5月22日2時30分配信 毎日新聞


 政府・与党は21日、後期高齢者医療制度の年金からの保険料天引きを一部見直す方針を固めた。現在は原則、年金月額1万5000円以上の人を天引き対象としているが、下限を「3万円以上」に引き上げる案を軸に市町村と調整を進める。次回の天引き期日、6月13日までにまとめる制度の見直し案に盛り込む意向だが、システム改修を伴うため、実際の引き上げ時期は秋以降となる見通しだ。

 75歳以上の人約1300万人のうち、保険料が天引きされていない人は300万人弱。野党だけでなく与党内からの批判も受け、天引き対象外の人を数百万人増やすことにした。低所得者への配慮以外に、今後の保険料アップや、来年10月には住民税の年金天引きも始まるのを踏まえ、「下限額を引き上げておかないと、やがて引き落とせない人が出てくる」(厚生労働省幹部)との事情もある。

 また政府は21日、終末期の75歳以上の人の診療方針を患者らと話し合って記録した場合に医師が受け取る診療報酬「後期高齢者終末期相談支援料」を凍結し、厚労省に取り扱いを検討する場を設ける方針も固めた。

 このほか、保険料(均等割り)を9割軽減する対象者の拡大▽保険料や人間ドック費の補助など自治体が実施する負担軽減策への助成▽被扶養者約200万人を対象とした保険料減免の継続▽70~74歳の医療費窓口負担増の凍結期間延期--も検討を進める。【吉田啓志】

5月21日19時40分配信 毎日新聞


 損害保険会社が火災保険料などを取り過ぎていた問題で、東京海上日動火災保険など損保大手6社は21日、取り過ぎた保険料の総額が最終的に298億円に達する見通しであることを明らかにした。取り過ぎの契約件数は6社合わせて約133万件の見込み。損保業界では05年から07年にかけて、総額約400億円の自動車保険などの保険金不払い問題が起きており、相次ぐ不祥事に業界の体質が改めて問われそうだ。

 21日会見した各社の幹部は取り過ぎの原因を「保険商品が複雑化し、(顧客への)説明が不十分だった」(三井住友海上火災保険の柄沢康喜専務)などと説明し、陳謝した。各社は取り過ぎた保険料を契約者に順次返還している。

 取り過ぎ額の内訳は火災保険(セット販売が多い地震保険を含む)が237億円(約62万件)▽自動車保険が43億円(約68万件)▽その他の傷害保険などが18億円(約3万件)。契約1件当たりの取り過ぎ額は平均で2万円強となる。今年夏に再発防止策も含めた最終報告をまとめ、取り過ぎ額も確定する。

 取り過ぎ問題は06年、耐火性が高いツーバイフォー(2×4)住宅に火災保険料の割引を適用していなかったことで発覚した。さらに、1981年施行の新耐震基準に沿って建築された住宅への地震保険料割引や、5年以上無事故・無違反の「ゴールド免許」保有者への自動車保険料割引、自営業者の病気・けがを保障する傷害保険で、職種ごとの割引などが適用されず、保険料を取り過ぎていたことがわかった。

 問題の発覚後、6社は、金融庁の要請を受けて、すべての個人向け保険を対象に調査を進めてきた。【辻本貴洋】

20080522 日本経済新聞 朝刊

 ニッポンの成長の一端を支えてきた医療。高齢化社会の到来は制度の限界を浮かび上がらせ、存続のため公平性やコスト面からの大幅な見直しを迫られている。医療制度は蘇(よみがえ)るのか。第一部は「ほころびる制度」を探る。
 一月末、横浜市中区の薬局に男性(89)が現れ、手元の薬をぶちまけ涙目で訴えた。「多過ぎてどうやって飲めばいいかわからん」
 この国では今、喜ばしいはずの長寿をめぐり制度のひずみが広がる。不眠や高血圧、高脂血症などの改善を求めた男性に、四つの医療機関が出した結論は二十種類一日三十七錠を口にすること。薬剤師の高橋洋一(55)が各医療機関と調整し、やっと十五種類二十八錠に。一度に飲む分も一包みとなり、混乱は収まった。
薬の無駄2000億円超
 病気ごとに別の医療機関に行くことも多い高齢者では「よくある話」と高橋。「飲まずに無駄となる薬代や、飲まなかったことで病状が悪化してかかる医療費は日本全体で二千億―五千億円」。東大准教授、福田敬(43)によると、米国やカナダでの研究例を当てはめれば、こんな金額まで出る。「縦割り処方」に多額の医療費が注ぎ込まれる。
 保険証一枚あれば、どの病院・診療所でも診てもらえる医療制度と医療関係者の努力が、世界トップクラスの長寿国家を築き上げたはずだった。ところが、国民の健康を守るための最適な仕組みが迷走を始めた。
 集中砲火を浴びる後期高齢者医療制度(長寿医療制度)が高齢化への処方せんと考える医師もいる。「能力あるかかりつけ医が患者を診れば、医療費は抑えられ質も上がる」と東京都国立市の開業医、新田国夫(62)。患者と合意のうえで開業医が「主治医」になる新制度。患者の健康全般を管理する「医療の水先案内人」として、別の医師にかかった内容も把握。「薬や検査の重複も防げるはず」。すでに百人以上を診る。
 新制度に対し高齢者は「年金から保険料が天引きされた」と嘆き、医師は「報酬が低すぎ、必要な検査もできない」と怒る。野党は廃止法案を提出する構えだが、それで明日の医療は見えてこない。「方向性は間違っていない」。新田はそう感じている。
 国際的に見ればカネをかけず効率運営されてきた日本の公的医療。高齢化はその制度の体力をも奪う。一九九五年度には二十七兆円だった国民医療費は今三十三兆円を超す。十数年後には五十兆円を上回るともいう。どう賄うかの議論は避けて通れない。ただそのとき、ギリギリまで無駄を省く努力は必要だ。費用対効果も無視はできない。
 英国での訴訟が注目を集める。高齢者らに使われる認知症治療薬「アリセプト」。エーザイの主力製品の一つだが、当局が「費用の割に効果が不十分」として、公的医療での使用制限を決定。これに対し同社側が「不当」と訴えた。
 エーザイ側の主張は一部認められたものの、結末はまだ見えない。費用対効果の根拠はデータの取り方などが難しいものの、日本での研究は進んでいない。
 公的制度に依存し過ぎない姿勢も求められそうだ。
公だけに頼れない
 「体調はどうですか」。在宅医療を支える会員制組織「ライフケアシステム」(東京・千代田)の医師、辻彼南雄(50)は都内にある九十代の女性患者宅を訪れ診察を始めた。家族は「いつでも電話で先生の指示を仰げ、救急車も呼ばずにすむ」とほほ笑む。
 「病気は家庭で治すもの」と患者と医師が共同で三十年近く前に設立。通常の診療は公的保険で賄うが、家庭状況まで把握する医師に二十四時間連絡がつく。入退院の手配や看護師らによる健康チェックの訪問などもある。「主治医」をさらに充実させた形を月七千円の会費で賄う。当初六十世帯だった会員は三百五十世帯に。確かな安心を求める「自主組織」は公的制度の安定にもつながる。
 医師と患者だけの問題ではない。だれかが医療コストという「痛み」を背負わなければならない。選択の時がやってきた。=敬称略
(「蘇れ医療」取材班)
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【図・写真】後期高齢者医療制度の相談窓口(12日、東京・足立区役所)

20080522 日本経済新聞 朝刊

 舛添要一厚生労働相は二十一日、後期高齢者医療制度の見直し案について「六月第一週にはまとめたい」と述べ、とりまとめを当初予定よりも一週間程度前倒しする意向を表明した。野党の同制度廃止法案の国会審議が来週に始まる見通しになったのを踏まえ判断した。
 厚生労働省は同日、国民健康保険の保険料を「三方式」と呼ばれる方法で計算している三百十四の市町村では、低所得の一部世帯で平均保険料が上がる例があるという試算を、民主党が開いた後期高齢者医療制度の勉強会に示した。




20080522 日本経済新聞 朝刊

 回復の見込みが乏しい七十五歳以上の治療方針を患者と医師らが話し合って文書にまとめると、医療機関に報酬が支払われる「終末期相談支援料」が揺れている。後期高齢者医療制度(長寿医療制度)で新設された診療報酬で、与野党で廃止論が強まる一方、二十一日に開いた中央社会保険医療協議会(中医協、厚生労働相の諮問機関)では、廃止や抜本見直しに慎重な意見が相次いだ。
 「高齢者の医療費は増えており、ぎりぎりの選択だった」「現象面だけで議論して全体の制度評価をしていない」。中医協では終末期相談支援料を擁護する意見が目立った。一部の委員からは「政治家は政争の具にして不安をあおっている」との強硬論も飛び出た。
 ただ一部の委員が「(生命に直接かかわる)究極の人権の問題で、すべての患者に受け入れられるとは言い難い」と話し、患者の強要につながらないようにくぎを刺す場面もあった。