まだ叶わぬ

願いの代わりに

炎を灯そう


もう見えぬ

命のために

炎を灯そう


新しく重ねる

一年のために

炎を灯そう


思い切り

吹き消した後で

拍手しよう


明日を迎える

心の代わりに

炎を灯そう

生まれた時には

持ってなかったのに

ないと

そわそわ


しっくりきたい

体は

いつもここに

落ち着く


心にも

枕がほしい

かたちないものたちの

行き場所が

通学風景を思い出させる

今にも穴が開きそうなすすけた靴

大切な人と過ごした日々に再び連れ出す

アルバムにくっついて離れない写真


物には自分が

乗り移ってしまったから

使い古しても

ボロくなっても

簡単には捨てられない


いつか使う時が来るかもしれないと

また机に仕舞った図工の作品

僕らは物と何度も同窓会をする

全てを過去の形見にして

あの日のケンカは

蹴りがついた訳じゃなかった


埋めたはずの

亀裂をまだ

互いに持っている


今頃になって気づく

何一つ許せてなかったと


消そうとするほど

消えてくれない記憶

あの日から

張り詰めたままの二人

恋する気持ちは

他の気持ちと

混ざりやすくて

分からなくなる

ただの善意か

友情それとも共感?


恋する気持ちは

他の気持ちと

間違えやすくて

突然かけられた優しさに

どきどきしてしまう

相手にその気がなくても


恋する気持ちは

他の気持ちと

共存せずには生きられず

湧き出す素のない

逢いたい気持ちに

素直になるしかない

久しぶりに空を見上げた

遥か遠くで

空は深く広がっていた


背はかなり伸びたけど

子どもの頃のほうが

きっと空は近かった


どんな地位も

どんな名誉も

あの空に近づく

高さにはならない


ここひとときに始まり

このひとときで終わる

夢も悪くない


空からやって来る

柔らかな風を陽を

正面で受け止めた縁側

僕が忘れた僕を

誰かが覚えている


あなたが捨てたあなたを

僕はまだ覚えている


一つ覚えれば

どれかを忘れ

人は少しずつ修正する


自分の記憶を消せても

人の記憶の中にある

自分は消せない


過ぎ行く年月が

僕の目に映る

あなたを深くする

捨てて歩いちゃえば

楽だけど

持ち運ぶ


過去のがらくたが

未来に役立つ

可能性を捨てられず


かばんの中には

ありったけの

僕が詰まってる


電車の中で

眠りの奥で

旅は続く

詩は突然に

不思議な感覚に

僕らを誘い


詩人の眼を通した

世界の姿を

僕らに見せる


見逃しがちな

日常に

僕らを立ち止まらせてる


そう来るか

予想だにしなかった

言葉の展開


はぐらかされながら

近づいていく

詩の先にあるものへ

無機質な廊下を

看護士がせかせかと歩いていく

寝巻き姿の老患者が

おそらく娘と思われる女性に

支えられながら歩いている


命の戦場と例えるには

あまりに整い過ぎていて

その美しさは

生死の残り香を

あらゆる怨念を打ち消していた


エレベーターを出て

笑い声の聞こえる202号室を過ぎ

空咳の漏れる205号室を過ぎ

私は花束を持って

208号室へと向かう