世界は狭くなった

というけれど

世界中の多くの人は

目の前の貧困から

抜け出せずにいる


世界は狭くなった

というけれど

臆病な自分は

旅立つ勇気を

持てずにいる


世界は狭くなった

というけれど

人々の心は

それよりも高い

壁を積み上げようとしている


目的地のない

チケットを握りしめたまま

誰か一緒に行ってくれませんかと

誰より静かに呼びかける

微妙に気遣った選曲で

思い思いにボタンを押して

マイクとの距離を測りながら

ページをめくる友達と

たまに出入りする店員さんを

一人で照れながら聴衆にして

だんだん上がってくる調子

いつの間にか熱唱してる


得意の持ち歌と手拍子とともに

お酒のスピードは進んで

歌っているのか

酔っ払っているのか

勝手に過ごしながら

共有する空間

締めは皆で合唱

レジを過ぎた後で

「楽しかったね」と

言い合い手を振り解散

何かに気づくこと

人には手渡せない

伝えきれない感覚


大切な人の言葉が

耳に響いて届くなら

テープに録る前に

心でこだまさせればいい


お気に入りの風景が

目に鮮やかに残るなら

カメラを構える前に

心で埋め尽くせばいい


始まりはいつも

誰にも見えないところで生まれる

足を踏み出す前の第一歩

実物とは

似ても似つかぬそれを

僕はくまだと思っていた

幼稚園の頃

クレヨンで描いた僕のくまは

うさぎと笑って手を振っていた


僕の知ってるくまは

いつも二本足で立っていて

たまにぬいぐるみの姿で

家のソファーに座っていた

アニメにも出てたっけ

プーさんなんて呼ばれて


幼い子どもの心の中にある

深い森のどこかで

今もたぶん暮らしている

小さな小屋のテーブルで

大好物のハチミツを食べて

冬にはベッドで冬眠する

気まぐれ屋のくまたちが

蛇口から流れる

水の恵み

受け取る僕の口の

拙さ


透明に広がる

空の恵み

受け取る僕の口の

小ささ


おびただしい量の恵みを

人は戸惑いとともに

受け入れる


すくいきれずこぼしていく

口惜しさをも

恵みとして

どこで身に着けたのだろう

生きていくためのエンジンを

死に向かう足を止めるブレーキを

どこで無くしてしまうのだろう


どうして他人はこんなにも

立派に映るのだろう

自分だけが子どものようで


どうして世界はこんなにも

眩しいのだろう

自分が惨めに思えるくらいに


あなたがかけてくれた優しさが

今頃になって染みてくる

自分だけが辛いわけじゃない

それはもう分かってる

二人は涙を流している

片方の涙をきっかけに

別々の過去を引き金に


二人は大声で笑っている

片方の冗談をきっかけに

別々の笑いのツボで


違う心が

同じ顔して

二人の時を

過ごしている


分かち合えた喜びが

二人を結ぶ

一人の時間を

奮い立たせる

あの人の愚痴は

あの日

夢だったものだから


あの人の涙は

恋だったものだから


何とかしたくて

何もできない

自分がいて


カウンターで

うなずくだけの

小一時間

鳥の鳴き声が

刻んでいる

命を


雨の降る音が

刻んでいる

時間を


心に隠れた

楽譜の上に

音符が乗る

乗る


走り出す

靴はリズムを奏でる

大地の上に

音符が乗る

乗る


ぎこちなく

もどかしく

僕らは音をこぼしていく


地球の鼓動は

それさえも

合いの手にして響く

不幸は

現実的に見えてくる

幸福より

感触が強くて


不幸は

使命のように思えてくる

幸福より

意味深に思えて


怖れながら

魅せられている

一人の英雄が抱えていた

不幸話に


失っていく姿に

酔いしれてしまう

大切なものを捨てた時の

後悔を省みずに