心では

つなぎ止められないものがあるから

手をつなごう


心では

伝わらないものがあるから

話をしよう


心では

満たされないものがあるから

また会おう


心では

抑えられないものがあるから

抱きしめた

失ったことの悲しみに

言葉はただただ頷いて


失ったものの輝きを

言葉は増幅させるだけ


疑いを募らせ

意味を求め


手に入った時の喜びを

理屈にすり替えるだけ

寝返りを打つ

眠りながらも

微かに意識がある


同じ時は

二度と来ないと

今日は何度も知らせに来る


目が覚めて

別人になってたらよかった

けれど僕のまま


時計にセットした時刻よりも

10分早くボタンを押す

勝ち誇ったような気分で

またおやすみ

眼が覚め

夜明けはまだだと気づく

意識がはっきりしたせいで

二度寝できなくなる


隣には安らかな寝顔

話しかけられないのが寂しい

そうっと起き上がり

カーテンの隙間を覗く

景色はほのか


あまりにぼんやりと

美しいベールに包まれながら

日は空に染みこんでくる

始まりの気持ちを

僕はその間だけ取り戻せる


すがすがしさに

思い切り背伸びした後ろで

音がして振り向く

さっきまでの寝顔が

こっちを見てた

聞きたい音楽を

聞き尽して

見たい番組は

全部終わって

心の行方を

見つけられないまま

たどり着いた暁

後悔の波が

引いている間に

電気を消したら

後は眼を閉じればいい

闇が濃度を薄めていく

塞いだ視界の向こうに

誰かの幻を見る

微笑みが

もう一人の微笑みを

呼び起こせるならいいのに


人間には

幸せでいることさえ

罪深く思える時がある


幸せと感じる

時差が

価値観の違いが


ぷっと吹き出す

無邪気な笑顔の中にも

ためらいを混じらせる

寒さ増す景色は

少しずつ冬へと向かっている

木々は枝から溢れ出した

色をはらりと捨てていく


美しく紅葉は枯れ落ちて

美しい夕陽に照らされる

去りゆくものまばゆさは

いつも僕を不安にさせた


静寂に埋もれる時の中で

命は蓄える

新たな時への備えと

明日への期待を

授業中

先生の話を聞きながら

ペンを回していた


友達のネタを

笑っている間

受験勉強で

机に向かってる間

ペンを回していた


漂う寂しさの中で

過ぎ去る季節の中で

ペンを回していた


ほとばしる情熱を

吐き出せない苛立ちを抱え

ペンを回していたペンを

回していた

生まれた時から

僕は契約していた

契約書によると

僕は日本人で

僕はこの家族の一員ということになっていた


物心つかないうちに

僕は誰かを決められていて

曖昧にしか覚えていない法律に従い

買い物の時にはお金を払い

見えない契約に

忠実に生きていた


全てをクーリングオフしたいと

思った時には手遅れで

今ではすっかり契約書が

心に染み付いている僕だ

良くも悪くも

ゴールテープを

駆け抜けた後も

時はまだ走るから

呼び止めるように

スイッチを押す


スタートダッシュに

失敗したあの子の

50メートル付近で

つまずいたあの子の

記録だけが残る


栄光にも

永遠にもならない

その十数秒間の

苦味を消去して

ストップウオッチは

次の走者たちを待つ