キム・ジング氏インタビュー | クルミアルク研究室

クルミアルク研究室

沖縄を題材にした自作ラブコメ+メモ書き+映画エッセイをちょろちょろと

2月に書いた内容を目次をつけて再度UPしています。

2021.6.29. 本文中にリンクかなり追加しました。一部R15相応の内容あり、ご注意下さい。

 

小説に関連する記事を書かなくちゃならないので、別サイト連載小説「わたしの周りの人々」 略称「わたまわ」に登場した人物へのインタビュー記事を掲載することにしました。


クリックすると各意味段落へジャンプします。

 

目次
1.ジング氏の本音:アフリカで宣教師になることについて
2.サーコとの破局は折込み済みだった? R15
3.ジング氏、リャオについて語る

 

--- 作者は2024年12月20日、羽田空港から韓国行き飛行機搭乗前のトモ君をたずねてインタビューを行った。

 


(image: Photo by Jennifer Burk on Unsplash)

 

1.ジング氏の本音:アフリカで宣教師になることについて

 

――今どんな気分?

私はやっとスタートラインに立つことができました。神様に感謝します。まだ伝道未開拓な地域でキリストの愛を広める活動に全身全霊打ち込めるのだと思うと、わくわくします。それも、金銭的に稼がなくちゃいけないとか、ほかの仕事をしなくてはならないとか、全く考えずに過ごせるのが嬉しいです。
どの職種もそうかもしれませんが、神父、牧師や宣教師は特に経済的に成り立ちにくい仕事のように感じられます。日々の糧を神様からいただきながら、信徒のみなさんと意見を調整しながら、宣教活動は進められます。それはそれで必要な活動ですけど、日常への煩わしさがつきまとうもののように私には感じられました。

――サーコと暮らした5ヶ月、あるいはそれまで彼女と付き合っていた日々を振り返って感じることとかある?

人間として、一人の男としてとても充実した時間でした。サーコと恋愛できて幸せです。彼女は誠実でストレートで魅力的な女性です。沖縄で過ごした3年の内、2年は勉学と彼女との恋愛の時間でした。私にとって韓国でなく日本という外国で勉強し、そこで恋愛できたのは人生の中で大きなターニングポイントでした。
もし普通の男性として就職、結婚、生活をする人生だとしたら、両親のいうように韓国で過ごすだけでよかったんだろうと思います。ですが、私は韓国の中だけで生きたくはなかった。違う地域で勉学して、生活して、恋愛もしたかった。神様はそれを許してくれました。全部与えてくれました。感謝しかないです。

ですが、この生き方ってすごくわがままじゃないですか。自分を充実させることばかりで、彼女のことを考えてないんですから。いや、考えなくはないんですけど、将来設計はしてない。女性側が子供を産み育てることを念頭に人生設計を描いているとして、こちらは何も準備してなかった。少なくとも私は。それは素直に認めます。
サーコが勝手に期待して大阪へやってきて同棲を始めた、という言い方をしても世間は認めるでしょうし、無謀な始まり方をしたな、と自分でも思っています。それでも私は嬉しかったんです。

 

2.サーコとの破局は折込み済みだった? R15

 

――ちょっと待って。この話の流れだと、トモは自分のアクシデントがなくてもサーコとは遅かれ早かれ破局しただろうって考えている、そう捉えて良いのかな?

私が精神を患ったたことが要因だと彼女は考えているようですが、違います。私が身勝手だったんです。彼女と生活することが第一で、その先について私はどこか神様が展開してくれると期待していました。彼女の人生を請け負って切り開くという、当たり前の覚悟は私には足りませんでした。自分を満たすことで精一杯だったんです。だからすぐ暗礁に乗り上げた。経済的にはなんとかなっていましたが、生活の潤いというものはなくなっていきました。

心に傷を負っていたからという言い訳はできます。実際そうですし、今も私はその傷を抱えて生きています。彼女と生活すること、彼女の笑顔を間近でみること、そして一番自分にとってありがたかったのは、彼女を肉体的に感じることができたことです。スキンシップは自分にとって非常に重要なアイテムでした。軍隊生活が長かったせいか、飢えていたんですね。とくにセックスに(笑)。

――君は実にストレートに言うね。君たち二人のおかげでこっちはノンアダルト小説としてエントリーしそこねたわ(笑)。

ごめんなさい! 彼女、狂ってたって書いてますよね。

本当にそう! 自分が宣教師ってことをどこかに放っぽらかして狂ってました(笑)。

彼女を抱きしめている間は日頃の鬱憤も左耳の障害も忘れられるし、快感は半端ないし、中毒に近かった。そうそう、作者さんは書くかどうか迷ってたみたいですが、生理中のサーコを無理矢理押し倒した話。。

――あれ書くべきか何度も迷った。一歩間違えたら性暴力だよ。本気で参った。

はっきりさせましょう。間違いなくあれは性暴力。サーコは傷ついた。性暴力の規定は加害者側でなく被害者側にあります。後日もちろん謝りました。他に方法はなかったのかって聞かれますが、あの時はなかった。自分でも思いますよ、すごく身勝手。彼女のこと全然考えてない、配慮してない。

――おや、認めるんだ。びっくり。個人的にクリスチャンという人々にも性暴力が存在するのを見てきたから、トモもそうなっちゃうのかなと内心ヒヤヒヤしながら書いてた。でも、君は自分で気がついて止めたよね。

止められたのは神様が私にブレーキを掛けてくれたから。ただ、女性の声を軽んじる風潮が未だクリスチャンと自称する人々に根深く残っていることはとても残念なことです。そして、性被害やDVといった一連の犯罪がキリスト教を広めることへの阻害因子になるのを恐れ、覆い隠そうとする動きが一部の教会にあることを、私たちクリスチャンはきちんと懺悔しなくてはならないでしょう。世間はダブルスタンダードにはとても敏感ですからね。

――それはクリスチャンで在り続けることへのストレスもあるかな。当時のトモはストレスがすごかったからね。暴走老人事件もあったし。

現代社会を生きるなら誰だってストレスはありますよ。もし私がサーコと結婚して生活を続けるなら、生きる糧を与える必要があった。お金とか食料とかじゃなくて、彼女の能力をどう生かすか、彼女が輝く人生を手に入れるヒントをきちんとサジェスチョンできるか、そういったことが求められます。
サーコは貧困層出身といっていい(ameblo)ですよね。勉学して資格を取り就職する、という一連の過程を彼女は選択できなかった。高卒の資格のみです。ある職種につくためには訓練が必要ですが、私は彼女にその機会を与えてないんです。彼女が自分でバイトを見つけてお金を稼いでいます。彼女は自分と将来設計しようと頑張ってたんです。私、言われるまで全然気づかなかった。毎日を職場と家との行き帰りで忙殺されて、彼女と生活していく感覚が欠如しているんですよ。

そこがリャオと私の差です。リャオは彼女に車の免許を取らせた。彼が経済的に自立してて支援できる立場だったのは大きいでしょう。お弁当も作ってあげて、通信機能が充実したタブレットも貸してますよね(ameblo)。私も時折経済支援に乗ったクチですが、その部分を割り引いても、彼はちゃんとサーコにサジェスチョンしているんです。将来どうしたいか彼女に何度も尋ねています。彼女の方が、私と一緒になればなんとかなると楽観的に考えている部分はありますが、そのたびにリャオはサーコに警告していますよ。何か技能を身につけろ、と。彼が実務的な人間という側面からの発言でしょうが、その点は私には欠けていました。

もちろん、サーコが大阪で暗澹とした気持ちに陥ったのは、それだけではないですが。気候の差が一番顕著に見えました。秋口から彼女は寒さに震えて病院で点滴を受けた。まだ冬が来たわけでもないのに。私は韓国人なので寒さは慣れています。軍隊で冬山訓練もしてますからね。でも沖縄で生まれ育った彼女には11月の寒さでもかなり辛かったようです。クリスマス前に沖縄へ帰せたのはせめてもの慰めかもしれません。
彼女が身体だけでなく心のぬくもりを求めていたことを、今なら非常に理解できます。私は精神の苦しみを、日々の仕事の軋轢からの解放を彼女との生活とかセックスで解決していました。ですが、彼女の苦しみは放っています。彼女に向き合ってない。彼女は話し合う相手がいませんでした。彼女は私に遠慮しました。だからリャオと繋がろうとした。私はそれを責めることはできないです。むしろ、当然の帰結です。

――もう彼女に未練はない?

不思議なくらいないですね。全部とれちゃった。私は最終目的に向かえばいい、それだけ。

 

3.ジング氏、リャオについて語る

 

――ところでリャオのことだけど。彼について何か言いたいこととかあるかな。

2年前、彼がアセクシャルと聞いてかなりホッとした(ameblo)し、同時に、納得もしました。“あけみさん”はそれなりに魅力的な女性ですけど、私はそそられなかったので。

――サーコと比べちゃかわいそうだよ(笑)。

リャオは、あきおさんは、既に会社のトップ陣にいて人を使う側に立ってます。彼は社会的に家庭を持ち子供を育てることを期待されている人間です。ですから、アセクシャルであることは彼にとってブレーキになりますよね、こんな表現が正しいかどうか別として。だって彼は生まれながら性的欲求がない状態で育っているわけだし、他の状態を体験していないわけでしょう? スキンシップは求めるけどそれ以上はわからない、と彼は言ってますね(ameblo)。サーコが求めるものが彼には理解できない。そこをクリアしないと子供が授からない、それ以上に彼女とうまくやっていけないってことを心では理解しきれてなかった。

サーコがコップであるとして、そこにジュースを入れましょうと。リャオは水や炭酸水を注ぎます。あるいはアイスティーかもしれない。でもジュースじゃない。そこにやっと彼は気がついた。仕方がないです、だって、サーコと結婚して生活すること自体が彼にとって奇跡だから。私がサーコといたせいですけど。
今、彼は彼なりにジュースみたいなのを探していますね。百パーセント果汁は無理でしょうが、果実酢とかのアレンジで切り抜ける策を練っています。それだけでも彼にとっては大冒険のはずです。

彼が男であることに早く気づけて良かった。“あけみ”で生き続けることは可能でしょうが、生殖的にまず女性としては生きられないでしょ。料理が上手で生活力もそこそこあって、語学も堪能で、まあ結婚相手としてはいいかもしれません。でも彼女が、いわゆる普通の男性の結婚相手とうまくやっていけるかどうか。胸の内を割って話すという局面を作り出せるか。彼女はその方法を知らない。ジュースを求める男性に対して水しか汲んで来れないわけだから。

社会から、家族から、期待される男性像というのがありますよね。あきおさんは当初そこを拒否っていたのかな。日本人であるとかないとか、アイデンティティに関わる部分も曖昧さが残っています。子供を持つと、父親像を作り出す必要性もでてきます。
彼は自分に何が欠けているかよく分かっている。だから彼はリストアップして手を打ちます。具体的には、まずMBAを取りに行く。不妊治療を開始するかもしれない。彼は私と違ってサーコにきちんと向き合っていますから、言葉にして解決の糸口を探るでしょう。父親との関係も修復するだろうし。悪い方向へはいかないと思いますよ。

――そろそろ飛行機の時間だよね。今日は時間をとってくれてありがとう。あなたの宣教活動が良いものでありますように。

それは作者さんの胸先三寸だと思いますけど(笑)。では、行ってきます。
(キム・ジング氏インタビュー FIN) 

 

2021.6.29.追記 リャオ・ミンシェン氏 インタビュー~クロスドレッサーについて もあります。興味をお持ちの方はどうぞ。

第三部 &more 目次 ameblo

~~~

小説「わたまわ」を書いています。
当小説ナナメ読みのススメ(1) ×LGBT(あらすじなど) 当小説ナナメ読みのススメ(2) ×the Rolling Stones, and more/当小説ナナメ読みのススメ(3)×キジムナー(?)