来は家族に扶養されていた高齢者にも保険料がかかるようになるのは改悪であり、制度は廃止すべきだという意見が野党から提起されている。しかし足りなくなる財源をどう賄うのか、対案なしに廃止を叫ぶだけでは責任野党とはいえない。
 高齢者医療への拠出金を捻出(ねんしゅつ)するために、保険料率を上げて働き手の負担を高めた健保組合もある。高齢者医療の費用分担は常に現役世代や将来世代が背負う負担との見合いで考えるべきである。
 米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題を発端に金融不安が世界に広がるのと並行して、資源価格の高騰が加速してきた。資源高はガソリンや食料品などの値上がりを通じて先進国の個人消費を鈍らせる要因になり、世界経済の足を引っ張る。高率の経済成長を続けてきた新興国や発展途上国でも、強まるインフレ圧力が実体経済をむしばみ始めている。
 米国をはじめ主要国の金融当局は昨年夏以来、金融不安の広がりを鎮め、景気の減速や後退をいかに抑えるかに政策の力点を置いてきた。だが、インフレ圧力が強まるにつれ、金融緩和の副作用についても強く警戒すべき局面を迎えつつある。
 世界景気が減速し、需要見通しが下方修正されるなかで、国際商品相場は大幅に上昇した。直近の相場を昨年九月初めと比べると、だいたい原油は六割、トウモロコシは七割も高い。一方でドル相場は下落し、株式相場も多少戻ったとはいえ全般に安い。今日の商品先物市場は金融市場の一部だ。ドルと株が売られ、投資資金が商品に流れ込んだことが資源高を加速した。ドル建て商品の高騰はドル安の裏返しでもある。
 この間に先物に投資するヘッジファンドは株とドルを売り、債券と商品を買う手法で好調な運用成績をあげたという。低金利と株安で運用難に陥った米国の年金ファンドなども商品投資を拡大している。
 金融緩和は、相場の変動幅が大きく投資のリスクも大きい商品への投資に資金がシフトしやすい環境もつくった。ドル下落の影響をヘッジしつつ高い運用利回りを追求するのは、これらのファンドにとっては当然の行動かもしれない。その結果としての物価上昇に消費者が身構え、日用必需品以外への支出を抑えようとするのも、当然の行動だろう。
 相場過熱を抑えるため商品先物投資を規制すると、ファンドの危機という別の金融不安につながる恐れもあり、この面での議論は進んでいない。だが、インフレは大きな不安材料だ。まずサブプライム問題の根にある住宅市場冷え込みへの対応で金融市場の動揺を早急に鎮め、これ以上インフレを加速させない金融政策へ切り替える環境を整えるべきだ。


------------------------------------------------


20080429 日本経済新聞 朝刊

 衆院山口2区補欠選挙での与党敗北を受けて、福田康夫首相は二十八日、敗因となった後期高齢者医療制度の再点検を指示した。ただ公的年金からの保険料天引きなど制度は始まったばかりで、「広報活動の強化くらいしか打つ手はない」(政府高官)との見方も強い。補選での勝利に勢いづく民主党は同制度の問題点を厳しく攻め立てる構えで、後半国会の攻防の焦点になってきた。
 「年金や医療制度など選挙の敗因と考えられる点について、国民の目線でしっかり対応するように」。敗北から一夜明けた二十八日昼。首相は舛添要一厚生労働相を官邸に呼び、関連制度の問題点を洗い出し、早急に対策を講じるよう指示した。同日夕の自民党役員会でも「敗因を分析して、来るべき選挙に備えてほしい」と語った。
 二日前のモスクワ市内での記者団との懇談では「いま、どうこうすると軽々に言うべきではない」と与党内の一部にある制度見直し論に距離を置いていた首相だが、補選での敗北を受けて運用の改善に踏み込まざるを得ないと考えたようだ。
 与党内では補選敗北を巡り、自民支持層だった六十、七十歳代の離反が目立ち、「最初の保険料の天引きが補選告示と重なったのが敗因」との分析が大勢を占める。自民党選対幹部は「町村信孝官房長官や谷垣禎一政調会長には実施延期を申し入れたが、結局何もやらなかった」と振り返った。
 自民党の中川秀直元幹事長も二十八日の町村派総会で「説明不足に大きな原因があった。『安心なしに負担だけさせるのか』という疑問を解けなかった面も否定できない」と指摘した。
 だが同制度は会社員の子供が扶養する高齢者の保険料支払いを半年間免除するなど激変緩和措置をすでに盛り込んでおり、制度を早急に変更すればかえって混乱を招くとの指摘もある。厚労省幹部は「民主党が『うば捨て山』と言っているのは対案がない証拠。制度の見直しはあり得ない」と強調する。
 「見直してほしいということじゃない。厚労相は現状をよく把握しなければいけないと言っていたが、私もそれが先決だと思う」。首相は二十八日夜、現時点では制度変更までは考えていないと記者団に明言。政府筋は「与野党にはいろんな声があるから、まずは頭を冷やして、良い案が出てくるかを見極めるべきだ」と解説した。

------------------------------------------------


20080429 日本経済新聞 地方経済面

 広島銀行は五月一日、自動車保険の取り次ぎ販売を始める。インターネットを通して、自動車保険を購入する顧客を損害保険会社に紹介する。中四国地方の地銀では初という。紹介に伴う手数料収入につなげる。
 取り扱う商品はソニー損害保険の「自動車保険」や、アクサ損害保険の「アクサダイレクト総合自動車保険」など四商品。広島銀のホームページで、取り扱う自動車保険の商品内容を説明し、購入を希望する顧客を損保会社に紹介する。
 ネットに限定し、窓口販売はしない。自動車保険は商品設計が複雑で説明に専門性が求められるため、「行員による窓口販売は難しい」(金融商品営業部)という。
 自動車保険などは昨年十二月に金融機関の窓口で販売が全面解禁された。広島銀は医療保険やがん保険を取り扱っており、自動車保険投入で品ぞろえを増やす。

------------------------------------------------