前回は、直交しない面について、補助投影を用いて、図面上に実体形状を表現する方法を紹介しました。

 ここでは、補助投影を展開するレイアウトについての工夫点についてもう少し観ていきたいと思います。

 

  補助投影のレイアウト

 前回お話ししたように、補助投影は主たる投影対象が描かれている図(ここでは正面図)にある斜面に対して、正投影の位置に配置するのが大原則になります。

   

 なお、下図のように他の図や寸法が干渉してしまう位置には、補助投影を配置してしまうと見づらくなってじまうので、配置してはいけません。

   

   ※実際の図面では、寸法線や寸法補助線なども記載されているのでレイアウトをよく考えて記載する必要があります。

 

 しかし、どうしても図面の大きさや他の図・寸法の関係で、正投影の位置に配置できないやむを得ない場合があります。

その場合は、以下の方法を用いて干渉しない場所に補助投影を表現することができます。

 

  やむを得ない場合の補助投影のレイアウト

 観賞しない場所に補助投影図を描く場合、以下の2つの方法が一般的です。

1)中心線を折り曲げて、補助投影図が正投影の位置から移動していることを明示する。

    

2)矢視法を用いて、投影関係を明示する。

    

 

 

  いずれも、正投影位置に比べると、主投影図との対応関係の明確化が劣りますので、どうしてもやむを得ない場合に使用するということを念頭に置いておいて下さい。

 前回までは、第三角法における投影図の配置を観てきました。

 

  直交しない面の実形状はゆがんでしまう

 

 しかし、機械部品や製品は複雑な形状をしている場合も多く、必ずしも90°で直交する面で構成されるわけではありません。

 例えば斜めの面を含む部品形状の場合、正投影では投影面に平行な面は原寸で形状を表現できますが、斜めになっている面(下図※1)は、ルール通りに正投影してもゆがんで投影されてしまいます。

 

   

 その結果、このあとに寸法を実寸で入れることが出来なくなってしまいます。

 

 

  斜めの面に対して、正投影して原寸表示を実現する。ー補助投影

 ここで、斜めの面の形状を原寸で表現するために『補助投影』というテクニックを用います。

 やり方は、原寸表示したい斜めの面を基準にして、その面に対する直交面の正投影図を第三角法にの投影位置と同じように配置します。

 先ほどの斜面を補助投影を用いて配置すると、下図のようになります。

   

 対象としていた斜面を構成する面の形状とそこにあけられた穴がゆがみなく原寸の形状で補助投影図上に表現されている事が分かります。

 

  次回に向けて

 このように補助投影は、主として斜めの面などを基準に投影図を配置することで実現できますが、実際に三面図上で補助投影を追加する場合、上手く正投影の位置に補助投影図を書けない場合があります。

 次回はそういった場合の描き方について観ていきたいと思います。

 なお、繰り返しになりますが、機械製図においては正投影の位置に配置するのが大原則であることは忘れないようにして下さい。

 

 前回までに機械製図における第三角法&投影図の配置を説明してきました。

 ここでは、改めて、主投影図にフォーカスを当てて、主投影図における品物の向きについて見ていきましょう。

  主として機能・使用状態を示す向きに配置〔組立図)

 例えば、下の組立図は、「たわみ軸継手」ですが、組立図では、その目的に示したように、顧客である購入者が製品を備え付けて使用する向きや工場での組立の向きを考慮して配置します。

 例えば変速装置に用いる場合などを想定してた時、モーターとギアボックスを土台に取り付け、振動などによる回転のたわみをここで吸収して回転を伝達するためにそれぞれの間に設置することになります。

 加えて、回転体は軸を横向きに配置すること(※全般としての考え)が一般的であるためこのような横向き配置になります。

 

 

  主として部品製作時の部品加工の向き(部品図)

 一方で、部品図の場合は、工場で実際に部品製造の際に図面を参考にしながら加工するので、以下のルールを考慮した方が実用的になります。

 

 ・加工時の工作機械への取り付け状態

 ・最も多くの工程で配置する向き

 

 一例として、多段付き軸の場合は、下の図の右の図がになります。

  

 これは、次に示すように、旋盤で加工する際には、工具の送りが右から左になるので、段付き加工が多い側を右になるように配置することが一般的だからです。(※段付きの形状や精度によっては、加工手順が変わるため、その点も考慮する必要はあります。)

 

   

 

  全般としての考え方

 また、全般として、以下のような考えで品物の向きを配置します。

 

 ・最も安定する配置(長物や軸は横に配置する)
 ・右側面図に展開しやすい向き(右側面図に形状を投影しやすい向き)


    

 

 

 前回は、第三角法の対象物の配置と投影面への投影手順についてお話ししました。

 その結果、下の図のように主投影図(正面図)を中心に、平面図(上から見た図)、右側面図(右から見た図)がレイアウトされる位置がイメージできる様になりました。

    

 

  三角法にょる正投影図のレイアウト

 それでは、その要領で立体である対象物のすべての投影面を三角法に則って配置してみましょう。

 非常に単純な立方体や長方体のような立体物は、サイコロのように基本的に6つの方向から面を見ることができます。

  

 上図(再録)に示す立体物も凸起や斜面がありますが、基本は6方向(a)から観ることができます。

 これを、前回のルールに従って各投影図を第三角法に則ってレイアウトすると、次のようになります。

  

 それぞれのレイアウトした投影図は、図中に青色で示した名称で呼ばれます。

 これで、すべての方向から対象の品物を観ることができます。

 

  かくれ線のメリット・デメリット

 ちなみに、実際には、裏に隠れた凹凸などの形状は、「かくれ線」と呼ばれる破線で書き込むことで、形状の理解を促進させることができます。

 

※破線:つながった線を等間隔で切断した線、通常は、一定の長さの短い線(約3mm)を一定の間隔(隙間)(約1mm)をとって並べた線

 

 上の図に、かくれ線をオレンジの破線で追加してみると次のようになります。左側面図、背面図および下面図に裏側に隠れた凸起や傾斜の形状がそれぞれ追加されているのが分かります。

  

 しかし、よく見ると、ここで追加したかくれ線で追加した形状は、必ず他の投影図に現れている事が分かります。実際の品物では、内部に隠れているところなどがあり、かくれ線で表現することが必要な場合がありますが、このように他の投影図などで明示的に形状が表現できる場合は、かくれ線による表現は必要最小限に留めるのが通例です。

 それにより、図面をシンプルにし、見づらくなることを防ぎ、分かりやすい図面にすることができます。

また、実際に寸法を入れるのは、外形線(太い実線)が基本となるので、かくれ線はあくまで形状を理解するための補助的な位置づけと言うことを頭に入れておきましょう。

 

  必要な投影図の数と「三面図」

 先ほどから説明しているように、図面は、シンプルで分かりやすいことが重要です。それは、図面に描く投影図の数にも言えます。すなわち、対象物をできるだけ少ない数の投影図で表現することが重要です。

この例では、左側面図の形状はすべて右側面図に表現でき下面図の形状はすべて平面図に表現でき、そして背面図の形状は正面図にすべて表現できています。

 したがって、一般的に対称形状がある機械部品では、次の図のように正面図、平面図および右側面図の「三面図」で表現されることが多くなります。

 なお、今回は図形をベースにお話ししましたが、これに寸法が付記されると、寸法により形状を表現することができるので、正面図の1面だけで表現できる品物もあります。(詳しくは、今後の寸法を取り上げるときにお話します。)

 

 以上で、「第三角法の投影図配置を理解する」の必要最小限のルールは紹介したことになります。

 

 前回は、正投影として対象物の各面から投影図を描き、その形状などから(a)から観た図が主投影図に選ばれ、それに加えて、正投影で対象物の形状をすべて表現するためには、複数の投影図を配置して表現すると言う話をしました。

 ここでは、この複数の投影図を配置する代表的なルールである第三角法について観ていきたいと思います。

 

  第三角法と第3象限

 まず、第三角法について観ていきます。この「第三」というのは、図面を描く対象物をどの「象限」に置くかがポイントになります。

 

 上の図は、数学などでグラフを描く際の座標系のとり方で、学校での数学の教科書などで見覚えがあると思います。

この図のx軸とy軸で区切られたエリアを「象限」といい、「第三」角法では、「第3」象限に対象物を置くことになります。

 前回の対象物を第3象限に置いてみると、次のように見えます。

    

 

  第三角法への投影図への展開

 ここで、対象物の設置が終わったところで、投影図にする時のイメージを加えてみましょう。

投影図が描かれる紙は、正面図は、xy平面の第3象限に、そして、その他の図を描く紙は、それぞれの軸上にあると思って下さい。すなわち、図中ピンクで示されているところに紙があるとイメージして下さい。

 

     

 このように、第3象限に対象物を置くと、その手前に紙をおいて、その向こうにある形状を透かしながらなぞるイメージになります。

 (ここでは省略しますが、対象物を第1象限に置いて同様なことをすると、紙が対象物の奥側に配置され、手前から当てた光で投影された影を紙に描くイメージになります。これが第一角法になります。ちなみにその理屈が分かると、第二角法や第四角法はあり得ないことがわかりますよね?)

 その次に、各軸に並行に配していた面を手前側に引き立てることで、投影図の配置が完成します。

 平面図と右側面図を展開した例を以下に示します。

     

  したがって、そこに描かれていた平面図と右側面図は、以下のような向きに展開されることが分かります。

     

 

  次回に向けて

 今回は、第三角法での対象物を投影面へ投影する手順を説明しました。

 次回は、いよいよこのルールに従って各投影面を配置したレイアウト全体を紹介していきたいと思います。

 (では、次回をお楽しみに・・・)