「氷上の阿修羅」中沢新一氏のコラムより/美術館ナビ③ | 羽生結弦さんの見つめる先を見ていたい

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羽生結弦選手を敬愛しています。羽生さんを応援する素敵ブログ様方を日々の心の糧にしている、ソチ落ち主婦のブログです。(横浜在住)

五輪閉幕からほぼ1ヶ月です。
3月7日発売の『週間現代』に魅力的なコラムが掲載されました。
筆者は宗教歴史学者にして大学教授でいらっしゃる中沢新一氏です。
羽生結弦を「阿修羅(あしゅら)」になぞらえ、北京五輪の背景に切り込んだ秀逸なコラムであると、Twitter等でも大評判でした。

今はもう、羽生くんの目は次のステージに向けられているはずで、私自身、北京五輪は思い出すのも切ないのですが、このコラムだけは自分への覚書も兼ねて、記事に残したくなった次第です。
掲載雑誌が次の号に切り替わりとなったこのタイミングにて、一部抜粋しつつ、ご紹介致します。


【今日のミトロジー 第43回】

〜氷上の阿修羅〜

著作:中沢新一氏

ーー私は羽生結弦という不世出の天才スケーターのことを考えている。

彼は4回転アクセルに挑み続ける。

まさに神話の阿修羅ではないか。ーー

三面六臂の阿修羅像(興福寺所蔵)


「神々と阿修羅。

すんなりと長く伸びた手足。ほっそりとした体つきは子鹿を思わせ、優雅な身のこなしからは天上の音楽が聞こえてくる。

少年のようなあるいは少女のようなその顔立ちは、憂いを含んで、愛しいほどに美しい。

しかし、阿修羅の内心は決して穏やかではない。それは彼が完全であることを求めているからである。


だが彼は既に気づいてしまっている。

完全に実現しようとしている彼の前に立ち塞がろうとしているものがあることを。

かくして阿修羅は激しく波立つ内心を抱えながら、そのライバルに戦いを挑んでいくことになる。
阿修羅のライバルのことをインド神話は天上の神々として描いている。

まるで余裕を楽しんでいるかのような自信たっぷりの神々の様子を見て、阿修羅は激しい感情に駆られて神々に戦いを挑んでいく。

戦いはほとんど互角であるが、その戦いはいつまでも続き、阿修羅は傷つき次第に衰えていく。」



「このような阿修羅の姿に日本人は深い共感を覚えてきた。

阿修羅は限りなく神々に近い半神だが、神ではない。
 神々は彼らだけが自由に操作することができる『国際ルール』や『最新技術』を用いて世界に君臨しそこを支配し続けてきた。

日本人は近代に多くの優れた達成を成し遂げてきたが、技術や経済の分野では現代の神々である西洋技術文明を凌ぐことができないでいる。

そこで日本人はどうしても自分たちを阿修羅と考えることになり、あの阿修羅像を見るたびに、この半神の抱える苦悩や悲しみを認めて、深い共感を覚えてしまうのである。」

「私は羽生結弦という不世出の天才スケーターのことを考えている。

その美しい容姿や類まれなパフォーマンスが興福寺の阿修羅像を連想させるからというだけではない。

今回の北京冬季五輪があからさまに示した現代スポーツの抱える深刻な諸矛盾が、羽生結弦のスケーターとしての人生に及ぼした甚だ大きな影響の意味を考えるとき、私は阿修羅のミトロジー(神話)に思いを巡らせずにはおられない。

羽生結弦は、この技術性と芸術性の双方の面で突出した才能を発揮してきた。

おそらくこんなスケーターは、日本にも世界にもこれまで出現したことがない。」


「ところがここから問題が発生する。

ジャンプと回転を基本とする技術面に関しては、世界基準に従って厳密に評価することができる。高い跳躍力も回転力もはっきり数値で評価することができる。

しかし、芸術面については評価のための客観的基準というものがもともと無い。

私たちには、羽生結弦のスケートには、日本人の身体から生み出される独特の美を見事に表現したものがあることが一目瞭然であるが、そのことを数値として評価する基準などというものは存在しないのである。」


「そのことが技術によって世界に君臨する神々に、危機感を与えたのであろうか。神々は評価のために国際ルールの変更を行った。

これによって羽生結弦のようなタイプのスケーターは技術面で絶対的な優位を見せつけることができなければ、どんなに魅力的な芸術性の高い演技を行ったとしても、勝利者にはなれなくなった。

神々はこうやって阿修羅の挑戦を退けたのである。」


「そうなると羽生結弦に残されるのは、限りなく不可能に近いといわれる4回転アクセルを成功させることによって、技術面で突きつけられた壁を突破するしかなくなってしまう。

こういう状況を全て分かった上で、彼は4回転アクセルに挑み続ける。

まさに神話の阿修羅ではないか。」


(中略)

「私は、こうした現状を状況を作り出している世界の技術的構造がいつの日にか反転して、自由になった阿修羅が演じる奇跡のような美しい氷上のパフォーマンスを観られる日が来ることを心から望んでいる」

(週間現代より)


コラムの引用は以上です。


YouTubeでも話題になりました。

↓動画主さま、感謝してお借りします🙇‍♀️



フィギュア関係者でない方から、このような踏み込んだご考察が発信されたことに驚きました。心から感謝申し上げますm(_ _)m

ですが、何とも切ない。何ともやりきれない。


文中の神々とは西洋的世界、もう、具体的にISU(国際スケート連盟)と言って良いと思います。
中沢氏は、羽生結弦選手のこの数年間の孤軍奮闘ぶりを阿修羅王に擬えて論じています。そして、あの北京で起きた事をほぼ理解していて「深刻な諸矛盾」という言葉で暗示しています。

「不世出の天才スケーター」であり芸術面・技術面ともに抜きん出ていながら、その卓越性故に、ISU(神々)の奸計によって評価を下げられ続けた…そんな羽生選手の苦境を、「阿修羅」に擬えることで見事に言い当てているように感じます。

「神々」が実際にどんな卑劣な手段をとったのか、「美しき4A」様が、ご紹介してくださっています。

↓美しき4A様、感謝してお借りします🙇‍♀️


「…誰かのトップ独走を防ぐのは簡単だ。審判員がその選手の得点を下げ、他選手を上げれば良い。」プンプンむかっむかっむかっ



「これはもはやベストな選手が勝つ競技ではなく、ジャッジに気に入られた者が褒美をもらえるショーなのだから」

歯に絹着せぬ論調ながら、その内容には頷かされるばかりです。

↓美しき4A様、感謝してお借りします🙇‍♀️


2015-2016シーズンに羽生くんが総合で300点超えを果たして以来、ISUはよってたかって彼の点数を抑えようと躍起になってきました。中沢氏のご指摘はPCS(芸術点)だけでしたが、実際はPCS以上にTES(技術点)も重箱の隅を突くようにして減点しまくったものです。


羽生結弦の卓越性とは、質の高いジャンプのみならず、クロスオーバー(漕ぐ動作)をほとんど使わない極上のスケーティング技術にも現れています。

↓AMY(エイミー)様、感謝してお借りします🙇‍♀️

五輪連覇の王者でありながら、常に向上心を持って修練を重ね、正しいジャンプ&スケーティング技術を磨き続けた彼の評価点が下がり続けるなんて本来ならあり得ない筈なのです。 

にも関わらず、ISUは執拗に"イジメ"を継続したのです。そして日本スケート連盟も(世代交代のお題目の下に)その悪行の尻馬に乗りましたプンプンむかっ


しかし、その不正採点の事実を、ISU副会長ラケルニク氏🇷🇺が悪びれもせずに堂々とインタビューで公言する…この厚顔無恥さは救いようがありません‼️プンプン

思えばこの6年間は、羽生選手を下げる一方で、推したい選手達の点は贔屓三昧に上げ続ける…不条理の極み、まさに「神々」のやりたい放題の6年でした。


長年こんな苦境にありながら、それでも最後まで自分を貫き通し「誇り」を守った羽生くんを、私は心から尊敬しています。🙏



美しい4Aでした恋の矢





↓ゆづ★マミ様、感謝してお借りします🙇‍♀️


2018年平昌五輪当時の記者会見で宣言した「4A挑戦」。

ISUは、すかさず4Aの基礎点を15から12.5に下げました。

↓sakura様、感謝してお借りします🙇‍♀️


でも彼は少しもブレることなく修練を重ね、遂に4年後の北京で、4Aを組み込み音楽にも溶け込んだ「理想のプログラム」を滑り切ったのです。


もし、世界にコロナ禍が無く、あのままずっとカナダで練習できていたらと、私も思うことはあります。でも、きっとそれらの紆余曲折も含めた全てが「現代の阿修羅」たる羽生結弦の物語です。

そしてまだ未来は誰にも分からない。


中沢氏のような一般の方さえ、フィギュアスケート界の闇に気づき始めていらっしゃるのです。

羽生くんのあまりの純粋さに、対極的な"闇"が隠しようもなく炙り出されて来ているのかもしれません。


ともあれ、コツコツと進んだ先に、来るべき未来は開けます。  


きっと今頃はもう、羽生結弦くんは未来に向かって新たな歩みを始めていますね。


ただ私達だけが彼が歩んだ北京までの苦難の日々に思い馳せ、何度も愛おしく抱きしめるようにあれこれと論じているようにも感じます。



最後の中沢氏の言葉が印象的です。


「…こうした現状を状況を作り出している世界の技術的構造がいつの日にか反転して、

自由になった阿修羅が演じる奇跡のような美しい氷上のパフォーマンスを観られる日が来ることを心から望んでいる」


 

私も心から願ってやみません。🙏




私事ですが、

その昔、萩尾望都先生の漫画『百億の昼千億の夜』(原作:光瀬龍)のヒロイン(!)として大好きだった「|阿修羅王」。45年の時を経て、今またその名に思いを馳せることになろうとは、何とも感慨深いものがあります。



 

「阿修羅像」に関するNHK番組(動画)です。


過去記事です。「羽生結弦とISUの戦いの記録」の一端になれば、と綴ったものです↓


更に余談です。
彼は10代の頃、すでに「フリルを着た阿修羅」の異名を頂戴しています。

↓ぴーちゃん様、感謝してお借りします🙇‍♀️


確かに羽生くんは「阿修羅」に似ていると私も思うけれど、(その阿修羅像も3つの顔を持つように)、修羅の面もまた彼の半分ほどであり、例えば↓の仏像のような慈しみ深い面と、驚くほど可愛らしい人間味深い面と、色々全て相まってこの上なく魅力的な「羽生結弦」を形作っている。だからこそ、北京五輪であれほどまでに人々の心を魅了し得たのだと思います照れ

↓ぽんすけ様、感謝してお借りします🙇‍♀️




美術館ナビから新着情報です。





今日も羽生くんを全力応援!ᕦ(ò_óˇ)ᕤ


羽生くんの怪我が早く良くなりますように!

羽生くんが笑ってくださっていますように!

羽生くんの幸せを心から願い、祈ります🙏



画像やTwitterや記事や動画は感謝してお借りしました。


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