20080621 日経プラスワン

 資産形成、住宅購入、子育て、老後の生活――。お金に関する「身近なよろず相談家」ともいうべきファイナンシャルプランナー(FP)。聞いたことのある人は多いだろうが、実際にどのような相談ができるのか、相談するとどんな利点があるのかなどは案外知られていない。FPの上手な活用法を探った。
 さいたま市に住む三十代のある夫婦は、三千八百万円程度の新築マンションの購入を計画している。年収は六百五十万円。貯蓄は約九百万円あるが、夫は「二人の子どもの教育費も考えると、住宅ローンを抱えて大丈夫なのか不安」と気に病む。夫婦はFPの山田幸次郎さんを訪ねた。
 面談では、妻がつけている家計簿をもとに、現在の出費の状況を確認。住宅購入に関する情報収集の状況や金利についての知識、教育方針、趣味や生活スタイルなど、幅広い情報について、山田さんが聞いていく。一見、住宅購入に関係のない質問も「相談者の性格やリスク許容度などを理解するうえで重要」(山田さん)という。約一時間で初回の面談は終了した。
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 次の面談は「キャッシュフロー表」を見ながらの説明。頭金は一千万円、三十年固定金利でローンを組んだ場合の将来のキャッシュフローを見ると、長男が中学に入学してから大学を卒業するまでの約十年間、年間の収支が継続的に赤字になり、貯蓄残高が急減することが明らかになった。「漠然とした不安が数字で示されてハッとした」と妻。
 山田さんはローンの組み方や条件などの試算を重ねたほか、家計の改善点や今後の注意点などを助言した。二回の面談で時間は二時間強、相談料は一万五百円だった。夫は「将来が見通せるようになって、安心感を得ることができた」と満足げだ。
 FPの資格には、NPO法人日本FP協会が認定するAFPとその上級資格のCFP、社団法人金融財政事情研究会が認定するFP技能士(一―三級)がある。日本には現在、FP資格を持つ人が約三十万人いるが、自己啓発のために資格だけ取得する人や金融機関の社員も多く、実際にFP業務で収入を得ている人は一万人弱とされる。
 日本FP協会の「FP実態調査」によると、一時間当たりの相談料は相談内容やFPの実務経験に応じて、五千円未満から二万円以上と幅がある(グラフA)。平均は六千八百円だ。
 日本FP協会は東京と大阪で定期的に「くらしとお金のFP相談室」という無料の体験相談を実施している。家計に漠然とした不安を持つ人が「お試し」で利用する例も多く「二カ月先まで予約でいっぱい」(同協会)という。
 これまでに多かった相談内容は「生命保険の加入見直し」「ライフプラン・老後の生活資金」「住宅ローンの借り入れ・見直し」など(グラフB)。二〇〇七年後半からは保有する金融資産が大幅に値下がりし、資産運用の相談にやって来る人も増えている。日本FP協会は「金融機関の説明だけでは納得できず、セカンドオピニオンを求めにくる人が多い」とみている。
 では、実際に相談したいときに、どういう基準でFPを選べばいいのか。表にFP選びのチェックポイントをまとめた。FPの中には金融機関などと代理店契約を結び、投資信託や保険を販売することによって手数料収入を得ている人がおり、どのようなネットワークがあるのか事前に聞いておきたい。FPの助言が特定の商品に偏っていないかどうか、点検が必要だ。
 ただ、手数料収入を得ることに問題があるわけではなく、商品の購入まで希望するなら、むしろ代理店契約を結んでいるFPに相談した方が最後まで責任を持ってもらえる利点がある。保険の見直し相談を得意とし、生損保八社と契約するFPの川島登美子さんは「最善の設計をするにはこの八社で十分」と話す。
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 FPを探す手段としては、ネット検索を利用する人が多い。最近ではホームページやブログを開設するFPも多い。得意分野、考え方、料金体系、顔写真などを明示しているFPの方が安心感はあるが、実際に会う前にメールや電話で連絡をして、どのような応対をするか確認した方がよいだろう。
 保険や住宅ローン、資産運用などは、家族構成が変わったり、収入が変化したりした場合など、定期的な見直しが必要になる。実際に「お客さんとは一回の相談では終わらず、長い付き合いになることが多い」と川島さん。信頼できるFPを探すことが賢い家計術の第一歩といえそうだ。
(手塚愛実)
【図・写真】日本FP協会の無料体験相談は2カ月先まで予約で埋まっている
20080621 日経プラスワン

 「家計のグローバル化」が指摘される昨今だが、外貨建て金融資産の保有額を全国の既婚男女に聞いたところ、最も多かったのは「持っていない」で、全体の六割強を占めた。保有している人の中では「五十万円未満」が一一%、「百万円以上五百万円未満」が八%、「五百万円以上」が七%とばらけており、外貨建て投資への姿勢にはかなりの個人差があるようだ。
 通貨別で最も保有比率が高いのは、やはり米ドル(六五%)。高金利通貨であるオーストラリアドル(一八%)やユーロ(一六%)の人気も根強い。このほか、ニュージーランドドルや「南アフリカランドやトルコリラに投資している」(福岡県の男性、34)という人もおり、投資先は広がる傾向にあるようだ。
 外貨建て資産を持つうえで注意が必要なのが、為替リスク。相場の方向感がつかみにくいため、先行きを見誤ると「外国為替証拠金取引(FX)に手を出して、三日間で二百万円損した」(奈良県の会社員、35)という事態にもなりかねない。「リスクが高いので手を出さない」(宮城県の公務員、47)、「知識がないので保有しない」(三重県の会社員、34)という人が多いのが実情だ。
 調査の方法 調査会社のマクロミルに依頼し、インターネットで実施。対象は全国の既婚の成人男女で、有効回答は六百十八人(男女半々)。
20080620 日本経済新聞 朝刊

 厚生労働省は十九日の年金業務・組織再生会議に、社会保険庁の後継組織「日本年金機構」の組織改革案を提出した。同庁勤務時に処分を受けた職員は正規職員でなく有期雇用職員として採用するが、給与水準は同じにする。有期雇用職員の契約期間は三年以内で更新も可能。
20080620 日経産業新聞

 月に二回、横浜市南区にあるグループホームで入所者の笑顔が見られる日がある。和田歯科医院(横浜市)が実施する訪問歯科診療の日だ。通院できない高齢者らを対象に、自宅や施設などを訪問して治療している。
 認知症の高齢者ら十八人が暮らすグループホーム。和田真澄院長は歯科衛生士の二人と診察にあたり、運び込んだ四つの工具箱から治療用具を取り出す。箱には入れ歯用器材やレントゲン撮影機材がそろっている。和田院長は「すべての治療に対応できるようにしている」と明かす。
 「具合はどう?」「きれいにしてるね」。アロハシャツにジーンズ姿の和田院長が気さくに声をかけると、入所者の顔も自然とほころぶ。約四十分で入れ歯の調整や口腔(こうくう)状態の確認など六人を診察した。
 グループホームの所長は「認知症だと、知らない人と一緒にいたり、診察でイスを倒されたりすると恐怖感を抱く。来てもらえれば入所者もふだん通りに接することができ、助かる」と話す。
 訪問先はグループホームや障害者施設など南区を中心に四施設。個人宅の約七十人も診ており、「周りの歯科医はこんなに診察していない」(和田院長)。医師二人、歯科衛生士四人が担当し、多い日には十五人を診察する。休日返上で治療にあたることもある。
 和田歯科医院は一九八八年に開業した。訪問歯科診療を始めたのは五年後の九三年。かかりつけ患者が別の病気で通院できなくなったことがきっかけだ。和田院長は「自分の患者は最後まで責任持って診るべきだ」と話すが、当時は訪問診療が珍しかったという。
 それから十五年間。訪問歯科診療にこだわるのは、丈夫な歯を長く保つためには口腔ケアが欠かせないからだ。「歯磨きを続けると口の周りの筋肉が鍛えられ、歯を長く保てる」と指摘する。
 二年前まで南区の歯科医師会で理事を務め、口腔ケアの必要性を講演などで主張した。介護保険制度が始まったこともあって訪問歯科診療が増え、ピーク時は南区にある歯科診療所のうち約四割にあたる四十四施設が実施していた。
 ところが二〇〇二年の改定で報酬が引き下げられ、訪問歯科診療は激減した。南区でも十五施設まで減ったため、和田院長の往診は逆に週一日から三日に増えた。それでも続けるのは「訪問しか対応できない患者がいる」から。高齢化社会では訪問歯科診療の重要性が増すと訴える。「口腔ケアはトータルの医療費抑制にもつながる」
 厚生労働省によると、全国の歯科診療所は〇五年十月時点で約六万六千カ所。うち訪問歯科診療を手がけるのは約一万二千カ所。和田院長は「在宅で口腔ケアもしているのはその五%前後にすぎない」と分析する。
 和田院長には訪問歯科診療の依頼が絶えない。「対応可能な患者数も限りがある。担い手となる歯科医が増えてほしい」と願っている。
(横浜支局 岩本圭剛)
【図・写真】福祉施設や個人宅などを訪問し、患者を診察する(横浜市)
【図・写真】和田真澄院長
20080619 日本経済新聞 朝刊

 厚生労働省は十八日にまとめた報告書で、医師不足解消を進める政策を打ち出した。女性医師の活用や臨床研修制度の見直しで、安心して医療サービスが受けられる体制づくりを目指す。ただ特定の分野に医師が偏る状況を改善しないまま、医師数を増やせば医療費の無駄が拡大する恐れがある。医師数増は徹底した医療の効率化が前提になる。(1面参照)
 十八日開いた「安心と希望の医療確保ビジョン」会議で舛添要一厚労相は、「(報告書で)新しい医療体制の構築に向かって方向付けできると確信している」とあいさつ。勤務医の労働環境の改善や救急医療の体制を整備する考えを示した。
 政府は二〇〇七年度から一一年度の五年間で社会保障費の自然増加分を合計一・一兆円抑制する方針。しかし厚生労働省は医師不足対策をテコに事実上これを撤廃し、〇九年度予算で社会保障費の拡大を狙う。
地方で不足深刻
 医師数全体は徐々に増えている。医師は設備の整った都市部の大病院や、皮膚科開業医など特定の診療科に集中する一方で、地方の中堅病院や産科・小児科、救急部門で不足は深刻化するなど、偏りが目立つ。
 最近は高齢化による患者増や、医療の高度化・専門化が進み、偏在だけでなく、医師総数が不足しているとの声が強まっている。報告書では医師の偏りの是正に加えて、医師総数が不足していることを認め、養成数増を打ち出した。
 不足がちな産科や小児科の勤務医を増やすため、女性医師の積極活用を進める。女性医師は産科・小児科で主力を担うが、結婚や出産を機に辞めるケースが多い。短時間だけ働く正職員制度の導入や病院内の保育所の充実などを進める。助産師を増やし産科の医師と連携してケアできる体制も整える。
許可制の廃止も
 今は麻酔科医となるのには国の許可が必要だが許可制を廃止する方向で見直す。救急医療の体制整備に向け診療所の医師が夜間や休日も外来患者を受け入れるように支援する施策も検討する。
 若い医師が都市部や特定の病院に集中する一因となった臨床研修制度も見直す。今は研修医が研修先の病院を選べる仕組み。医師不足の診療科や病院に積極的に医師を派遣した医療機関に手厚く補助金を配分する仕組みも導入する。狭い専門分野だけでなく、一人で幅広い診察ができる「総合医」の育成も支援する。
 医師がより多くの患者を診断できるようにする案も盛り込んだ。現在は省令で「病院の外来患者四十人につき医師を最低一人置く」との規制があるが、撤廃を含めて検討する。病院の実態に見合った医師数確保ができるようにする。
 大学の医学部定員を増やしても、現場の医師数が増えるのには十年程度の期間がかかる。割安な後発医薬品の普及促進や診療報酬のオンライン請求による医療の効率化などは緒に就いたばかり。社会保障費を抑制する努力を怠ったままで医師不足対策を優先させれば、財政規律を損ない次世代にツケを回すことになりかねない。
 医師不足の解消とともに、医療の無駄を減らす効率化を一段と進める必要がある。
【図・写真】「安心と希望の医療確保ビジョン」会議であいさつする舛添厚労相(右)(18日、厚労省)