いくら呼んでも返事はない
死は全てを断ち切っていく
背負うには重すぎる肉体を置いて
僕のものではないあの人だから
「失った」のかどうかも分からない
きっと死んでも分からない
呼びかけたことも忘れた頃
死からの返事は返ってくる
言葉でなく死そのもので
生まれた時から
取り残されてる気がする
湿気のこもった下宿にたたずむ
孤独が生んだ言葉は
どれも貧しくて使い物にならない
喉元に積もらせたまま
去れども去れども
取り残されるのは僕の方
分かっていて繰り返す引っ越し
いつもの橋から山が見える
山と山が重なる場所に
すっぽり太陽が収まる
夕暮れ色を滲ませながら
山は景色の遥かさを
僕に知らしめている
夜になっても帰らない
流れる時を受け止め続ける
山はいつまでも人のふるさと
彼は別人になりたくて
普段人に見せない自分を演じる
主役脇役悪役…町人1
演じることに夢中になる
自信に満ちた嘘は
自分にさえ嘘だと気づかれない
徐々に募らせている不安
上手に演じきったはずなのに
いつになったら幕は降りてくるんだ
ベンチに座れば
景色はパノラマになる
むやみに読み取る必要ない風景
休みたかった
歩き続けた足ではなくて
窮屈に構えていた視点の方を
立ち止まってはじめて知った
小さな季節の移ろい
途切れることのない空
都会のビルの頂上に電気メーカー
田舎の電車の車窓に整形外科
あらゆる名前が強調しあっている
「するな!」「しましょう」で埋め尽くされた
命令だらけの狭い公園
看板は人々を見張っている
「ショッピングセンターまで5キロ」という
唐突な説明を横目に
僕らのドライブは高原へと向かう
傷ついた覚えもないのに
刷り込まれている悲しみ
ふとしたことで流れる涙
ささいな恐怖に後ずさり
記憶に残らない過去が
僕の袖を引っ張っている
僕は未来でなくて
永遠に歴史のままだろうか
過去の集積物のような