軍曹!時間だ!… -7ページ目

戦場においての外部観測法(戦車工学)

1・2・3 乗員の戦闘能力と戦車の確実性

 

 乗員の戦闘力を保証する戦闘車両の技術上の性能は次の様なものである。

 1) 戦場においての外部観測法

 2) 外部との連絡法(部隊及び分隊編成の場合の指揮)

 3) 内部の連絡法

 4) 操縦、運転や射撃の利便及び乗員の作業上の正規衛  

  生条件を備える事

 5) 重要部分の取扱い容易な事

 

外部観測手段: 観測者を確実に防護して、しかも戦場において良好な観測をなし得る事は戦車に課せられた最も重要な要求中の1つである。

現代の観測手段は次の種類に区分される。

a) 直接観測

b) 光学的観測具

c) 光学兼機械的観測具

 

a) 接観測 すなわち種々な構造の覗き孔は構造簡単で、確実な点では優れているが、視野が限定され、鉛の飛沫を充分防ぐことが出来ず、かつ断絶地や不整地を行動する際に、車体の動揺と孔に対する観測者の位置が変わるため、地形の全貌が眼前で絶えず垂直方向に動く欠点がある。戦車の懸架装置を改善すれば、後者の欠点は減少する事が出来るが、これを全然なくしてしまう事はほとんど不可能である。

b)  光学的観測具 として種々の構造のペリスコープが従来も用いられてきたし、また現在も用いられている。どんなペリスコープでも普通の観測用覗き孔と比較して勝れている点は、乗員が確実に射撃に対して防護されている事である。しかし、全てのペリスコープは破損しやすく、したがってこれに対する根本的要求は迅速に取換のできる事と、これに代わるべき観測手段すなわち二重の観測手段を必要とする事である。このほか、ペリスコープを通じて偵察観測する時は明るさが50%まで低下するという欠点もある。

 現代の複雑な構造の光学器材は、その「観測角」(視野)が比較的せまい。観測角は倍率により言って一定している。すなわち、観測角と倍率との積は一定値であり、現代の光学器材にあってはこの値は70に達している。例えば2.5倍の時の「視野」は28°である。なおこのほか、複雑した光学的観測具は一般に高価である事も特記しておかねばならない。

c) 光学兼機械的器具 の中には各種の機構を持つストロボスコープが含まれる。

  普通のストロボスコープは共通の軸を持った2つの鋳鋼製の帽子状の蓋から出来ていて、一方が他のものに嵌められている。外部の帽子は多数の垂直で平行な隙間があり、その隙間の幅は約2mmで、電動機もしくは機械的の伝動装置によって回転される。その回転数は毎分300~100程度である。内側の帽子には多数の覗き孔がありトリプレックスと称する種類の防弾ガラスをもって保護せられている。

ストロボスコープの欠点は明るさの損失が極めて大きい(70~80%に及ぶ)上に、しかも、ただ小銃弾及び弾丸の破片より観測手を防ぐにすぎない事である。ただし、視界が360°に及ぶ点は他の観測器具と比較して著しく優れている点である。

簡単な覗き孔は別として、全ての観測具の欠点は悪い天候状態の下では鮮明度が著しく低下し、また時には全然展望不能の場合もある事である。(降雪、降雨、砂塵等)。

全ての観測器具に対する一般的な要求は次の諸点に帰着する。

a) 最大限の視野、水平視界は出来るなら360°、垂直視界は+70°ないし-15°

b) 車体の動揺にはあまり影響されず、両眼をもって観測し得る事

c) 観測手の確実な防御

d) 明るさの消耗の少ない事(映像の鮮明な事)

e)  敵地帯外で自由に観測し得る事

f) できるだけ倍率の大きい事

 

 


【用語の解説】

 

[トリプレックス] 

Triplex:合わせガラスの商標。3重ガラスともいう。

元はセルロイド今はポリビニール・ブチラールの薄いフィルムを2枚の板ガラスの間に挟んで密着させた安全ガラス。

いわゆる合わせガラスで破砕しても破片が飛散しない。

 

[ストロボスコープ]

八九式中戦車の操縦手用の視察装置も円盤状のストロボスコープだった。

 

文中のストロボスコープを搭載したグロッテ戦車。

二段砲塔最上部のスリットの付いた半球状のものがストロボスコープである。

この戦車は、ドイツラインメタル社の社員であったエドワート・グロッテ(Eduard Grote)がソ連邦に招待され試作したものであり、彼の名を取りTG(TANK GROTTE)と呼ばれる。ちなみにグロッテはヒトラーの命令で1000t超重戦車「ラーテ(Ratte)」を設計していたりする。


 

写真集【自衛隊の米軍供与戦車】

写真集【自衛隊の米軍供与戦車】が届いた。

同人誌ショップで購入したのだが、ポストカード付で直販していたのに気づき遅れたのでちょっとショックだ。

近所の昔の姿が写っており懐かしい(と言っても当時いたわけではないが)。一部の写真は大隊解散時にアルバム編纂のために見たことがある写真だった。

特にM24戦車にアメリカ軍マークの白星のままのものがあるが、それを桜に書き換えたものの両方の写真があったので「くださいな」と言ったところ「アルバム編纂したらあげる」と言われたのだが、そのままだな。

今になって、とても残念だ。焼却すると言っていたが焼かれちゃったんだろうか?

 

なお、32、33ページのM24の車両番号が「80-0068」と記載されているが、戦車は「90-」で始まる4桁を採用しており、M24は0で始まる4桁だった。

正規の基準フォントの角ゴシック体で描かれたものなので分かりずらいが「9」である。

 

戦車の車両番号割り

M24戦車:90-0×××

M41戦車:90-2×××

M4戦車:90-3×××

61式戦車:90-6×××

74式戦車:90-7×××

 

上記の様な番号基準だったが、61及び74式は製造順で番号が振られていたため秘密上の理由とかで「95-」で始まるランダムな番号に替えられた。

といっても、61式は「4」、74式は「0、1」、90式は「2、3」、10式は「4、5」で始まりランダムな3桁を加えた4桁になっている。

61式と10式が「4」で被っているが、61式はすでに退役しているので、あえて欠番にしなかったのであろう。

 

さて、明日?は零時起床で気仙沼だ!

おやすみなんしょ。

 

戦車の装甲防御、ガス防御(戦車工学)

1・2・2 装 甲 防 御

 戦車の損傷を著しく少なくするのは、もちろん、戦車の速度と旋回性能によるところが多い。また、その大きさにもよるが、速度が増せば、それだけ目標となる大きさも小さくなり、命中の公算も減少するのである。しかし対戦車砲(ないしは戦車の砲)の命中率の増大と、一地点から突然射撃される事(肉迫行動域あるいは偽装の可能による)により以上のごとき条件に全幅的に信頼することが出来なくなっている。なお、自己固有の火器はそれ自身最良の防御法の一つであるが、火器に対し戦車を最も確実の防御する方法は装甲防御である。

 各種弾丸による装甲板の被侵徹性及び各種要素の影響の詳細は後述の装甲防御の理論において研究する事として、ここでは、ただ、戦車の任務に適応する装甲板の厚さを選定するために必要である装甲板の被侵徹性について2、3の一般的知識を記述するに止める。

 板の被侵徹性は次の要素によるものである。

a) 装甲板の性質

b) 弾丸の重量とその径

c) 装甲板の厚さ

b) 装甲板に弾丸が命中した時の速度、すなわち弾丸の初速度、距離及び弾丸の形状係数

e) 装甲板に対する弾丸の衝突角度

これらの量そのものの間の関係を表す近似式は極めて多い。

次に装甲板の厚さを換算するために一般に用いられているジャコブ・デ・マラー氏の式を紹介する。

《23P 計算式挿入》

 

種々の距離から種々異なる弾丸を使用した時の装甲板の被侵徹性に関する概略の数字を示すために次の表1・4及び1・5に掲げておく(本表は各種の資料により編纂したものである)。

 軽戦車に最も多く使われる装甲板の厚さの徹甲銃弾に対する防御力に関して、外誌に報道されたビッカース会社の装甲板についての報告を次に記しておく(本表は前のものと同様絶対正確の数字であるかどうかは保証の限りではない)。

 

板の厚さ9mmの時、距離150m以上からの徹甲銃弾を防ぐ。

板の厚さ11mmの時、全ての距離からの徹甲銃弾を防ぐ。

板の厚さ11mmの時、距離450m以上からの13mm徹甲銃弾を防ぐ。

板の厚さ20mmの時、距離100m以上からの20mm徹甲銃弾を防ぐ。

 これらの装甲板は明らかにはなはだ硬いが脆いものである。したがってこれを実験するに地雷を使用すれば更にいくぶん悪い結果になろう。

装甲板の配置は極めて重要なもので、また起り得るべき衝突角を最小限度にすることは板の厚さを増す事と同様に重要である。これに関連して戦車の車体の形状に対し要求が生じてくる。すなわちなるべく垂直板の使用を避ける事である。理論上最も望ましい形状は球面であるが、この様な装甲板を製造する事は困難であるから、装甲車に対するこの要求は目下のところ未だ実現を見ない。ただ個々の装甲板を設計上許し得る範囲で傾斜せしめ、砲塔の外面を円筒形にするに止めている。

ガス防護

戦車にとっての最も有効なガス防護は、個人防護ももちろん考えなければならないが、集団的防護が有効であるとされている。

1) 可動具部及び非動部を通じあらゆる結合部に特殊のパッキングを入れて車体全体を密閉する事

2) 戦車の内部を高圧に保つ事

3) 特殊の構造を有する濾過機すなわち防毒具を備え、その濾過機を通して外部の空気を吸い込むようにする事

個人的な防毒装置は乗員の動作を束縛するものであるから、この様な装置を取付けるのは極めて面倒ではあるが、戦車の毒ガス防御法としては極めて望ましい事である。