ブリティッシュコロンビア州に移ってマウンテンホワイトフィッシュカットスロートトラウトと釣り上げた私は、次のターゲットをブルトラウトに定めた。2006 年の3月中旬のことだった。この時期はサーモンの稚魚が川を下り始める頃で、これをブルトラウトが荒食いしているとFishing with Rodには書いてあった。

同じくサーモンの稚魚を荒食いしているカットスロートトラウトに、エコギアのグラスミノーのジグスピンが効果があることはすでに実証済みだったので、タックルに迷いはなかった。後はブルトラウトのいる所を探すだけだった。

そこで、フレイザーリバーの河口や、中流部の支流のサーモンの産卵場の下流などに計6回釣行したものの、全く気配すら見つけられなかった。

そして3月も下旬にさしかかった頃、7度目の挑戦をするために、フレイザーリバーパークにやって来た。公園西端の捨て石に入り、ライトスピニングタックルでグラスミノー SS クリアスモールシルバーグリッターのジグスピンを遠投してはロッドを立てて表層をただ引きしながら徐々に湾の出口の方へ移動した。期待に反してヒットなし。

そして湾の出口近くに来た時、試しに底までジグスピンを沈めてみた。そしてロッドを少しあおってルアーを底から離してリトリーブを始めた途端、グンとロッドに重み。反射的にアワセる。根がかりとは違い、ロッドの動きに合わせてかかっているものも動いた。そしてゆっくりと右へ動き出したのでようやく魚だと確信できた。まるでナマズのようだ。ただ重く、ゆらゆらと泳いでいる感じだった。

そのままだんだんと斜めに岸の方へ泳いで来たので、糸フケしないようにリーリングしながらプレッシャーをかけ続けた。そしてかなり水面近くまで来たとき、ついに反転して走り始めた。すごい力なのであわててドラグを緩めると、一気に 10 メートルくらい湾奥に向かってまるでジェット機のようなスピードで走って止まった。

そしてポンピングして寄せる。岸から3メートルほどの所でついに姿を現した。白いアメマスのような斑点が見えた。やった!ブルトラウトだ。そこからまた一気に沖に走る。4ポンドのラインが切れないことを祈りながらドラグの滑りを見つめるしかなかった。まるでスレのブラウントラウトのように何の抵抗もなく一気に走った。

そしてまたポンピングで寄せる。水面に上げたところで今度は何度か同じ場所で反転したが、どうやらようやく疲れてきたらしい。ランディングしやすい場所に数歩分慎重に移動し、魚が横たわった状態になったところで勝負に出てロッドをあおった。しめた、すんなり寄ってくる。ネットを出す。

が、ネットが小さい。初スチールヘッドの時の記憶が頭をよぎった。テーリングしようかと一瞬迷ったが、頭がきれいにネットに入ったのでそのまますくいあげた。やったーと思わず叫んでいた。

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初めて釣ったブルトラウト、56 センチ


初ブルトラウトの近影


サケ目サケ科イワナ属。トラウトという名前だがイワナの仲間である。カナダではアルバータ州とブリティッシュコロンビア州、それにユーコン準州の一部に分布している。最大全長 91 センチ。無脊椎動物および脊椎動物食性。降海型のものは餌を求めて淡水域と海水域を行ったり来たりする。海から淡水に入って来たものはシーラン (sea-run) と呼ばれ、銀化しているのが特徴である。河川に長くいるものは体色が濃く、斑点類もはっきりとしている。シーランの方が大型化する。

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ブリティッシュコロンビア州北部のピースリバーで釣ったブルトラウト。河川に長くいる個体と思われた。


ブリティッシュコロンビア州ではかつて、サケ資源保護の名の下にブルトラウトを駆除しようとした歴史があり、数が激減したが、現在ではキャッチ&リリースまたは尾数制限が功を奏して資源が回復して来ている。

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バンクーバー近郊の川で釣ったシーランブルトラウト。マラブーリーチパターンのフライ使用。


私はアメマスは釣ったことがないが、写真や映像で見る限り、斑紋以外は外観上ブルトラウトに大変似ていると思う。降海することや釣れやすさも似ている。ブルトラウトはイワナの仲間なので派手なファイトはしないが、大都市のすぐ近くの清流規模の川で、50 センチクラスのイワナ類とファイトできるのは貴重なことだと思う。



ブルトラウトの俯瞰


ブルトラウトの顔















2007年の3〜4月に、初ブルトラウトとは別のバンクーバー近郊の川でフライやワームで釣ったブルトラウトたち


ブルトラウト近影その2


2007年7月にジョージア海峡に注ぎ込むブリティッシュコロンビア州内のあるクリークの出口でスプーンにヒットした、海アメならぬ海ブルトラウト



ブルトラウトのハビタット