携帯があれば

すれ違うことはなくなると

誰が言った


いつだって無理にでも

融通が利くから

かえってずれてしまった


募る不安を

携帯がけしかける

ボタンを押させる


響く着信音に

感じる窮屈さ

同じことを自分もしてるのに


せっかくの携帯は

電源を切って

鞄の中

確信など持てぬと確信した


たった一つのもので

僕は成り立ってなんかいない


僕を支えているのは

何もかもがごちゃ混ぜになった

あやふやなものだ


僕はひどく不確かなものの上に立ち

自分を確立させている

いくら足元がぬかるんでいようが

知らんぷりで

この角を曲がらねば

たどり着けない場所がある


この階段を渡らねば

帰り着けない部屋がある


繰り返していく未来を

連想させる道がある


逃れられない運命から

逃げ出したくなる今がある

枕の上に乗っかる

でっかちな頭

だらしなく布団に

広がる手足


眼と心は

とっくに死んでいるが

心臓はしぶどく生きている


息がある

脈がある

仕方なく

起き上がる


街に出て

歩く人々の呼吸に耳を澄ます

いのちを感じることで

自分のいのちを確認する

蜜蜂が蜜を得ることで

花粉が運ばれていくのは

偶然かもしれないが

運命だと思いたい


ぴゅうと風が吹くことで

花の種子が運ばれていくのは

偶然かもしれないが

偶然とは思えないほどに

美しい花が咲く


生きていく理由は

きっと後付けだってかまわない

いつの間にかそうなっていたことが

誰かの命に届く

手紙になるようにと願う

その花の美しさに

鮮やかな幻覚に連れ込まれ

そのトゲの一刺しで

僕は現実に引き戻される


儚さが隠し持つ凶器

バラが剥き出しにしている物語

その結末を誰もが知っていて

けれど引き込まれてしまう

好きな映画や

細かな部分のモラル

世の中や他人の見方

その全てが異なる人


言い争い

すれ違い

分かり合えないことさえ

恋をつなげていた


街を歩く時の

付かず離れずの距離

その間に流れるものを

信じていた

放った言葉は

様々な立場に

かすめ取られてしまう


自分が始めに

それを言った時の

気持ちを見失う


一人歩きした言葉を

「僕のものじゃない」と

取り下げようとしても

後の祭り


気持ちだけを置き去りに

果てしない論争は続いていく

君に逢いたくない時がある

逢えば憎くなりそうだ

自分の想いが重荷になってる


苦しんでいる君の声を

どこかでうっとおしく思っている

どうすることもできないと分かったふりして


口で優しさを装いながら

僕はこんなにも薄情だ

盾のような言葉で交わす

心のない会話

数秒前の風を

吐き出して

数時間前の水を

水で流して

成長することにも

維持することにも使われず

今になりえなかった過去は

とうに体の外


時はくるり

僕を回り

僕は何度も

生まれ変わるが

何一つ

変わっていない