前回は、正投影図の主投影図(正面図)【(a)から観る】を選ぶところまで紹介しました。

 

では、正面のとり方は一旦置いておいて、他の方向から観たら、それぞれどういう投影図になるかを観てみましょう。

 

  それぞれの方向から投影図を描いてみる

(a)以外の方向からみた投影図をそれぞれみていきましょう。

(なお、あとでの説明上、(a)を正面とした際のそれぞれの図の名前を先に表記しています。)

 

(b)から観ると

  

(c)から観ると

  

(d)から観ると

    

(e)から観ると

   

(f)から観ると

   

 それぞれ6方向からの形状がこれで分かりました。

 さて、本題にもどり、なぜ(a)からみた図が正面図に選ばれたのでしょう?

 

  主投影図(正面図)の選び方

 実は、主投影図は次のルールで選ぶ事が一般的です。

「一番特徴的な形状・機能を示す面を主投影図(正面図)に採用する。」

 (※部品図の場合、加工時の取り付け向きを重視する場合もあります。)

 今回は加工を考慮せずに、形状を一番よく表す観点から改めて観てみましょう。

まず、今回の対象物の形状は、一部にL字状の凸起があり、また、aーb面の間に斜めの面があるのが特徴的です。

 (a)から観ると、ちょうどL字形状が明示的に見えるのと、手前側に斜面との境界線が明示的に見えているため2つの特徴点を一面で表現することが出来ます。ですので、主投影図としての第1候補になります。

 

 しかし、よく見てみると、(d)から観た場合(b)から観た場合でも2つの特徴点が少なからずも外形線などで含まれているため主投影図になり得るんじゃないの?という疑問が出てきます。

 これは、単一の図のみで表現しようとしている時の考えで、実は、最初にお話ししているとおり、正投影法では、複数の図を組み合わせて対象物である品物を表現します。この複数の図を組み合わせるという考えを含めると(a)から観る図が主投影図になる事の必然性が見えてきます。

 

  次回にむけて

 次回は、この複数の投影図を配置する代表的なルールである第三角法について観ていきます。

そのレイアウトを理解することで、主投影図の選び方がより明確になっていきます。

 次回をお楽しみに・・・

 

 

 前回本連載までは、図面自体の種類とその中で必要な記入要素についてポイントを振り返ってきました。

 実際の品物や機械製品では、形状が複雑になるため1つの図だけでその全体形状や構造を表現することは難しいのが普通です。

 そのため複数の方向から見た図を組み合わせて、1つの対象物を明示することを行います。前回の【閑話】クルマの実用寸法でもクルマを「真正面」、「真横」、「真上」からみた3つの図で組み合わせて表現していたのも一例です。

 

  機械設計分野の図面の配置を理解する

 機械設計分野では、コンピュータを用いた三次元CADで設計することが一般的です。

 これはディスプレイ内に実際の現物と同じミニチュアモデルを仮想的に表示して、形状や寸法を調整して図面化していくもので、マウスを用いて向きやスケールを変えながら表現できたり、マウスドラッグで形状の寸法を直接伸び縮みさせながらと直感的に取り扱うことができます。加えて、複数の部品を画面内で組み立てることも出来るため作業の効率化を測ることもできます。

 一方で、製造現場では、直接的に作成者が図面を見ながら品物実体を作成するため、作業者が製造する向きに、実体と同じ寸法・形状で図面が描かれていることが理解を促進させます。

 そのことを踏まえて、ここでは製作図面である「部品図」を例に以下では観ていきます。

(レイアウトの配置自体は、「組立図」でも同様です。)

 

  主投影図(正面図)を選ぶ!

 先ほどから複数の図を配置して、1つの対象物を示すとしました。

 例えばここに示すような形状の品物を考えてみます。あえて斜めからみた(等角図という手法)描き方ですが、これでは、工場の工員さんは実際の寸法がどうなっているか実長がと角度が表現できないのでわかりづらいですね。

 そこで、この からまでの品物の各面に沿った6方向(立体ですので、裏面側からまで含めたら6方向になります)の中で、品物が一番複雑に見える方向を1つ選びます。

 ここでは、aからみた方向になります。試しに、その方向から見た図を描くと次のように見えます。

 

 これが、この品物の「主投影図」または、「正面図」と呼ばれる、品物を表す中心的な図になります。

 

  次回に向けて

 次回は、なぜ、a方向からみた図が主投影図にしなくてはいけないのか?じゃあ他の方向の図はいらないのか?などについて観ていきたいと思います。それを理解するためには、他の方向が正面図だったらどんな不具合が起こってしまうのか?ということを並行して理解していく事が重要になります。(次回をお楽しみに!)

 

本連載では,製図に必要な寸法の種類について紹介していますが,ここでは,ちょっと閑話として,皆さんがクルマ購入を検討する際に閲覧しているクルマのカタログなどで記載されている寸法について,寸法つながりでみてみたいと思います.

 

クルマのカタログに記載されている寸法 

 上の図は,クルマのカタログなどに記載されている代表的な寸法です.

 先に掲載した【スーパー基礎編】Tips 組立図に必要な主要寸法の意味を理解するに示しているように,外法寸法(全長,全幅,全高ならびに下部のクリアランスの最低地上高)が示されており,車両全体の大きさをイメージすることができます.

 また,それに加え,機能寸法としても軸距(ホイールベース:前輪軸と後輪軸の距離),輪距(トレッド:左右車輪の接地中心間距離)が記入され,車両を転動させる機能を担う車輪の位置関係が分かります.

 通常の購入希望の顧客は,まずカタログなどでこの外寸をイメージしながら,実際の販売店に赴き,展示車両で実際の大きさを確認して,購入契約を結ぶ流れになります.

 

クルマの実用寸法 

 一方で,実際に車両を購入し,街中で使ってみると,前項で説明した以外にも,必要&知っておいた方が良い寸法があります.

 それが,先ほどの図に赤で追加した実用寸法になります

 例えば,①~③は,駐車場でドアを開く際にどれぐらいのスペースが必要か?をイメージすることができます.

  ①両側フロントドアを開いた時の車幅(1段目)

  ②両側フロントドアを開いた時の車幅(2段目)

  ③両側フロントドアを開いた時の車幅(3段目)

 

 また,④,⑤は,先ほどの全長,全幅,全高,最低地上高と併せて機械式の立体駐車場に入庫できるか?などの判断に使えます.特に,カタログの全幅は,ボディの幅で記載されているため,ミラーまで含めた幅の場合は④,⑤を考慮する必要があります.

  ④ドアミラーを含む車幅(ミラー閉時)

  ⑤ドアミラーを含む車幅(ミラー開時)

 

 は,リアハッチバックのクルマの場合,どこまでハッチが上がるかを示しており,屋根付き駐車場などで,天井にぶつけないために知っておくと便利です.

  ⑥リアゲート全開時の全高

 

 ⑦~⑪に関しては,例えば道路工事の段差やコンビニエンスストアなどの道路脇の店舗に入出店する際の歩道の段差乗り越え時に車体下部を接触させないために,ご自身のクルマについて知っておくと良い寸法になります.

 ⑦フロントオーバーハング(長いほどスロープなどでの出入りに注意が必要)

 ⑧リアオーバーハング(長いほどスロープなどでの出入りに注意が必要)

 ⑨アプローチアングル(スロープや段差乗り越え時に注意が必要)

 ⑩デパーチャーアングル(スロープや段差乗り越え時に注意が必要)

 ⑪ランプブレークオーバーアングル(ホイールベースが長い時,車体下部が引っかかってしまい「カメの子」状態に)

実例 アプローチアングルを考えないと,フロントスポイラー下部にガリ傷がwwww

 

 これらの実用寸法は,各完成車メーカーのホームページの製品紹介のQ&Aなどに記載されていることが多いので,ご自身で車両購入する際には,その辺のページにも目を通しておくと良いと思います.

 

今回の閑話のポイント 

 このように,実際の生活の場でも寸法は非常に重要な役割をします.特に,使う人の立場に立って,どんな寸法が必要なのかを日頃の生活の中で注意深くみていることがエンジニアリングセンスを磨き上げる近道になります.

 

 今回は車体の寸法について観ましたが,また閑話の機会がある時には,狭い道路などでクルマを動かす上で重要になる「旋回半径」についても取り上げてみたいと思います.

前回(【スーパー基礎編】Tips 組立図に必要な主要寸法の意味を理解する)では「組立図」について観てみました.

ここでは、もう一つの主な図面となる「部品図」の構成について観ていきましょう。

 

現在の設計現場では 

 現在の設計現場では3次元CADを用いて、コンピュータディスプレイ内で品物を立体的に表示し、任意に回転させて形状確認をしながら設計する事が多いです。

 

一方で,部品の製造現場では 

 

 部品図を部品の製造現場で用いる際には第三角法(※1)に基づいた投影図で出力することで、作業者が実物と同じ形状・寸法長を確認でき、作業効率を図ることが出来るようになります。

 ※1:ISOでは第一角法も採用されています。日本国内における機械製図では慣例的に第三角法が広く用いられています。

 

 部品図に記入が必要な項目 

 

 部品図に記入が必要な項目は、実際の部品製造に必要な以下の項目となります。

 

  • 原寸で形状の分かる正投影図で形状記載。
    部品図では、製造作業者に実体の原寸をイメージしやすくするために、対称形状であっても、外法形状は必ずどこか一つの投影図には省略せずに表示する。
  • 部品製作に必要な各種寸法
  • 表面性状:仕上げ面精度を明示する。
  • 参照番号:※学校製図などで、複数の部品を1枚の用紙に描く多品一葉製図では記載する。
    なお、実際の製造現場では、部品毎に製造するため一品一葉となり、部品欄で特定できるため省略する。
  • 各種公差:幾何公差,サイズ公差など(上図には,未記入)
  • 表題欄・部品表:材質や必要個数、重量などが分かる。また、設計責任者や更新日などトレーサビリティに関する項目も製品を改良する際に重要である。
  • 第三角法の記号:図面がどの画法で書かれているかを明示することで、読み間違えを防ぐ。

 

次回に向けて 

 ここでは、比較的簡単な形状の部品を例に2つの図で部品図を示しましたが、実際の機械部品は複雑な形状となる事が多く、正投影法では複数の図を用いて1つの部品の形状を表すことになります。

 次回は,「第三角法」と呼ばれる所以の投影図配置について観ていきたいと思います。

前回(【スーパー基礎編】Tips「組立図」と「部品図」の目的を理解する))は「組立図」「部品図」を作図する目的の違いを説明しました.

ここでは,まず「組立図」に必要な寸法について具体的にみていきたいと思います.

 

製品カタログに記載されている寸法 

 

 上図(参考URL:https://www.nabeya.co.jp/pdf/9103.pdf)は,実際の顧客向け製品カタログに記載された寸法例です.

 顧客は,このような製品カタログを見ることによって,目的に合ったスペックかどうかを判断して,製品の購入を検討します.

 その製品検討ためには,前回(【スーパー基礎編】Tips「組立図」と「部品図」の目的を理解する)で示したような,項目が記載されている必要があります.

 次項では,上図を例に,具体的な寸法の種類を説明します.

 

組立図に必要な寸法の種類 

  • 外法(そとのり)寸法(製品の外形のサイズを示す)

     本体について:A(全長)×B(全高)×H(全幅)
     

  • 据付寸法(製品を固定して使用する際に必要な寸法)

     固定脚ピッチ:F(長手方向)×I(幅方向)

     穴オフセット:G(本体を作業机端に固定して使用するため)

     固定ボルト関連:M(最大開き、ボルト選択に参照)

             L(脚厚さ、ボルト長さ選択に参照)
     

  • 機能寸法(製品の性能を示す寸法)

     固定可能サイズ:E(最大長)×J(最大幅)×D(高さ)

             K(逃げ幅(突起部をこの穴を通して固定))

     作業机からスライド面までの高さ:

             C(逃げを利用できる長さ、固定高さの参考)

     送り性能:P(スライド部のねじ送り性能)

     アームの操作性:φ○(握り手のサイズ)×N(握り手長さ)

 

※注釈 

※このような顧客向けカタログでは掲載スペースやその閲覧対象が限られるために省略されていますが、設計時の組立図では上記に加えて、以下の項目も記入が必要となる事があります。

  • 梱包寸法(アーム(全閉状態)まで含めた全長。製品輸送時の梱包材の選定に必要)
  • 作業空間確保に必要な寸法:アームの可動軌跡とその寸法
  • 固定に利用できるボルト径の最小径(脚の最内側径、参考値)

 

 ここでのポイントは,その製品を組み立てて,使用するために固定したり,実際に作業をするイメージを持ちながら,それに必要なスペースや工具が実際に使える?輸送のための梱包ができたり収納できるか?まで一連の流れまで想像できるかが分かりやすい図面を書く上でのポイントとなります.