本連載では,製図に必要な寸法の種類について紹介していますが,ここでは,ちょっと閑話として,皆さんがクルマ購入を検討する際に閲覧しているクルマのカタログなどで記載されている寸法について,寸法つながりでみてみたいと思います.

 

クルマのカタログに記載されている寸法 

 上の図は,クルマのカタログなどに記載されている代表的な寸法です.

 先に掲載した【スーパー基礎編】Tips 組立図に必要な主要寸法の意味を理解するに示しているように,外法寸法(全長,全幅,全高ならびに下部のクリアランスの最低地上高)が示されており,車両全体の大きさをイメージすることができます.

 また,それに加え,機能寸法としても軸距(ホイールベース:前輪軸と後輪軸の距離),輪距(トレッド:左右車輪の接地中心間距離)が記入され,車両を転動させる機能を担う車輪の位置関係が分かります.

 通常の購入希望の顧客は,まずカタログなどでこの外寸をイメージしながら,実際の販売店に赴き,展示車両で実際の大きさを確認して,購入契約を結ぶ流れになります.

 

クルマの実用寸法 

 一方で,実際に車両を購入し,街中で使ってみると,前項で説明した以外にも,必要&知っておいた方が良い寸法があります.

 それが,先ほどの図に赤で追加した実用寸法になります

 例えば,①~③は,駐車場でドアを開く際にどれぐらいのスペースが必要か?をイメージすることができます.

  ①両側フロントドアを開いた時の車幅(1段目)

  ②両側フロントドアを開いた時の車幅(2段目)

  ③両側フロントドアを開いた時の車幅(3段目)

 

 また,④,⑤は,先ほどの全長,全幅,全高,最低地上高と併せて機械式の立体駐車場に入庫できるか?などの判断に使えます.特に,カタログの全幅は,ボディの幅で記載されているため,ミラーまで含めた幅の場合は④,⑤を考慮する必要があります.

  ④ドアミラーを含む車幅(ミラー閉時)

  ⑤ドアミラーを含む車幅(ミラー開時)

 

 は,リアハッチバックのクルマの場合,どこまでハッチが上がるかを示しており,屋根付き駐車場などで,天井にぶつけないために知っておくと便利です.

  ⑥リアゲート全開時の全高

 

 ⑦~⑪に関しては,例えば道路工事の段差やコンビニエンスストアなどの道路脇の店舗に入出店する際の歩道の段差乗り越え時に車体下部を接触させないために,ご自身のクルマについて知っておくと良い寸法になります.

 ⑦フロントオーバーハング(長いほどスロープなどでの出入りに注意が必要)

 ⑧リアオーバーハング(長いほどスロープなどでの出入りに注意が必要)

 ⑨アプローチアングル(スロープや段差乗り越え時に注意が必要)

 ⑩デパーチャーアングル(スロープや段差乗り越え時に注意が必要)

 ⑪ランプブレークオーバーアングル(ホイールベースが長い時,車体下部が引っかかってしまい「カメの子」状態に)

実例 アプローチアングルを考えないと,フロントスポイラー下部にガリ傷がwwww

 

 これらの実用寸法は,各完成車メーカーのホームページの製品紹介のQ&Aなどに記載されていることが多いので,ご自身で車両購入する際には,その辺のページにも目を通しておくと良いと思います.

 

今回の閑話のポイント 

 このように,実際の生活の場でも寸法は非常に重要な役割をします.特に,使う人の立場に立って,どんな寸法が必要なのかを日頃の生活の中で注意深くみていることがエンジニアリングセンスを磨き上げる近道になります.

 

 今回は車体の寸法について観ましたが,また閑話の機会がある時には,狭い道路などでクルマを動かす上で重要になる「旋回半径」についても取り上げてみたいと思います.