20080730 日本経済新聞 朝刊
世界的なインフレと景気の減速という厳しい経済環境のなかで来年度の予算編成が始まる。歳出全体を抑えながらも、その中身を大胆に組み替えて時代の要請にこたえる予算にしてほしいものだ。
二十九日に閣議了解した来年度予算の概算要求基準は、政策に充てる一般歳出を今年度予算比一・一%増にとどめる一方、「重要課題推進枠」三千三百億円を設け、経済財政諮問会議の審査も経て、成長力の強化や医師不足・環境対策などに充てるのが特徴。昨年のこうした枠は五百億円だった。予算をあまり膨らませず重要分野へ厚めに配分する手法として一歩前進といえる。
この推進枠の財源を得るため、裁量的な経費の削減幅を二%大きくする。公共事業は五%減、防衛費は三%減となる。農業土木や地方の道路整備などの公共事業には不要不急のものも多い。五%といわず極力、大幅に削減してもらいたい。
社会保障は八千七百億円程度増えるところを二千二百億円削減する。医療や介護は大規模な事業だから、病人や高齢者にあまり負担をかけず「事業の効率化」を通じて支出を減らす道はまだあるはずである。
来年度は各種特別会計予算も注目される。三十一あった特会は二〇一一年度までに十七に統合・整理する方向だが、道路整備特会をはじめ、無駄な歳出は多い。政府は「行政支出総点検会議」で特会の歳出の是非を吟味するという。財務省や国会も厳しく点検すべきだ。
特会のほか独立行政法人、民営化法人などに、過剰な準備金や、株式を売った際の売却益といった「埋蔵金」が数十兆円の単位で眠っているという声がある。経済財政諮問会議は専門家による会議で、それらを洗い出す方針だ。財政資金として使えるものがあるなら増税の前にはき出させるのは当然だ。その使い道としては国債減額に充てるのが筋だが、一部を災害復旧など一回限りの支出に使うのは許されよう。
四年前の年金改革の際、基礎年金の国庫負担割合を〇九年度以降、安定的な財源を得て三分の一から半分に引き上げると決めた。これは無視できないが、大事なのは年金制度の抜本的な見直しだ。年金改革案を固め、必要な消費税などの増税案も決めれば、その実施までのつなぎとして、たばこ税増税などで国庫負担拡大分を賄う方法も考えられる。
来年度は本格的な増税や社会保障制度の改革を控えた大事な年。負担増への理解を得るためにも早く、筋肉質の予算にしておきたい。
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