20080731 日本経済新聞 朝刊

 日本生命保険は十月から、契約者が死亡した場合に保険金を受け取る死亡保険に付ける医療特約を大幅に簡素化する方針を固めた。現在は入院、通院、短期入院など保障内容に応じて六種類に分かれている特約を一つにまとめる。保険内容を単純にし、契約者にわかりやすくする。保険金の不払い防止につなげる狙いもある。新規加入者だけでなく、約千二百万人の既契約者も新特約に切り替えられる。
 新しい医療特約は六つの保障を一つのパッケージにする。現在、一―四日間の入院は「短期入院特約」をつけなければ保障しないが、新特約ではすべての加入者を入院一日目から保障する。通院特約の代わりに、入院した契約者には一定額の通院関連の給付金を払う。手術給付金は約款で定めた八十八種類の手術にしか払わないのを改め、公的医療保険が対象とする千種類以上に広げる。
 新特約の保険料は今後詰めるが、六つの特約すべてに加入している人はほぼ変わらないとみられる。一方、入院特約などに限って契約している人が新特約に切り替えようとすると、保険料が上がる可能性が大きい。
 金融庁は七月、保険金の不払い問題を受けて、日生など大手十社に業務改善命令を発動。各社は八月一日に再発防止策を公表する予定で、日生の特約見直しはその柱となる。特約が複雑になり給付の対象になるかどうか調べきれなかったことが、保険金の不払いにつながっていた。







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20080731 日本経済新聞 地方経済面

 足利銀行の藤沢智頭取は日本経済新聞のインタビューに応じた。同行を傘下に置く持ち株会社、足利ホールディングスの二〇一〇年上場を目指し、収益源を多様化する必要性を強調。投資信託や生損保商品などの販売を拡充するとともに、受け皿となった野村グループの企業再生ノウハウを生かし、M&A(合併・買収)仲介などの手数料収入を伸ばす考えを明らかにした。来年二月ごろに中期経営計画を公表する意向も示した。
 藤沢氏は栃木県内を中心とする営業地域の現状を「原油高などの影響を受けて資金ニーズが落ち込んでいる。経済環境は大きく変わってきた」と指摘。自己資本比率が六%台半ばと、全国の地銀の中で最低レベルであることを踏まえ「行員一人ひとりが死にものぐるいでやらないと他行に追いつけない」と奮起を促した。
 地域密着型金融を推進するなど、民営化前の経営路線の継承を改めて打ち出したうえで「収益源の多様化が一番大きな課題だ」と述べた。具体的には投信をはじめとする金融商品の販売に伴う手数料収入のほか、企業再生ビジネスの強化などを挙げた。
 営業戦略に関しては北関東に埼玉を加えた既存の営業地域をベースとする考えを改めて表明。特に「群馬や埼玉はマーケットとして有望だ。店舗網全体を見て最適配置になっているかどうかを検討している」と語り、新拠点の設立も含め、両地域での営業を強化する考えも示した。
 北関東地域の地銀再編をめぐっては「(地方銀行協会に加盟する)六十四行が未来永劫(えいごう)あり続けることはないだろう」と指摘。「どうなるかを考えるのは頭取として当たり前の話だ」と述べた。
 県内経済界などからシンクタンクの創設を求める声が出ていることに関しては「必要性は痛感している。県経済をダイナミックに分析することがないのは地元にとって大きな痛手だ」と述べた。
 足利銀は破綻前に栃木県などと組んでシンクタンク「とちぎ総合研究機構」を立ち上げた経緯があるが「過去に戻るわけではない。できれば銀行主体でやりたい」と語り、野村総合研究所との連携を模索しながら、同行主体のシンクタンク設立を検討する考えを明らかにした。
 足利HDへの地元出資に関しては「(大株主である)野村グループの仕事だ」と述べるにとどめた。
【図・写真】足利銀行の藤沢智頭取はインタビューでシンクタンク設立を示唆した
がん保険の待ち期間ゼロ。








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20080730 日本経済新聞 朝刊

 世界的なインフレと景気の減速という厳しい経済環境のなかで来年度の予算編成が始まる。歳出全体を抑えながらも、その中身を大胆に組み替えて時代の要請にこたえる予算にしてほしいものだ。
 二十九日に閣議了解した来年度予算の概算要求基準は、政策に充てる一般歳出を今年度予算比一・一%増にとどめる一方、「重要課題推進枠」三千三百億円を設け、経済財政諮問会議の審査も経て、成長力の強化や医師不足・環境対策などに充てるのが特徴。昨年のこうした枠は五百億円だった。予算をあまり膨らませず重要分野へ厚めに配分する手法として一歩前進といえる。
 この推進枠の財源を得るため、裁量的な経費の削減幅を二%大きくする。公共事業は五%減、防衛費は三%減となる。農業土木や地方の道路整備などの公共事業には不要不急のものも多い。五%といわず極力、大幅に削減してもらいたい。
 社会保障は八千七百億円程度増えるところを二千二百億円削減する。医療や介護は大規模な事業だから、病人や高齢者にあまり負担をかけず「事業の効率化」を通じて支出を減らす道はまだあるはずである。
 来年度は各種特別会計予算も注目される。三十一あった特会は二〇一一年度までに十七に統合・整理する方向だが、道路整備特会をはじめ、無駄な歳出は多い。政府は「行政支出総点検会議」で特会の歳出の是非を吟味するという。財務省や国会も厳しく点検すべきだ。
 特会のほか独立行政法人、民営化法人などに、過剰な準備金や、株式を売った際の売却益といった「埋蔵金」が数十兆円の単位で眠っているという声がある。経済財政諮問会議は専門家による会議で、それらを洗い出す方針だ。財政資金として使えるものがあるなら増税の前にはき出させるのは当然だ。その使い道としては国債減額に充てるのが筋だが、一部を災害復旧など一回限りの支出に使うのは許されよう。
 四年前の年金改革の際、基礎年金の国庫負担割合を〇九年度以降、安定的な財源を得て三分の一から半分に引き上げると決めた。これは無視できないが、大事なのは年金制度の抜本的な見直しだ。年金改革案を固め、必要な消費税などの増税案も決めれば、その実施までのつなぎとして、たばこ税増税などで国庫負担拡大分を賄う方法も考えられる。
 来年度は本格的な増税や社会保障制度の改革を控えた大事な年。負担増への理解を得るためにも早く、筋肉質の予算にしておきたい。







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20080730 日本経済新聞 朝刊

 政府が「社会保障の機能強化のための緊急対策」を発表した。副題に「五つの安心プラン」とあるように、(1)高齢者の安心(2)医療の安心(3)子育ての安心(4)非正規従業員の安心――に、厚生労働行政の信頼回復を加えた計五分野について、二〇〇九年度の国の予算などで実現をめざす施策を百五十以上、列挙している。
 社会保障制度への国民の信頼度はかつてないほどに下がった。それは政府・与党への不信に直結している。
 昨年九月に安倍政権が退陣したのは、厚生年金などの記録漏れ問題を収束できなかった影響が大きい。ことし春以降に福田政権の支持率が急低下したのも、四月に始めた高齢者医療制度の不備が高齢層の不信感を増幅させたためだ。
 その苦境から抜け出したいとの思いで福田康夫首相が六月に発案し、首相官邸(内閣官房)が厚労省など関係各省の尻をたたいてつくったのがこのプランである。残念ながら、国民や企業経営者に渦巻いている制度や政府への不信をぬぐい去るには力不足だ。理由は三つある。
 第一に、列挙した項目のほとんどがすでに政府がまとめた方針や計画をなぞっている。社会保障国民会議の中間報告、安心と希望の医療確保ビジョン、ワークライフバランス憲章など、公表ずみの政府文書の内容がこのプランの柱建てに沿って整理されたともいえる。
 第二に、財源がはっきりしない。官邸の担当者は「必要になる予算の総額はまったくわからない。各省が要求する過程で明らかになる」という。しかし、たとえばさらっと触れた「基礎年金の最低保障機能の強化」を実現するには、増税や制度の根本からの見直しが避けられないだろう。その道筋がわからないままでは、不信の解消はおぼつかない。
 第三に、対策の目玉である厚労省の信頼回復の具体策づくりに、同省自らが深く関与しようとしている。有識者を招いて策を詰めるというが、そのなかには識者の名に値するかどうか疑問符を付けざるを得ない人が含まれていないか。議事を取り仕切るのも同省である。まな板の上のコイが包丁を握るの図ではないか。厚労省改革はやはり厚労省の外で推し進めるべし。それが筋である。





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20080730 日本経済新聞 朝刊

 予算のばらまき、負担先送り、規制強化――。政府・与党で小泉内閣以来の改革路線を見直す動きが相次いでいる。近づく衆院解散・総選挙の足音を意識し、民主党に対する色彩が強い。二〇〇九年度予算の概算要求基準では歳出削減路線をかろうじて守った福田内閣だが、足元にはほころびが広がり始めている。
 政府・与党が二十九日決定した追加原油高対策は、漁業者の燃料費増加分の九割を国が補てんする内容。漁業者五人以上がグループで省エネに取り組む条件を付けたため、「単純な補てんではない」(町村信孝官房長官)と力説する。しかし水産業界団体の幹部は「正直言ってここまでやってもらえるとは思ってもみなかった」と驚いた。
■参院選の悪夢
 新規の財源は使わず約八十億円の基金を取り崩す方針だ。だが、自民党水産族議員は「早く基金を使い切った方が補正予算を要求しやすくなる」(浜田靖一水産総合調査会長)、「八十億円と書いて『無制限』と読むんだ」(青木幹雄前参院議員会長)などと気炎を上げる。町村官房長官も「明らかに予算が足りないと判明すれば迅速・柔軟に対応する」と補正予算の早期編成に含みを残した。
 与党を駆り立てるのは、一年あまり先に迫る衆院議員の任期切れと、次期衆院選に向けた民主党の動きだ。
 民主党は六月に所要額一千億円の漁業向け燃油高対策を策定済み。筒井信隆「次の内閣」農相は「八十億円では極めて不十分だ」と述べ、次期衆院選の政権公約(マニフェスト)で、昨年の参院選で掲げた農業向け戸別所得補償制度を漁業や林業、畜産業に拡大する考えを強調した。
 こうした民主党の動きは、参院選で「地方切り捨て」批判を浴び、地方の選挙区で惨敗した記憶を呼び起こす。
 今春の衆院山口2区補欠選挙で与党が敗北した原因とされる後期高齢者医療制度でも、自民、公明両党は〇九年四月に実施予定だった七十―七十四歳の高齢者医療費の窓口負担引き上げの凍結を決めた。公約だった〇九年度からの基礎年金の国庫負担割合の引き上げも先送りの動きが出ている。
■転換の吉凶は
 政府内でもタクシー参入規制強化や日雇いなど短期派遣の原則禁止といった規制強化策が相次ぐ。山崎拓元幹事長は「小泉時代は終わった。単に構造改革を唱えるだけでは日本が持たない」と路線転換を訴えた。
 改革路線の修正はかえって衆院選にマイナスになるとの声も少なくない。自民党議員の一人は「改革姿勢を強く打ち出さないと、民主党からは守旧派とレッテルを張られる」と警戒。小泉政権で構造改革をけん引した中川秀直元幹事長も「政策転換を唱えようとする人がいるとすれば残念だ」と自身のホームページで強調する。
 「今までのやり方を変えなければならないと、一生懸命やっている最中だ」。首相は二十九日夜、参院選敗北からの一年間を記者団にこう総括したが、党内の若手からは「改革路線への首相のあいまいな姿勢が混乱を招いている」との声も上がっている。
【図・写真】改革路線にほころびが広がり始めた(29日、臨時閣議に臨む福田首相)








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