20080427 日本経済新聞 朝刊
長期固定の住宅ローン金利が低水準で推移している。米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題などによる景気減速で市場金利(長期金利)に低下圧力がかかってきたためで、これを機に新たな利用や変動金利ローンからの借り換えを検討するのも一案だ。そこで、どうすれば有利に住宅ローンを利用できるか、二回に分けて考えてみる。
まずは、新規借入の期間が十五―三十五年の長期固定金利の住宅ローンをどこで借りれば有利かの検証だ。商品は大きく分けて二種類ある。住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)と民間金融機関の連携による「フラット35」と、銀行が独自に販売するローンだ。フラット35は同機構がローン債権を買い取る「買取型」が主流で、銀行や信用金庫などのほか、モーゲージバンクと呼ばれる専門業者が扱う。
昨夏から低下傾向
金利は二〇〇七年夏以降、低下傾向にある(グラフA)。変動金利ローンよりは高いものの、オールアバウト・住宅ローンガイドの高田晶子さんは「過去二十年間の変動金利の平均が約四・五%だったことを考えると、三%を下回る水準での固定には安心感もある」と言う。足元の長期金利上昇で五月は金利が上がりそうで、今後の金利動向についても確たることは言えないが、住宅ローンの賢い利用に長期固定商品の内容の把握は不可欠だ。
二つのローンの違いを示したのが表B。銀行独自のローンは団体信用生命保険(団信=顧客の死亡時などにローン返済を肩代わりする)の料金が借入金利に含まれるのに対し、フラット35は団信加入は顧客の自由で、入る場合は別途保険料を払う。銀行独自のローンは保証料が必要だが、フラット35は不要だ。
どこから借りれば得なのかを試算したのが表C。現時点で三千万円を「元利均等返済・ボーナス返済なし」で借りるとして、返し終えるまでの総支払額を計算した。
気を付けなければならないのは、金利などだけでは比較できない面があることだ。銀行によっては営業地域が限られる。モーゲージバンクでは提携ハウスメーカーから家を買うことが事実上の利用条件になるケースもある。あまり実績のない業者には不安を感じる人もいるだろう。
そこで試算では、フラット35は(1)地域的にも条件的にも割と利用しやすい(2)大手で実績も多い――の二点を満たす業者として、銀行はみずほ銀行、モーゲージバンクはSBIモーゲージを代表例とした。銀行独自のローンは三大メガバンクの中で最も有利なみずほ銀行を取り上げた。
総支払額は金利、団信保険料(銀行独自のローンにはない)、手数料、保証料(フラット35にはない)で構成し、他の費用は省いた。金利と団信保険料を合わせて「団信込み金利」として表記した。保険料(年〇・二八%程度)は今後変わる可能性もあるが、変わらないものとした。
毎月の金利点検を
結果は総支払額が最も少ないのはみずほ銀行独自のローンで、フラット35に限るとSBIが有利だった。
総支払額の構成要素には、それぞれ一長一短がある。フラット35では、みずほ銀行は金利は高めだが、手数料は定額制(三万一千五百円)で少なめだ。SBIは金利は低いが、手数料が定率制(融資額の一・七八五%)で膨らむ。みずほ銀行独自のローンは、保証料はかかるが、団信保険料が不要という利点もある。
試算結果を活用するうえでは、いくつか注意点がある。
第一は、どこのローンが有利か不利かは今後の経済・金融情勢次第で変わり得ることだ。期間三十五年の三千万円のローンを例にとると、〇八年三月はSBIのフラット35の方がみずほ銀行独自のローンよりも実は有利だった。五月以降も状況が変わる可能性はあり、住宅ローンの上手な利用には金利などのこまめなチェックが欠かせない。Cでは、借入額三千万円で試算したが、額が変わると有利不利も変化する可能性があることにも留意してほしい。
第二は、フラット35は団信に入らずに利用できることだ。団信抜きでSBIから借りると、期間十五年以外はみずほ銀行独自のローンより総支払額は少なくなる(表Cの(4))。いざというときの備えがないのは不安だが、既に生命保険に加入している場合などには、団信非加入での借り入れも選択肢になり得るだろう。
第三は「銀行独自のローンは自営業者などには借りにくい場合もある」(ファイナンシャルプランナーの深田晶恵さん)とされることだ。詳しいことは銀行に確認しよう。
銀行独自のローンは三大メガバンクではみずほ銀行が最も有利だが、フラット35ではSBIより負担が少なくてすむ業者もある。ただ、住宅金融支援機構がホームページ(http://www.jhf.go.jp/)に掲載するデータなどをもとに団信保険料込みで計算する限り、借入額三千万円、期間十五年、二十年あるいは三十五年という条件でいま東京で利用する場合、総支払額は最も少ない業者でも、みずほの独自ローンより多い。
(編集委員 清水功哉)
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