20080524 日本経済新聞 朝刊

 経済財政諮問会議は二十三日、公的年金積立金の運用改革について議論した。出席した舛添要一厚生労働相は運用対象の多様化について「ヘッジファンドへの不信感は強い」と発言。自民党の議連での「百五十兆円の積立金のうち五十兆円はファンドでの運用をすることは国民の理解を得られる」という過去の発言からトーンダウンした。
 舛添厚労相は運用改革について「公的年金積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の中にある運用委員会に民間企業出身者を入れた」と強調。当面は運用委員会での議論活発化を軸に運用改革を進める考えを示した。
20080524 日本経済新聞 朝刊

 厚生労働省が社会保障費抑制のために進めている「療養病床」の削減計画が行き詰まりかねない雲行きとなった。療養病床は慢性疾患を抱える高齢者などが長期入院する施設で、同省は今の三十五万床を二〇一二年度末に十五万床まで減らす計画だった。ただ、日本経済新聞が実施した聞き取り調査によると、各都道府県が残す予定の病床数は約二十二万床に上る。同省は都道府県などに追加的な見直しを求める。
 「社会的入院」が多い療養病床は日本の医療費拡大の背景のひとつとされる。厚労省は医者による治療があまり必要ない患者の一定割合を介護施設などに移し、療養病床を十五万床に削減。コストの高い病院から相対的に安い介護施設へ患者が移ることで、社会保障給付費を年三千億円節約できるとはじいていた。
 厚労省は病床数を六割近く減らすこの全体計画に基づいて、各都道府県ごとに計画を作るよう指示。ところが計画を未公表の新潟、奈良、佐賀の三県を除いた病床数の合計は二十一万三千二百十五床となり、三県を加えると二十二万床程度になる見込みだ。
 病床数が減らない理由は高齢化の加速で患者の数が増えることへの懸念が医療機関などで強まっていることが一因。とりわけ東京都は高齢者が大幅に増えるとして病床の削減そのものを断念。現在より七千床多い二万八千床に増やす計画を打ち出した。地域によっては地元に受け皿となる介護施設が少なく、「厚労省の指示通りに減らすと病院にも介護施設にも収容できない患者が出かねない」との声もある。
 与党内でも反対論が出始めている。自民党の「療養病床問題を考える国会議員の会」は病床削減のための安心できる受け皿が整っていないとして、政府方針の抜本転換を求める提言を六月にまとめる方針だ。
 厚労省は今後各都道府県の算定方法などをチェックし、過大な計画には注文を付けるなどさらに病床数の絞り込みを促す方針。都道府県も医療費抑制のため主体的な削減計画の策定が求められる。
 厚労省は年末の介護報酬改定で患者の受け皿となる介護施設の報酬を引き上げ、療養病床から介護施設への転換を促すことも検討する。
 ただ施設ごとのコストが上がればその分社会保障費の節約幅は少なくなる。高齢者の受け皿の確保と社会保障費の削減のバランスをどう取るのか。混迷する後期高齢者医療の問題などと併せて、医療見直しの争点の一つとなりそうだ。
20080524 日本経済新聞 朝刊

 ▼療養病床 慢性病など長期間にわたって療養を必要とする高齢者が入院する施設。急性期の患者が入院する一般病床と一九九二年に分けられ、二〇〇一年の医療法改正で現在の形になった。療養病床では介護施設の代わりに使われる「社会的入院」が多く、医療費が膨らむ一因となっている。
20080523 日本経済新聞 夕刊

 医療ケアの必要な高齢者が在宅生活を続けられる新サービス。それが「療養通所介護」だ。在宅療養を望んだり、病院での長期入院の抑制でやむなく自宅に戻ったりした人たちには願ってもないものだ。だが、始まって二年たつのに全国で六十カ所にも達していない。
 「表情が良くなり、言葉も少し出るようになった。病院とは全く違う雰囲気も気に入っているようです」
 埼玉県鳩山町で夫婦二人暮らしの根岸和さん(72)は、夫の渡さん(75)の最近のケアサービスに満足している。渡さんが週二回通っているのは「彩西療養通所介護鳩山」。
飲食店を改装
 元はライブハウスだったという天井の高いロッジ風の建物をNPO法人(特定非営利活動法人)彩西ナーシングケアが買い取って、五つの個室を設け二〇〇七年十月から始めた。
 渡さんは〇六年に脳こうそくで倒れ、右半身まひで言語障害もある。要介護度は四。つい大声が出てしまうので、他の施設では敬遠されがちだったが、ここでは看護師などスタッフがじっくりかかわるので落ち着いて過ごすという。
 脳卒中の後遺症で全身まひ、ほぼ寝たきりのAさん(75)や、タンの吸引が頻繁に必要で胃ろうのBさん(68)など医療ニーズの高い高齢者も通ってくる。
 療養通所介護は〇六年四月から介護保険制度に新しく加わったサービス。常時看護師の観察が欠かせない中重度の要介護高齢者が日中過ごす。自宅訪問している訪問看護ステーションの看護師たちが「通所スタイルがあれば充実したケアができる」と要望してきた。
 難病の脊髄(せきずい)小脳変性症のCさん(76)は、横浜市にある青葉区メディカルセンターに週二回通う。ベッドに寝たままで外出機会がなかったが、ガラリと様子が変わった。
 車イスに座って視野が広がり、周囲に意志を伝えるようになった。着替えや移乗の際に暴れることもなく落ち着いて過ごす。看護師やヘルパーが自宅訪問を続けてきたが、一時間半ほどの短い訪問中ではせわしく、不快感が募り反発行為が出てしまったようだ。
家族の休息にも
 同センターの管理者で看護師の松木満里子さんは「ここでは長時間一緒に過ごすので、利用者ときちんと向き合える」と話す。
 在宅療養者だけでなく、支える家族の休息にもなる療養通所。だが、この四月までに全国でわずか五十三カ所しか開設されていない。青森、宮城、和歌山など十三県には一つもない。
 必要なのになぜ広がらないのか。関係者は声をそろえて「介護保険から事業者に支払われる介護報酬が低すぎる」と断言する。一般の通所介護(デイサービス)と比べてみる。
 通所介護は要介護五の場合の報酬は、利用者一人当たり一万千二百五十円だが、入浴や個別機能訓練などの加算が付く。療養通所の報酬は一律一万五千円で加算は一切ない。そのため通所介護の二割増ほどにとどまる。通所介護と違い医療ケアの専門職が配置されているのに差額は小さい。
 「二万三千円にして加算も設けてほしい」と、制度化へ旗を振ってきた先駆的な事業者や日本訪問看護振興財団は主張してきた。
 運営基準もハードルが高い。通所介護の職員配置は利用者数により異なり、十人ならば二人でよいが、療養通所は一・五対一だ。〇六年度の発足当初は、がん末期と難病の患者に限定されており、手厚い人員が必要だったが、〇七年度からその枠が消えて軽度者にも門戸が開かれた。一日の利用定員も五人以内と少なくスケールメリットが出ない。現場からは「定員を増やして」という声が強い。
 「緊急対応時の病院が近接地に」という開設条件もネックだ。「距離がはっきりしないので、行政との折衝で苦労した」(さいたま市の療養通所介護えがお)。それに「緊急時には主治医に連絡するので、この条件は不要では」と事業者たちは首をかしげる。
 介護保険制度は〇九年春からの第四期を控え、近々再検討に入る。「(療養通所は)全国で五百カ所は必要」(同振興財団)という目標を実現できるような改正が望まれる。
 (編集委員 浅川澄一)
 「開設している事業者も約九割は赤字」(日本訪問看護振興財団調べ)という厳しい実態。そこへ助成金を投入する自治体が出てきた。
 横浜市は改装や備品調達に上限三百万円、重度者対応機器に同百五十万円の補助を始めた。二つの事業者が昨年、ベッドや入浴用のリフトの購入にあてた。同市では「五年のうちに全十八区で整備を進めたい」としている。
 一つも事業所がない新潟県も今年度に一千五百万円を予算計上した。建設費や備品など使途は問わずにひとつの事業者が全額使える。
 いずれの助成も事業者の開設意欲を高める狙いだ。だが、肝心の人件費には使えない。一方で療養病床の廃止・縮小をはじめ、入院期間の短縮策が浸透し早期退院を迫られる人が増加するのは確実。さらに踏み込んだ自治体の施策が期待される。
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【図・写真】彩西療養通所介護鳩山はライブハウスを改装し、昨秋サービスを始めた(埼玉県鳩山町)

5月22日11時38分配信 中日新聞


 【滋賀県】ブラックバスの栄養価に医療関係者が注目-。大津市の滋賀医大医学部付属病院が入院患者向けブラックバス料理を開発し、21日に初めて病院の給食に出した。ほかの白身魚に比べて高タンパクで低脂肪、アミノ酸のタウリンが豊富で「メタボリックシンドロームを気にする人にもお薦め」という。

 外来魚のブラックバスを食べることで、琵琶湖の生態系に与える影響を減らそうと、県庁の食堂などでメニュー開発が進んでいることに着目。タイに比べて脂質が10分の1、エネルギーは半分以下で、消化吸収を助けるタウリンが3倍含まれるなど、栄養価が優れている点を評価した。

 開発には管理栄養士や調理師らが昨年から取り組み、「ムニエル」「チリソース」「ネギ味噌焼き」の3種類を考案。独特のにおいを消すため、香味野菜を使ったり、牛乳に浸したりと工夫を凝らした。

 ムニエルを患者に試食してもらったところ、6割以上が「おいしい」と答えたため、メニューに加えた。

 この日は、昼食用にムニエル200食を準備。評判は上々で、男性患者(63)は「さっぱりしていておいしい。クセがなく、いろいろな料理に応用できるのでは」と笑顔でほお張っていた。

 病院は月に1回程度、メニューに出す予定をしている。岩川裕美・栄養治療部副部長は「食欲増進につながるので入院患者に適している。カロリーが少なく、肥満や糖尿病に悩む人にも良いのでは」と話している。

 (勝山友紀)