2006 年初頭にオンタリオ州からブリティッシュコロンビア州に引っ越したが、引っ越しする前からインターネットを使って、ある程度どんな魚がどこで釣れるかは調べていた。一番参考にしたのはFishing with Rodというサイトだった。この場合のロッドは竿という意味ではなく管理人の名前である。

下調べをして気付いたのは、オンタリオと比べて魚の種類がかなり少ないということだった。だがバンクーバーの別名がサーモンキャピタルであるように、サーモン類の宝庫でもあった。そのサーモンはすでに産卵を前年の秋に終えており、下見に行ったフレイザーリバーの支流でも骨だけしか見られなかった。

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そこで、この時期に釣れるものとして、マウンテンホワイトフィッシュとカットスロートトラウト、それにブルトラウトを狙うことにした。

引っ越して二週間後の1月の中旬に、私はフレイザーリバーの支流にやって来た。ここに来るのは一度下見に来て以来だった。ホリデー白糸にコマウキ仕掛け、ハリはヘラ改良スレの3号ハリス 0.6 号という仕掛けで、引っ越しで持って来たブラウントラウトの保存済み卵巣卵を数個、ローバッグにしたものをエサにした。

本流ではアタリがなかったので、細流の方へ移り、数投したところでコマウキに何かがライズして来た。20 センチ台の魚だったが、ブリティッシュコロンビア州へ来て初めて認めた魚影だった。魚がいることがわかって大いに勇気づけられた。それにしても1月にトップに出るとは、さすがブリティッシュコロンビア州といった感じだった。だがこの日はそれだけだった。

1週間後、再び同じ支流にやって来た。今回は前回チェックしなかった反対側の岸で釣ることにした。前回はブラウントラウトのローバッグでは釣れなかったので、この日は保存済みの赤く染めたイクラを使ってみた。アーミー&ネイビーという、ちょっと地方のゼネラルストア的な、庶民向けのあか抜けない老舗のディスカウントストアで買った D&G スーパーサーモンエッグというもので、1個を直接ハリに刺して使った。ヘラスレバリのおかげで卵が破れることはなかった。

ウェーディングして中州に渡り、 流心脇のたるみの上流へ投入。自分の前を通り過ぎ、ゆっくり流れていたウキが水中へゆっくり沈んでいった。アタリか? アワセてみる。グン、という手応え。その直後、グン、グンと重い感触があり、魚がかかっていることがわかった。やった! 一発だ!

ブリティッシュコロンビアへ来て3週間余り、初めて感じる魚の手応え。いい引きだ。ホリデー白糸が限界まで絞られている。なかなか姿を見せない。上へ下へと走る。伸されないように懸命に竿を立てる。やがてようやく疲れてきて水面に上がってきた。細長い。マウンテンホワイトフィッシュだ!

水面で何度か空気を吸わせるとおとなしくなり、そのままするすると寄せてランディングした。やった!と思わず叫んだ。

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初めて釣ったマウンテンホワイトフィッシュ


全長 33 センチ。思っていた以上に体は丸く、レッドホースのような感じだった。口は非常に小さいおちょぼ口だ。シスコのような感じを予想していたが、実際はレイクホワイトフィッシュにより近い感じがした。ニオイもほとんどなく、シスコとは違った。

サケ目コレゴヌス科 Prosopium 属。最大全長 57 センチ。アルバータ州、ブリティッシュコロンビア州に分布の他、ユーコン準州とノースウエスタン準州の一部に分布。冷水の流れる中小河川のザラ瀬、トロ場やプール、および湖の岸よりの岩場などに棲む。 無脊椎動物や魚卵、小魚などを食べる。食物を求めて季節移動するが、毎年ほぼ同じパターンなので、見つけるのは難しくはない。食味は上等。白身フライに向いている。

マウンテンホワイトフィッシュは現在、ブリティッシュコロンビア州における私の最も好きな魚になっている。理由は、釣り期が長いこと、口が非常に小さいのでエサやフライ、ルアーに細かい工夫が要求されること、引きが強く、しかも最後の最後まで粘ってくれること、そしてその割には人気がないので釣り場が空いていることである。

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マウンテンホワイトフィッシュの口


この初マウンテンホワイトフィッシュを釣った支流では、私はサーモンシーズンが終わって静かになる 12 月中旬から5月にかけて本種を釣っている。サーモンの卵が孵化するまではサーモンエッグのフカセ釣りで、孵化した後はマルキューエコギアグラスミノーの SS サイズをスーパーウルトラライトタックルで使って釣っている。そして8月から9月は、内陸部のサーモンが遡上しない川でニンフを使ったフライフィッシングで攻めている。ニンフはストーンフライで、14 番を使えば中型から大型まで釣れる。口が小さいだけでなく弱いので、流れの強い中でヘッドシェイクされるとよくバレるが、それもまたスリルとなって楽しい。水面に出さないようにファイトするのが無事に取り込むコツだ。

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2006 年9月に内陸部の川で釣った自己最高マウンテンホワイトフィッシュ、49 センチ。ストーンフライニンフ使用。



マウンテンホワイトフィッシュの俯瞰



マウンテンホワイトフィッシュのハビタット。ブリティッシュコロンビア州内陸部。



マウンテンホワイトフィッシュの顔



ピノキオタイプと呼ばれる、吻が突き出た個体。2011年8月、ブリティッシュ・コロンビア州ピースリバーにて。


同じくピノキオタイプ。2006年9月、内陸部のリバーにて。


ノーマルタイプのマウンテンホワイトフィッシュ


パーマークがうっすら残る若い個体


スーパーウルトラライトスピニングタックルとグラスミノーSSのキャロライナリグの組み合わせで釣った良型のマウンテンホワイトフィッシュ。2008年2月、フレイザーリバー支流にて。


同じポイントで5年後に同じようにして釣った38センチの良型個体


パーマークの残る個体。2008年3月、フレイザーリバー支流にて。