20080524 日本経済新聞 朝刊
厚生労働省が社会保障費抑制のために進めている「療養病床」の削減計画が行き詰まりかねない雲行きとなった。療養病床は慢性疾患を抱える高齢者などが長期入院する施設で、同省は今の三十五万床を二〇一二年度末に十五万床まで減らす計画だった。ただ、日本経済新聞が実施した聞き取り調査によると、各都道府県が残す予定の病床数は約二十二万床に上る。同省は都道府県などに追加的な見直しを求める。
「社会的入院」が多い療養病床は日本の医療費拡大の背景のひとつとされる。厚労省は医者による治療があまり必要ない患者の一定割合を介護施設などに移し、療養病床を十五万床に削減。コストの高い病院から相対的に安い介護施設へ患者が移ることで、社会保障給付費を年三千億円節約できるとはじいていた。
厚労省は病床数を六割近く減らすこの全体計画に基づいて、各都道府県ごとに計画を作るよう指示。ところが計画を未公表の新潟、奈良、佐賀の三県を除いた病床数の合計は二十一万三千二百十五床となり、三県を加えると二十二万床程度になる見込みだ。
病床数が減らない理由は高齢化の加速で患者の数が増えることへの懸念が医療機関などで強まっていることが一因。とりわけ東京都は高齢者が大幅に増えるとして病床の削減そのものを断念。現在より七千床多い二万八千床に増やす計画を打ち出した。地域によっては地元に受け皿となる介護施設が少なく、「厚労省の指示通りに減らすと病院にも介護施設にも収容できない患者が出かねない」との声もある。
与党内でも反対論が出始めている。自民党の「療養病床問題を考える国会議員の会」は病床削減のための安心できる受け皿が整っていないとして、政府方針の抜本転換を求める提言を六月にまとめる方針だ。
厚労省は今後各都道府県の算定方法などをチェックし、過大な計画には注文を付けるなどさらに病床数の絞り込みを促す方針。都道府県も医療費抑制のため主体的な削減計画の策定が求められる。
厚労省は年末の介護報酬改定で患者の受け皿となる介護施設の報酬を引き上げ、療養病床から介護施設への転換を促すことも検討する。
ただ施設ごとのコストが上がればその分社会保障費の節約幅は少なくなる。高齢者の受け皿の確保と社会保障費の削減のバランスをどう取るのか。混迷する後期高齢者医療の問題などと併せて、医療見直しの争点の一つとなりそうだ。
厚生労働省が社会保障費抑制のために進めている「療養病床」の削減計画が行き詰まりかねない雲行きとなった。療養病床は慢性疾患を抱える高齢者などが長期入院する施設で、同省は今の三十五万床を二〇一二年度末に十五万床まで減らす計画だった。ただ、日本経済新聞が実施した聞き取り調査によると、各都道府県が残す予定の病床数は約二十二万床に上る。同省は都道府県などに追加的な見直しを求める。
「社会的入院」が多い療養病床は日本の医療費拡大の背景のひとつとされる。厚労省は医者による治療があまり必要ない患者の一定割合を介護施設などに移し、療養病床を十五万床に削減。コストの高い病院から相対的に安い介護施設へ患者が移ることで、社会保障給付費を年三千億円節約できるとはじいていた。
厚労省は病床数を六割近く減らすこの全体計画に基づいて、各都道府県ごとに計画を作るよう指示。ところが計画を未公表の新潟、奈良、佐賀の三県を除いた病床数の合計は二十一万三千二百十五床となり、三県を加えると二十二万床程度になる見込みだ。
病床数が減らない理由は高齢化の加速で患者の数が増えることへの懸念が医療機関などで強まっていることが一因。とりわけ東京都は高齢者が大幅に増えるとして病床の削減そのものを断念。現在より七千床多い二万八千床に増やす計画を打ち出した。地域によっては地元に受け皿となる介護施設が少なく、「厚労省の指示通りに減らすと病院にも介護施設にも収容できない患者が出かねない」との声もある。
与党内でも反対論が出始めている。自民党の「療養病床問題を考える国会議員の会」は病床削減のための安心できる受け皿が整っていないとして、政府方針の抜本転換を求める提言を六月にまとめる方針だ。
厚労省は今後各都道府県の算定方法などをチェックし、過大な計画には注文を付けるなどさらに病床数の絞り込みを促す方針。都道府県も医療費抑制のため主体的な削減計画の策定が求められる。
厚労省は年末の介護報酬改定で患者の受け皿となる介護施設の報酬を引き上げ、療養病床から介護施設への転換を促すことも検討する。
ただ施設ごとのコストが上がればその分社会保障費の節約幅は少なくなる。高齢者の受け皿の確保と社会保障費の削減のバランスをどう取るのか。混迷する後期高齢者医療の問題などと併せて、医療見直しの争点の一つとなりそうだ。