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第38話/似たもの同士
ジャック・ハンマー対花山薫というドリームマッチが決まった!
試合場を去ろうとする花山をつかまえて、刃牙がこのファイトの意義を語る。流儀を問わないジャックと流儀を重んじる花山の思想対決、宗教戦争だと。
しかし花山はこれを否定する。流儀にこだわらない、それはこだわり、流儀だろうと。刃牙は笑い、美意識対決だと言い換える。花山はそれについてはわからないという。たぶん「美」の語感がむずがゆいのだろう。
後日、光成の家に鎬紅葉がきていて、魚にえさをやりながら会談。なんで紅葉なのかな。元祖美形だからか…。
ともかく、ジャックのようなまねは紅葉にはできない。「だって カッコわるいんですもン」と、くちにするのがどこかはばかられてきたファイターの本音を、紅葉があっさり言う。なるほど、このノリは紅葉ならではかもしれない。バキ死刑囚篇からバキワールドに入ったぼくとしては、紅葉はいつでも「むかしの(すごかった)キャラ」という感じで、いまいちつかみきれていなかったが、少し好きになった。
噛みつきは人間が手にする最初の武器。しかも強力である。本能的に行使される幼児の噛みつきは大人に悲鳴をあげさせる。問題は、カッコ悪いということだけ。なぜカッコ悪いか。いまの説明にあらわれているように、幼児がつかうものだからだ。大人が、無礼とされるタメ口のほうがほんとうは伝わりやすいのに、社会生活上必須とされる常識しぐさでゴテゴテにデコった丁寧語で、取引や接客をわかりにくくしているようなものだ。
このファイトをどうみるかと光成が訊ねる。正反対のようだが、徹底のありかたは類似している、と紅葉。似てるのである。
ジャックの自宅。親子喧嘩のときにも描かれたとおもうが、相変わらず貧乏っぽい。というか、たぶん食事とクスリに全財産使っている感じなのだろう。しかし、彼はいったいどうやってお金を稼いでいるのか?母からの仕送りかなあ。猪狩が面倒見てるっぽいので、ケインみたいな覆面巨大レスラーとかやってそうでもあるけど、もうこれだけでかいと覆面の意味もないし、有名になりすぎちゃうだろうし、こんな生活にはならないかもしれない。
家には花山から贈り物が届いている。木崎の名刺をみて、花山組を「花山薫(あいつ)ノ会社…??」と言っているのがかわいい。
なかみは炙ったレバ刺し2キロ。花山からの差し入れとのこと。
味付けをし、口に入れるなり、溶けてしまう。肉がいいのか調理がいいのかわからないが、たぶんすごい高いやつなんだろう。ジャックは揚げ物のあいだにキャベツをさしこんでくちのなかをリフレッシュさせるみたいにクスリを咀嚼しつつ、あまりのことに脂汗をかきながら、肉を飲んでいく。生まれて初めての、歯を使わない食事なのだった。
つづく
ヤクザ的な精神攻撃なのだろうか…。噛みつきもいいが、噛みつかないありよう=エエカッコしいも悪くないよ…みたいな。
そういえば勇次郎もジャックに、たまにはやわらかいものも…みたいなことを言っていた。
なんというのか、ジャックの生きかたは、勇次郎や花山からみても、なによりまず「キツそう」なんだろう。噛みつき云々、強いんだ云々以前にちょっと心配しちゃうんじゃないかな。わかった、わかったから、でも今日はちょっと、チートデイってことで、やわらかいお肉食べよ…みたいなことかもしれない。
いずれにせよ、ジャックが今回体験したのは、風情もなにもあったものではない噛みつきの露骨さが中和されたエエカッコしいの世界である。花山は、ああいう人間だから、ジャックのこだわりを否定しはしないだろう。では、どのようにこの思想対決は行われるのか。相手の説を否定せず、批判せず、解体せず、どのようにたたかうか。このレバ刺しが花山なりの回答(の予習)なのだ。つまり、「こっちも悪くないよ」
ということなのだ。このアプローチなら相手を否定せずに対立できる。
ただ、それだけではいけない。うますぎるレバ刺しに象徴される「こっち」に属することがどういう強さにつながるのかを、花山はファイトで伝えなければならないのである。
紅葉のいうように、ふたりはその徹底ぶりにおいてよく似ている。ジャックは、こだわらないことによって「噛みつき」という、ある種見捨てられた技術を発掘し、じぶんのものにした。そこにはこだわりは生じている。花山も、どんなファイトでもやりかたを変えない。ただ、やれるところまでじぶんを滅し、持って生まれたものとしての「花山薫」を殺し、迷いのない純白の攻撃そのものになる。たたかいにはいろいろな状況がある。相手のタイプも千差万別である。しかし、花山は、まずおのれとたたかわないことには開始することもできない。ファイトスタイルにこだわるという点で、ふたりはよく似ているわけである。
そう考えると、ジャックの思想も花山らと同一平面で考えることができる。存在しないようにおもえる虚数が、複素化することで代数的にとらえることができるようになるのと似ているだろうか。「ファイターはみんなエエカッコしい」という視点がけっこうラディカルなぶん、ジャックが過剰に異端に見えてしまう面があったが、この解釈なら、刃牙のいうように美意識対決として同時に観察することができるだろう。そしてそれを花山は、相手を否定するものではなく、「こっちも悪くない」という主張でスタートさせたのである。
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第116審/最悪の駆引③
前回は掲載を見落としてしまった。ごめんなさい。
今週はウシジマくんのカラー版電子書籍のお知らせと、例の原画展詳細についてのニュースもあるぞ!東京は3月21日から。ちいかわのナガノ先生とのコラボが山椒みたいに効いている。
本編では出雲と宇治が遭遇したところだ。
前回全財産を聞かれていたが、宇治はすなおに答えたみたい。しかし飯は先輩の出雲がおごると。
高そうな食事を済ませ、店に気を使う身振りをとりつつ、出雲は宇治を誘って外でタバコを吸う。宇治は吸わないがライターはヤクザのたしなみとして持っていたらしく、出雲のタバコに火をつける。
おつとめ中の京極について語られる。京極は読書が好きらしい。なにか本を送りたいがじぶんは読まない(読めない)からわからない、何がいいか?という出雲のはなしだ。司馬遼太郎や菊池寛などの歴史ものが好きだったはずと。司馬はともかく、菊池寛とか、渋いなあ。それからHUNTER×HUNTERの続きを気長に待ってるとも。ある意味、そのへんはふつうの人間なわけである。
続けて、山城弁護士が看守から聞いたとして、部屋では横にならず正面をまっすぐ見たままずっと座っているそうだ。だらだらしないようにじぶんを律しているのだ。
また、ベテランの山城ですら怖くなるときがあるという。焦点があっていないような、ビー玉みたいに異様に澄んだ、ひとを殺したことがある人間の目だ。いちおう山城は、「人を殺めた人間の目と似てる」と慎重な言い方をしている。
出雲は率直に壬生の居場所を宇治にたずねる。宇治は知らないというが、ふたりが同郷であることはすでにバレているようだ。だがそこまで確信があるというふうでもなさそう。ただ嘘はすぐ捲れるとだけ脅しをかける。で、ついでに車ももらうと。先週してたはなしだな。あと、もしこのまま出雲が帰るのなら、結局食事代は宇治が出すことになりそう。
百井という謎の売人とつるんでいる曽我部。百井は砕いた氷砂糖に潤滑油をかけて苦くしている。バカなガキに売るんだと。覚醒剤以外、こういうふうにいろいろ試して遊んで売ってるそうだ。曽我部は、結局はまたこんな状況になってることに動揺しているっぽいが、百井は殴ってきたりはしないからまだそんなにやりにくくはなさそう。ただ、ぜんぶ曽我部に押し付けて逃げそうな雰囲気はある。
九条は烏丸と公園にきてブラサンの散歩だ。楽しい時間を終えて、さあ仕事するかというところを待ち受けていたのは出雲である。
つづく
壬生と宇治が同郷であることをすでに知っていたり、九条を訪れたり、出雲はめちゃくちゃ仕事が早いな。そして、京極をはめたのが誰なのか本気でつきとめようとしているのがよくわかる。
京極は、壬生が、嵐山と取引をして、預かっていた武器を提出したことで捕まっている。いつもならここで九条出陣となる。ところが、これも壬生のわかりにくいはからいで、犬飼への逃亡示唆ということで、九条は告発され、カンモクパイで出てこれたものの、肝心なときにいないという状況になってしまった。こういう流れであってるかな?山城はどういう経緯で出てきたんだっけな。
ともかく、出雲の立ち位置からはどう見えるかということがここでは重要となる。壬生にとって九条の告発は、京極に九条を利用させないようにするとともに、じぶんと九条がもはや絶交関係だということを示す強い手だった。じっさい、ふつうはそうとらえるだろう。だが出雲はどうだろう。できすぎていないだろうか。京極的には、壬生に攻められるとともに、みずからを守る最強の盾としての九条も、壬生に奪われたことになるのである。
これは、九条は徹底的に受け身でいられたことだったし、じっさい壬生から真意を聞くまではピリついてもいた。だから、背後の事情、つまり壬生の戦略について知らないを通すことは可能だろう。壬生の戦略としても、攻めつつ盾も奪うということは、利にかなっているわけで、不自然さはない。壬生と宇治の関係も九条は知らない。出雲としても、たんに近くにいたものとしてなにか知らないか聞きにきただけなんだろう。そして、九条は壬生と会ってはいるわけである。
出雲は、久我の連れを殺したときのように、必要に応じて想像を絶する残虐さを発揮するぶぶんはあるが、基本的には面倒見のいいヤクザである。ただその面倒見のよさは、先天的な優しさとかによるものではなくて、あくまでヤクザ的身振りを出ない。今回の食事では、タバコはダメだろうなとわかっていながら、いちおう聞いて、わかっているという相槌をいったんはさんだうえで外に出ている。なにもいわずに「味に影響するから」とただひとりで考えて外に出るより効果は大きい。このひとは、ヤクザだけど、こちらに気を使って外に出てくれたと、あの大将は感じただろう。前回の愛人っぽい女に対してもそうだ。急に靴を奪い、それを盃ににしてダメにするという行為には暴力性があるし、端的に迷惑である。しかし、非公式とはいえ「盃を交わす」という行為に使ったことからは、女の靴、また女に対してある聖性のようなものを認めている、という読み取りが可能である。しかもそのあと大金を与えて靴を買うようにもしていた。女は、「盃を交わす」という重要な祭事にじぶんの靴なんかを使ってくれたと、迷惑を被っている側でありながら感じたことだろう。
このようなヤクザ的身振りに出雲は包まれている。ひとは、ほんらいただの迷惑行為にすぎない出雲のふるまいを、「面倒見のいいヤクザだ」と読み換えてしまう。だから出雲はモテるし人望がある。久我の連れや闇バイトを処分させたときも、ずいぶん舎弟らを労っていた。しかし、そもそもは、彼がひとを殺そうとしなければ済んだことなのである。出雲は、ヤクザとしてのふるまいを人望で覆い隠すことで、まるで最初から迷惑行為・犯罪行為などなかったかのようにひとびとの認知をコントロールするのである。
これは、モテ出雲とは逆にもおもえる残虐パートにもいえる。果たして、久我の連れは、あんな殺しかたをされる必要はあったのだろうか。あれは、過不足なしに見せしめだったわけである。そしてそれさえも、京極への気持ちと部下へのねぎらいの気持ちを畳みかけることで、透明にしてしまうのだ。
もちろん、彼の京極を慕う気持ちはほんものだろう。しかし、人望という点では出雲のほうがうえかもしれず、もっといえば、あの過剰な京極ラブ描写からして、彼は「京極を慕う」という身振りさえ、じしんの人望の糧にしているようでもあるのだ。彼にはそんなつもりはないかもしれない。だが、出所してすぐ、京極のかえしだけを考えているかのようにふるまうさまからは、あざとさも見え隠れするわけである。近くにいるものには見えないあざとさだ。遠くから見ていても、以上のようには感じないという読者も多いだろう。しかし彼がその京極をいちばんに考えるという身振りによって人望を獲得していることはおそらくまちがいないのである。
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第115審/最悪の駆引②
不覚…。前回掲載時に次回10号掲載と書かれていたため、特に本誌を確認せずにいて、8号掲載の第115審を見落としていました…。やばい、刃牙もあるし一気にたいへんになってしまった。ざっとで…。
久我の連れが主犯で京極宅に侵入した、たぶん闇バイトの連中の死体を処分した若い衆が陸に戻ってきたところだ。出雲は彼らをねぎらい、あとで合流するようにいう。
その出雲がクラブで酒を飲む前には、百井という売人と、なんと曽我部がいる。どういう経緯かわからないが、出雲が酒に誘うくらいだから、百井もそうとうキレものなんだろう。
その前に描かれた九条、烏丸、薬師前のやりとりで、出所したはいいが心配されていた曽我部だが、薬師前の予感通り、百井はやたら堂々としているが、曽我部はビビりまくりだ。
京極が出てくるまで面倒をみてやるということなので、ひょっとすると百井はもともと京極のもとで働いていたのかもしれない。出雲はそばにいた嬢に靴をぬがせ、それを盃にして酒を飲み合う。盃を交わしたな、と出雲は確認するが…。こんなことで、ヤクザです、ってなるのかな?
いきなり靴を汚された女は、大金を渡されて、喜んで出雲とともに裸足で帰宅するのだった。
別の日、約束通り出雲は戻ってきた宇治と合流する。久我は宇治の側に立っている。
宇治はめちゃくちゃに稼いでいる。兄貴分よりいい車乗ったらだめだろと軽くいわれ、差し上げますと、宇治も軽くいうのだった。
つづく
やれやれ…。まさか読み飛ばしてるとは…。車にかんしてこういうやりとりがあったのね。次話であっさり出雲が車持ってくからびっくりしちゃったよ。
ウシジマくんでも、舎弟が兄貴分を強く慕い、命をかける姿はたくさん描かれてきたが、出雲はその系譜、しかもそうとうな強者だ。あの女の靴を盃にすりくだりからは、唐突で暴力的ながらいちおう、彼女を神聖な存在として扱っている感じがみえる。曽我部のスニーカーで盃を交わさないよねということだ。なんだろうね、モテそう。
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花山は自己を滅する。相手の攻撃を通じて、花山を花山たらしめるもの、授かったものをすべて殺す。そのとき、武蔵がいうように、彼は仏のような存在になる。彼の動作からはいっさいの「花山薫」が消え去る。主語があり、述語がある、人間の行為状況から、主語が消え去る。そうして、彼はついに述語そのもの、攻撃そのものになって相手を打ち砕くのである。
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