前回本連載までは、図面自体の種類とその中で必要な記入要素についてポイントを振り返ってきました。

 実際の品物や機械製品では、形状が複雑になるため1つの図だけでその全体形状や構造を表現することは難しいのが普通です。

 そのため複数の方向から見た図を組み合わせて、1つの対象物を明示することを行います。前回の【閑話】クルマの実用寸法でもクルマを「真正面」、「真横」、「真上」からみた3つの図で組み合わせて表現していたのも一例です。

 

  機械設計分野の図面の配置を理解する

 機械設計分野では、コンピュータを用いた三次元CADで設計することが一般的です。

 これはディスプレイ内に実際の現物と同じミニチュアモデルを仮想的に表示して、形状や寸法を調整して図面化していくもので、マウスを用いて向きやスケールを変えながら表現できたり、マウスドラッグで形状の寸法を直接伸び縮みさせながらと直感的に取り扱うことができます。加えて、複数の部品を画面内で組み立てることも出来るため作業の効率化を測ることもできます。

 一方で、製造現場では、直接的に作成者が図面を見ながら品物実体を作成するため、作業者が製造する向きに、実体と同じ寸法・形状で図面が描かれていることが理解を促進させます。

 そのことを踏まえて、ここでは製作図面である「部品図」を例に以下では観ていきます。

(レイアウトの配置自体は、「組立図」でも同様です。)

 

  主投影図(正面図)を選ぶ!

 先ほどから複数の図を配置して、1つの対象物を示すとしました。

 例えばここに示すような形状の品物を考えてみます。あえて斜めからみた(等角図という手法)描き方ですが、これでは、工場の工員さんは実際の寸法がどうなっているか実長がと角度が表現できないのでわかりづらいですね。

 そこで、この からまでの品物の各面に沿った6方向(立体ですので、裏面側からまで含めたら6方向になります)の中で、品物が一番複雑に見える方向を1つ選びます。

 ここでは、aからみた方向になります。試しに、その方向から見た図を描くと次のように見えます。

 

 これが、この品物の「主投影図」または、「正面図」と呼ばれる、品物を表す中心的な図になります。

 

  次回に向けて

 次回は、なぜ、a方向からみた図が主投影図にしなくてはいけないのか?じゃあ他の方向の図はいらないのか?などについて観ていきたいと思います。それを理解するためには、他の方向が正面図だったらどんな不具合が起こってしまうのか?ということを並行して理解していく事が重要になります。(次回をお楽しみに!)