前回からに引き続き,下に示すハンドルの部品の加工寸法を考えて行きます.

   

 

  取り付けのためのキリ穴を加工する

 取り付けに用いるキリ穴の加工寸法を入れる上での注意点は,取り付け時にどこで位置決めをするかになります.

 今回は,万力の稼働部を押す軸端に取り付けて,ハンドルを回転させることで,軸を動かす構造になるので,スムーズに軸端で動かせることが重要になります.

 組み立てたイメージとしては,下図になります.

 そのためには,下記を実現する必要があります.

 

 1)ハンドルを回転する際に,軸側の切り込み溝と干渉しない.

 2)取り付け側ハンドル端が軸の溝から飛び出て凸起にならない.

 

 1)に関しては,前回加工した21mmの差し込み部のうち11mm(10+1mm)を用いて,クリアランス1mmを作ります.

 2)に関しては,10mmとすることで,軸端の軸半径とあわせることでハンドル端が軸から不用意に飛び出ないようにします.

 その結果,次のような加工寸法が必要となります.

ここで,機械加工での1mmは非常に大きいクリアランスなので,あえて11mmと標準公差付きの寸法を入れる必要はありません.

   

 また,ドリル加工する「4.5キリ」表記は,「φ4.5」と直径指示でも間違いではありませんが,ここでは加工方法として,ドリル加工を指示する意図で「キリ」表記にしてあります.

 次回は,いよいよ今までみてきた加工に必要な寸法をすべて1つの図面に入れ込んで,ハンドルの部品図を完成していきたいと思います.

 前回から引き続き、下に示すハンドルの部品を加工するための寸法記入を考えていきます。

   

 前回までは、加工のための部材を用意するには、外法寸法が必要というところまでお話ししました。

 

  加工ステップに沿って、必要な加工寸法を挙げていく

 次に、ハンドルですので実際に握るときに角があるとけがをするので、端面を球面加工SR12)して丸みを出します。

この際は、端面を加工すればいいので、それぞれの端面基準でハンドルの全長が変化しないように加工するため位置寸法

は端面基準になります。

  

 

  取付部の平面加工

 次に、ハンドルを締め付けねじのスリットに取り付けるために片端に平面加工を行います。

 ここでは、完成寸法として、挟み込み平面部の厚さ(6㎜)ならびに平面部の加工長さ(21㎜)が必要になります。

     

 

 なお、今回の主投影図は、組み立て時の向きを考慮した向きですが、平面をフライスで加工したりすることをメインと考えると、この図の部分投影図に示した向きを主投影図に持ってきてもかまいません。

 

 前回までに,機械設計図面の投影図の基礎をお話ししてきました.

 しかし,形状の表現ができても,実際どのサイズで作れば良いのかはまだ図形だけでは分かりません.これに寸法を記入することで初めて機械設計図面が完成します.

 

  部品図への寸法記入の心得

 

 寸法は,それぞれの部分がどのような大きさになっているかを長さの数値で記入しますが,単に数値が入っていればいいのではなく,その部品の製作手順を考慮して記載する必要があります.

 ここでは,次の写真に示す万力の「ハンドル」の部品を例にしてみていきましょう.

   

 

 この部品に対して主投影図を作図して,寸法を入れたのが下図になっています.

 しかし,この図では寸法は入っていますが,異なる加工方法などがあるにもかかわらず直列寸法表記になってしまっています.

 

【悪い例】

   

 これでは,各作業工程に必要な寸法を現場で計算しなければなりません.

それでは実際に,この「ハンドル」部品を製作する手順をイメージしてどんな寸法が必要なのかみていきたいと思います.

 

  まずは素材の調達!

 部品を製作する際には,まずその素となる素材を調達する必要があります.

 このハンドルは,円柱形状の「丸棒」をベースに加工をしていくので,次のような素材を用意する必要があります.

 すなわち,品物の全長(外法)×直径が必要となります.なお,全長(外法)がカッコの(参考寸法)になっているのは,実際には,荒削り代まで考えて用意するためです.(この辺は現場の職人ベースで対応するのが普通です.)

 

     

 (※右側面図は,形状のイメージが分かりやすくなるように,あえて表記しています.)

 

 次回は,この素材を素に加工順序をイメージして寸法を付加して行きたいと思います.

 

 前回は,補助的な形状表示として,部分的なところを切り出して表現する部分投影を紹介しました.

今回は,更に,部分投影よりも限られたごく一部の形状を示す方法についてみていきたいと思います.

 

  穴やキー溝などの形状表記には,局部投影を活用する.

 前回にもお話ししたように,機械設計図面では,必要かつ十分で,できるだけ簡潔に表現することが望ましいという大原則があります.したがって,キリ穴やキー溝などを表現する際に,その位置と形状を表現しますが,そのために下の図に示すように品物全体を改めて描くのは,工数的にも無駄が出ます.

  

 そこで,ここで改めて必要なキー溝の形状のみを投影することで,前回の部分投影よりも局部的に描くことができるようになります.

 下の図が,その考え方で必要な部分(ここではキー溝が対象)を局部的に形状を表現することができる局部投影になります. 

  

 

  局部投影を使う上での注意点

  前回の部分投影では,品物の部分ごと投影するため,投影の位置関係でどこの一部分か理解ができましたが,,局部投影では,投影する部分が限定されるため,投影元との位置関係を明確にするため,基準になる外径線や中心線などから基準線を延ばしてつなげることで対応関係を明確化することが一般的です.

 

 前回は、補助投影を使って直交しない面の投影図を図面内に配置する方法を説明しました。

 ここで改めて機械工学分野の図面についての大原則として、図面を作成する際には、製品・部品を必要かつ十分で、できるだけ簡潔に表現することが望ましいということを思い出して下さい。

 そのため、必要以外の図は省略したり、できるだけ意味の無い部分は記載しないノウハウがポイントになります。

 今回紹介する部分投影や次回以降に紹介する局部投影、対称図形の省略画法などのテクニックを利用して、それを実現して行きましょう。それにより作図の工数も減らし、簡潔な図面により理解を容易にすることもできます。

 

  例えば、軸の端だけの形状が違う場合

 項目タイトルにあるように軸形状を表現する際に、片端の形状だけ違う場合、まともに全体を投影してしまうと次のようになります。

  

 形状的にはよく分かりますが、実際の図面では寸法を記入するため、平面図(上から見た図)は、右端の切り欠きの部分の寸法を記入する事にしか使いません。

 

  必要な「部分だけを投影する」、部分投影を用いると

 右端の切り欠き部分だけの形状を上からみたいので、「部分投影」を用いると次のように描く部分を大幅に節約できることになります。

  

 

 

  部分投影を使用する際のポイント!

 部分投影を使用する際のポイントは以下に示すように、破断線を用いて省いた部分との境界を明記することが重要です。特に、破断線は必ず外形線から開始して、外形線で終了するように描いて下さい。また、外形線などと区別するために手書き図面の場合はわざとフリーハンドの実線で表現します。(CADの場合はアプリで用意されている破断線ツールを用いて下さい。)

  

 なお、形状の煩雑さによっては、対応関係を明らかにするために基準線を用いて投影図と部分投影図の対応関係を明示する場合があります。(※従来は基準線を描くことが基本でしたが、近年のJISの部分投影では基準線を用いてつなげない手法が基本になっています。)