カナダ初釣行はパンプキンシード1尾というボウズ同然のほろ苦いデビューとなったが、ちょうどその頃、私は仕事の関係でカナダ内水面センターという施設を訪れる機会があった。このセンターは五大湖のひとつ、オンタリオ湖の西端に近い場所にあり、ちょうどセンターの前がハミルトンハーバーという内湾だった。

ハミルトンハーバーは湾の出口が非常に狭いため、ひとつの湖のような様相を呈していた。このハーバーに興味を持った私は、地図を広げて湾内のめぼしい釣りスポットを探した。そうしたところ湾の一番奥がチャネル (水路) のようになっており、しかも公園内にあるので釣りには好適のように見えた。

早速私は早春のある週末を利用してその場所の下見に出かけた。そして都合のいいことに、釣りをしている少年たちを見つけた。ちょっと遠くから眺めていると、その子たちはピンポン球よりも大きそうな紅白の玉ウキを使ってスピニングタックルで餌釣りをしていた。そしてすぐに何かをかけた。それは遠目でもナマズだとわかった。そして色の具合から、図鑑で予習していたブラウンブルヘッドだと思われた。思えばキッチナーに引っ越して以来、初めて見る実際に誰かが釣った魚であり、ここに来れば釣れる魚がいるんだとわかってうれしくなった。

早速次の週末に同じポイントにやってきた。タックルはホリデー白糸にウキ仕掛け。今回はコマウキではなく15 センチくらいのハエウキのような形のウキを使った。エサだが、キッチナーの釣具店でおもしろいものを見つけたので試しに買ってみた。それは蛍光色のドバミミズで、ニトロワームと呼ばれていた。蛍光剤を含む土の中で養殖されたものらしい。カナディアンタイヤという量販店にはその養殖キットまで売られていた。

うまっこのブログ
ニトロワーム

このニトロワームを適当な長さに切って使い、チャネル内に繁茂しているカナダモの藻穴に送り込んだ。ニトロワームの効果かどうかはわからないが、この日はブラウンブルヘッドの爆釣になり、金網製で内蓋のあるビクが満杯になった。

うまっこのブログ
初めて釣ったブラウンブルヘッド

うまっこのブログ


ブルヘッドの仲間はカナダには3種類いて、ブラウンブルヘッドのほかにブラックブルヘッドイエローブルヘッドがいる。住んでいたオンタリオ州南部ではブラウンブルヘッドが最もよく釣れる種類だった。ブルヘッドとは牛のような頭という意味だろうが、英語圏の人はこのブルという言葉を生物に使うのが好きなようである。ブルフロッグ (ウシガエル) しかり、ブルトラウトしかり。

ブルヘッドの仲間はナマズの一種だが、日本のナマズとは違い、上顎の方が下顎よりも前に出ている。北米のナマズ類はフラットヘッドキャットフィッシュを除き全てこのパターンだ。ブラウンブルヘッドはちなみに私が初めて釣った上顎の突き出たナマズということになる。最大全長は 50 センチに達するそうだが、グランドリバーの河口でこれに近いものを釣って驚いたことがある。

うまっこのブログ
グランドリバーの支流で 2005 年5月に釣ったブラウンブルヘッド


2005年8月にオンタリオ州で釣った小さな個体


2005年7月にオンタリオ州で釣れたさらに小さな個体。その黒さから、本物を釣るまではずっとブラックブルヘッドだと思い込んでいた。


2012 年6月にニューブランズウィック州で釣ったブラウンブルヘッド

うまっこのブログ
2012 年6月にニューブランズウィック州で釣ったブラウンブルヘッド

うまっこのブログ
2012 年6月にオンタリオ州で釣ったブラウンブルヘッド


ブラウンブルヘッドの俯瞰


ブラウンブルヘッドのハビタット。オンタリオ州南東部。


上の池で釣れたブラウンブルヘッド



2016年10月1日付けで、日本の環境省は本種を特定外来生物に指定したため、日本国内への輸入が原則禁止となっている。また、日本国内で捕獲した場合の生きたままの移動も禁止となっているが、国立環境研究所の侵入生物データベースによると、2020年8月現在、国内には未定着とのこと。