20080429 日本経済新聞 朝刊

 衆院山口2区補欠選挙での与党敗北を受けて、福田康夫首相は二十八日、敗因となった後期高齢者医療制度の再点検を指示した。ただ公的年金からの保険料天引きなど制度は始まったばかりで、「広報活動の強化くらいしか打つ手はない」(政府高官)との見方も強い。補選での勝利に勢いづく民主党は同制度の問題点を厳しく攻め立てる構えで、後半国会の攻防の焦点になってきた。
 「年金や医療制度など選挙の敗因と考えられる点について、国民の目線でしっかり対応するように」。敗北から一夜明けた二十八日昼。首相は舛添要一厚生労働相を官邸に呼び、関連制度の問題点を洗い出し、早急に対策を講じるよう指示した。同日夕の自民党役員会でも「敗因を分析して、来るべき選挙に備えてほしい」と語った。
 二日前のモスクワ市内での記者団との懇談では「いま、どうこうすると軽々に言うべきではない」と与党内の一部にある制度見直し論に距離を置いていた首相だが、補選での敗北を受けて運用の改善に踏み込まざるを得ないと考えたようだ。
 与党内では補選敗北を巡り、自民支持層だった六十、七十歳代の離反が目立ち、「最初の保険料の天引きが補選告示と重なったのが敗因」との分析が大勢を占める。自民党選対幹部は「町村信孝官房長官や谷垣禎一政調会長には実施延期を申し入れたが、結局何もやらなかった」と振り返った。
 自民党の中川秀直元幹事長も二十八日の町村派総会で「説明不足に大きな原因があった。『安心なしに負担だけさせるのか』という疑問を解けなかった面も否定できない」と指摘した。
 だが同制度は会社員の子供が扶養する高齢者の保険料支払いを半年間免除するなど激変緩和措置をすでに盛り込んでおり、制度を早急に変更すればかえって混乱を招くとの指摘もある。厚労省幹部は「民主党が『うば捨て山』と言っているのは対案がない証拠。制度の見直しはあり得ない」と強調する。
 「見直してほしいということじゃない。厚労相は現状をよく把握しなければいけないと言っていたが、私もそれが先決だと思う」。首相は二十八日夜、現時点では制度変更までは考えていないと記者団に明言。政府筋は「与野党にはいろんな声があるから、まずは頭を冷やして、良い案が出てくるかを見極めるべきだ」と解説した。

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