リャオ・ミンシェン氏 インタビュー~クロスドレッサーについて | クルミアルク研究室

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こんにちはー。

以前こちらに「クロスドレッサー 心理」という検索をいただきましたので、「わたまわ」登場人物であるリャオ・ミンシェン(日本名:金城明生)を呼んで参りました(笑)

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(image:Photo by Priscilla Du Preez on Unsplash, trimmed and added some effects on this picture.)

 

――突然呼び立ててごめんね、こういう検索があったもので。

「確かに私はクロスドレッサーですけど、自分の事例がどこまで当てはまるのかよくわからないです。参考になればと思います。なるのかな?(笑)」

 

――では、目次の通りインタビュー進めます。よろしくお願いします。

 

目次
1.クロスドレッサーの定義づけ
2.トランスジェンダーとの違いはあるのか:リャオ君、女子的東京生活を語る
3.トランスジェンダーではないクロスドレッサーな理由
4.性暴力事件とクロスドレッサー PG12
5.家庭でクロスドレッサーしてる件

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1.クロスドレッサーの定義づけ

 

――そもそもクロスドレッサーって何だろう?

「私が聞いたのは“異性装”という言葉です。自分の生まれながらの性とは違う真逆の性の服を着こなしたり、そう振る舞ったりすること。トランスヴェスタイトとも称されます。10年前くらいまで病理学的な扱いを受けていました」

――つまりクロスドレッサーは異常というか倒錯的なものだと。

「そうそう。普通じゃない。規範から外れているから反社会的とも思われていました。自分にその点があるかと言われたら、あると言うでしょうね(笑)」

――そうなんだ(笑)

「検索者さんがどう言った意図でクロスドレッサーという語句を出してきたのかはちょっとよくわからないですが、おそらくトランスジェンダーなどとの関連を調べたかったのだと思われます。私も自分自身をそう思っていました。まさか全然違っているなんて想像もしなかったです」

 

2.トランスジェンダーとの違いはあるのか:リャオ君、女子的東京生活を語る

 

――私(作者)もリャオのことをトランスジェンダーと思って書き進めていたよ。第一部のだいぶ後あたり書いてる途中で、あれ、おかしいぞって。

「実際、大部分のクロスドレッサーはトランスジェンダーか、その可能性を秘めた方々だろうとは思います。俳優さんなど職業としてクロスドレッサー(女形など)を演じるとしても、役者さんご本人にトランスジェンダーあるいは近似的な役柄として演じるという意識はあるわけですから。私がトランスジェンダーとしての意識がなかったかと言われれば、当初は女性だと思い込んでいたわけで」

――最初は軽い気持ちで始めたんだよね。

「サーコが語っているように高校の文化祭で女装したのがきっかけです。周囲から大好評でした。自分でも、お、いけるんじゃないかって」

――東京で本格的に女装し始めた。

「最初の就職先で数名の上司にシカトされて精神的にちょっとおかしくなったのが、そもそもの始まりです。自分が中国人だということを嗅ぎつけたんですね。ストレスから背中に吹き出物がブワッと出て、Yシャツ着るのが嫌で嫌で仕方なかった。私、毛深かったので就職直後から男性向け脱毛サロンには通っていて、だいぶ脱毛は進めていたんですよ」

――君は広東人だけど、もともと沖縄出身者って脱毛する人多いんだってね。

「そうそう。あんまりにも濃いと周囲から浮きますから。で、顔と腕と脚はツルツルになっていたので、会社辞めて近くのドン・キホーテ行って女性用のカジュアルな夏物とパンプスを買ったんですよ。スカートって男性の服より涼しげに見えたし、髪も伸び始めていたからアパートでそのまま着てみたら、なーんかいい感じに思えたから翌日からそのまま女子として就職活動はじめて(笑)」

――女子としての最初のお仕事は?

「カフェのアルバイトに入りました。明生って名前を“あけみ”と読ませて働きました。制服勤務だったので通勤服だけ揃えたらいいんで楽でした。歩き方とか身のこなしはアフター5にカルチャースクール講座行って徹底的に直しました。でもカルチャースクールの面々はそもそも私のこと誰も男だってわからなかったみたい(笑)」

――それでまた事務職に戻った?

「徹底的に脱毛し終えてウイッグ買ったりして、派遣登録してしばらく勤務しました。水商売はじめたのもあの頃からですね。最終的に水商売オンリーになっちゃった」

――最初の質問に戻るけど、リャオは自分を女と思っていたんだよね?

「そうそう。女性として振る舞う方がしっくりきたから」

――整形は考えなかったの?

「顔とか化粧で女子でそのままいけたし、女性の服着ているだけで十分というか、それ以上の発想はなかった。そのあたりの意識の持ち方については帰沖後思いっきりトモに指摘されました。トランスジェンダーならばもっと自分の身体を女性らしくして自己の持つ性的な違和感をなくすはずなのに、君にはそれがないって」

――トモの言うことはすごくよくわかる。女性になりたいならほぼ間違いなく胸を入れようとするはずだもん。

「私、そうしようって思ったことが一度もないんです。女性の魅力は胸より尻だと思ってる。胸はないよりはあった方が男性にモテるとか、頭では分かっているんですけどモテようとか全く思わなかったし。水商売でもお客さんと話をするのが楽しいって面が強くて。それに、胸のない女子って結構いるじゃないですか。サーコもそうでしょ(笑)。かと言って尻をわざわざ美容整形する気持ちはなかったですね。脱ぐわけじゃないから」

――話ついでに、サーコに胸あんまりないっていつ気がついた?

「出会った年の6月あたりから彼女、牧志の事務所泊まって私と一緒のベッドに寝てたから、その時には気づいてますよ。本人ともその話で盛り上がったりしたし(笑)」

――盛り上がったって(笑)

「まだ高校一年生なのに胸の大きさがどうこうとか悩んでるんですよ。私、女は尻だよって持論を話してました。実際トモもあまり女性にセクシーさを求める男じゃなかった、宣教師なんだから。もっともこの話題は一度きりです。彼女は風俗バイトで心に傷を負ってましたからこちらからその話題を振ったことは一度もないですよ」

 

3.トランスジェンダーではないクロスドレッサーな理由

 

――リャオが自分をトランスジェンダーではないことに気づいたのは?

「2021年のこのエピソードですね」

 

 

 

「サーコには黙っていましたが、その半年前にはトモからトランスジェンダーではないと1回指摘されてます。あの時は反発しましたが、すでに副社長として仕事していたんで」

――2020年の秋、サーコには「あけみの方がいい」って言ってるね(ameblo)

「あの時期はスーツ着るのが面倒で。でも徐々に仕事そのものに面白さを見出した頃です。水商売もそうですけど私、相手と交渉するのが本質的に好きなんですよ。そのうち面白さが面倒さを上回った。東京にいた頃は上腕まで吹出物出てたんですが、だんだん治ってきたのか副社長になってからは痒みも少なくなり、症状が背中だけになったことも大きいです。テレワークではスカートなど女性の服を着用できたし、スーツ着用時と気持ちの切り替えが仕事上で並行してできるっていいなと思い始めた」

――それは本当に、演技だね。

「そうですね。舞台の上で役柄を切り替えている印象です。それでもスーツを数日間連続して着るのは勘弁という気持ちはまだありました」

――演技してて、どちらが本当の自分かって考えたことは?

「最初は“あけみ”が自分だと思ってた。そのうち、どっちも自分だと思い始めました。特にサーコを意識し始めてからは」

――また横道にそれちゃうけど、リャオはバイロマンティックアセクシュアルじゃないですか。トモへの気持ちとサーコへの気持ちに何か差というか違いがあれば教えてください。

「うーん、そうですね。トモへの気持ちは宝塚ファンの心理に似てますよ。舞台に登場するのは男に見えるけど演じているのは女性でしょ。カッコいい、側にいたい、もちろん叶いっこない恋だけど好きでいたい、好きでいるとこっちのモチベーションをいい風に保てるっていう」

――それは、今週好きなトップスターの公演があるからその日まで仕事頑張ろう! って感じかな。

「それそれ!(笑)トモって、いじりがいのある奴だったし(笑)サーコによく漫才みたいだって言われましたが、コミュニケーションで掛け合う感覚はまさにそうでした。表情豊かな人でしたね。それに美味しい料理作れば喜んでくれる、あの笑顔がたまらなく好きで。よし、また頑張ろうって思えて。叶いっこないと思っているから逆にこっちは気持ちが安定してる」

――サーコは、そうじゃない?

「全然違う! 結婚するまで毎日が予測不可能でジェットコースターみたいでした。こっちのリアクションに彼女がどう反応するかシミュレーションできないんですよ。2021年の夏頃になると、どうやら“あけみ”で接する方が“あきお君”で接するよりは心を許してくれているってのは理解しました。でも、“あけみ”でいるとアプローチのしようがないから“あきお君”でいる場数を増やさなきゃならない。そこへ見合いの話は降ってくるし」

――それでダミーをお願いしたんだ?

トモがあの場に居た(ameblo)のは想定範囲外でした。あれでややこしくなった。心も体も“あけみ”と“あきお君”を演じ分けているつもりが、ごちゃつき始めた。そのあとは生きるだけで必死でしたね。サーコと結婚する頃にはもう演じ分けなんてめちゃくちゃでした。でも女性の服を着るのは好きだから着たい時には着て、という感じで」

 

4.性暴力事件とクロスドレッサー PG12

 

――リャオにはきつい話になっちゃうけど、性暴力被害者ってこととクロスドレッサーでいることはリンクしてる?

「えーっと(しばらく考え込んで)、担当の臨床心理士さんは明確には答えてらっしゃらないです。ひょっとしたらそうなのかもしれないけど、今の私にとって一番重要なのは家族とどうよりよく暮らせるかであって、原因を特定することはそれほど重要じゃないって言われました」

――なるほど。

「私自身としては最初に心療内科にかかる前、さつきさん(サーコの母親)が自分にかけてくれた言葉があるんですけど。『私たちがふさわしいと思うゴールと、あきおさんの目指すゴールは違うかもしれない。それでも専門家の治療を受けて、クリアにできる問題をクリアにすることは決して無駄にはならない。きっといい方向に向かうはずだから』って。ああ、この人は自分を受け入れようとしてくれているんだな、と感じることができたのはその時でした。父に事件を話したこと(ameblo)でわだかまりが溶けてきた部分もありますし、女装しても前ほどは怒られなくなりました。もちろん、時々たしなめられますが(笑)」

 

5.家庭でクロスドレッサーしてる件

 

――現在、サーコと子供たちと一緒に暮らしていて、まだクロスドレッサーでいるのかな?

「はい、相変わらず通勤時はスーツ着てテレワークの時は“あけみ”です」

――サーコはもともとリャオには“あけみ”でいて欲しがっている(ameblo)わけだからいいんだけど、子供たちはどう?

「あまり意識したことないです。サーコは子供たちに、どっちもお父さんだよって言ってます。保育園に“あけみ”で迎えに行くと長男がこないだ『どうしてお父さんは女の格好しているの』って聞いてきて、家にいたサーコが『お母さんがお願いしているから』って答えてた」

――えらい平和な家庭だな(笑)

「私はいわば単純クロスドレッサーという部類なんでしょうが、トランスジェンダーの方も対応はまちまちなようです。外では心の性に従った服を着て家の中では体の性の服装を通す方もおられます。ご家族が当事者と違う見解をお持ちの場合は、家族に合わせて生活なさっている方も少なくないみたいです」

――難しい問題だよね。それぞれが互いに寄り添える社会になるといいね。

  今日はわざわざ時間を取ってくれてありがとう。右手の指輪(ameblo)も確認できてよかった(笑)

「これね(笑)教会には子供たちの祝福式以来行けずじまいですけど、ひょっとしたら家族で行く日がくるかもしれないです。じゃ、また。いつでも呼んで下さい」

(リャオ・ミンシェン氏 インタビュー~クロスドレッサーについて FIN)

2021.6.29.追記 キム・ジング氏インタビューもあります。興味をお持ちの方はどうぞ。

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青春小説「サザン・ホスピタル」リンク先はこちらから。サザン・ホスピタル 本編 / サザン・ホスピタル 短編集

 

小説「わたまわ」を書いています。あらすじなどはこちらのリンクから: exblogへ飛びます。
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