桜の並木道の

先に何があるか


地面に落ちた過去を

踏みしめて


舞い散る今を

瞳に抱いて


立ち止まって気付いた

時が動くのに


桜の並木道の終わりは

新緑の未来の始まり

街の隙間に

土があり

土のあるところ

菜の花が咲く


レール横を賑やかに

河川敷を鮮やかに

工事現場を可愛らしく


土のあるところ

生きる余白があり

黒茶色の地面は

黄金色で塗りつぶされる


菜の花畑の道の先は

いつもと違う

どこかへと繋がっている気がして

いつからか重くなった

土をかき分けて

命は探る


春風の手まねきに

あずかって

地中を踊る


そこに暖かな日差しが

待っているのを

知っているかのように


地面を突き破り

つくしは空を刺す

誇らしげに

鉾らしげに


重力を知りながら

成長は止まらない

一瞬一瞬と


隠れていた命が

喜んで顔を出す

春の引力の仕業だ

僕のまっすぐが

君には急カーブに見えたりする


君の助走が

僕には迷走して見えたりする


僕がくぐった交差点の

どこかで君は横切れているか


君が通った一本道を

僕は上手に迷えているか



太陽に乾いて

一昨日までの通りが蘇り

歩いている恋人たちの

印象もずいぶん変わる


何かしらの勧誘を

遠慮がちに断りつつ

まだ若干窮屈だけど

新しい靴は進む


自動車のエンジン

大学生の笑い声

信号機が奏でるメロディー

埋め尽くされる楽譜の

隙間で鳴らす

命のリズム


人の流れが止んだところで

ようやく足も止まる

見渡す先には

まだ開いたことのない

ドアが幾つも待っている

鳥の声でさえ

突き刺ささってしまいそうなほど

無防備な心で


引きずられないように

遠ざけていた日付に

そっと歩み寄る


あの時流せなかった涙が

不意に体のどこかを

流れ落ちた気がした


差し込んだ光が

奇跡じゃなくていい

ささやかな陽だまりをつくってほしい


芽は春の方へ伸び続ける

切なさと待ち遠しさに

染まる地上へと

そうあってほしい

そうじゃなきゃいけない

そうあるべきだ


持った疑惑に

心で辻褄合わせて

いびつな論理が出来上がる


向かい合う相手が

思い通りにならないことに

苛立つ毎日


付着した汚れを信じきれない

僕らの眼鏡は

理想で曇っている

潮風は消える

僕に届かないうちに

カモメらを喜ばせた

あの香りはどこへ


こすれ合う砂と水

耳が欲しがっていても

僕に届かぬうちに

波音は消える


失われゆく風景を

想像力では補えない

言葉だけじゃ

写真だけじゃ


今手にした感覚は

過去に触れるための手がかり

五感を旅立たせる

軽はずみのバックを背負って

まどさん

あなたはそのまどから

かぞえきれないけしきを

のぞきこんでいた


なきむしのかみさまや

てがみをたべるやぎさん

ビスケットがふえるポケットや

まめらしいまめ

たくさんの虹 にじ


いのちのひとひらに

ちきゅうのひとかけらに

こころうばわれることを

おそれなかった


まどさん

あなたはたくさんのまどを

ぼくらにのこしてくれた

だれにもわかることばにして


のぞきこんだら

みえてきそうだ

あなたのうたのなかにいた

ぞうさんもくまさんも

静寂が一瞬で

大歓声に変わった

緊張が喜びに

祈りが涙に


彼女は拒まなかった

自分の夢に

他人の夢が我が物顔で

のしかかってきても


この日が来なければ

気づかなかっただろう

彼女が望んでいたものが

メダルの輝きではないことに


切望の中で

彼女は見せてくれた

なりたかった自分を

誰もが望んでいた以上のものを


みんなのための笑顔と

誰のためでもない泣き顔と

華麗な羽ばたきを記憶に残して

一つの舞台の幕が閉じる