こんばんはー

白瀬です!

昨日はワイン赤白3杯ずつ飲まされて

久々のワインに酔っ払って後書きアップせずに寝てしまいましたアセアセ

 

ということで、パソコンをようやく買い替え、

念願の新作、しかも仁絵のお家話!!

アップできました~~~爆  笑

素直に嬉しい照れ

 

「高校生になっての仁絵の甘々モード」

「風丘と仁絵のお家での様子」

「スパに絡んでくる実嵐」

この辺りの要素を取り入れました。

 

仁絵の甘える様子は、

高校生になって中学生の初期ほどあからさまではないけど、

でもやっぱり根本的には変わらないから甘えてる、って

様子を表現したかったんですけど…汗うさぎ

きっとなかなか伝わらないからここで補足説明するっていう(笑)

前回の高校上がる直前のお話(37話)と立て続けに試みて

失敗してる気がします…あせる

今回は単純に甘えん坊の糖分足りなくない?って感じになってる気がして、

ここは結構書き方試行錯誤したんですが、

表現力不足… 精進します。。。

 

というか、スパが全然甘くない…というか

普通に厳しいのも原因な気がするよ、風丘←え

まぁでも、食べ物粗末にするのは良くないですね。。←作者なのに他人事

一時の感情爆発で食べ物捨てちゃうのは

お気づきの方いないと思いますが花月オマージュ(?)です笑

 

最後に実嵐を絡ませたのは作者の趣味です笑ううさぎ

ちなみに朝しっかり風丘に叱られてますが、

ちゃんと言うこと聞いて1回で止めたので

朝思いっきり5発平手もらって許された設定です笑

書くほどいろいろあったわけでもないので、

ここで明かしておきますにっこり

 

さて、次回ですがTwitter(白瀬は「Twitter」派なので

これからもTwitterといいます笑)でも呟きましたが、

スパシーンリハビリでゆるゆる書いた

惣一・つばめのショートストーリーを上げて、

年内のお話更新は終わりになるかと思います。

めっちゃショートなので期待せずにいていただけると笑

もう粗方書き終わってるので、明日あたり上げられると思います。

 

メガネ教師、今後のお話はまたネタ帳から探してくるので

まだ何も決まってません汗うさぎ

仁絵は次書くとしたら、最近学校外の話が続いてるので

学校での話にしたいなーと思ってますが、

順番的にも夜須斗メインでキーになるお話にしたいな、なんて

ぼんやり思ってる程度です。

あと、これはTwitterで呟きましたが、

番外編として大人組がプチ同窓会開いた時の会話劇を書いてます。

まぁこちらはTwitter垂れ流しでもよいレベルのネタ枠なので

もしあがったら、あぁ、あれか、程度に思っていただけると。。

 

あ、あとこれもTwitterでちらっと言いましたが、

謎のK-POPアイドルのコントキャラから着想を得た二次創作、

なんだか勢いで筆がのってしまって書き終わり間近なのですが←

こっそりご質問いただきましたが

あげるとしてもstさんと同じように、

パスかけてプライベッターだと思います。

(あまり手出してきてないのでわからないのですが、

結構荒れやすい界隈のイメージ汗うさぎ)

 

それからスペースをやりたいと思います!

以前アンケートでキャスとスペースどっちが良いですかね、

と聞いたところ、スペースが若干(かなり若干でしたが)多かったので、

今回はスペースにしてみようと思います。

年末年始で考えているので、日程またアンケートをTwitterに流しますね。

スペースは鍵垢ではできないので、やってる間だけ鍵を外す予定です。

 

それから、最近質問箱をたくさん答えたり、

お話の感想も質問箱でいただいたのを返したりしています。

どちらか良いですか?と聞いていただいたのですが、

もちろんブログのコメントで感想いただけるのも嬉しいですし、

どちらでも大丈夫ですウインク

ただ、アメブロの仕様なのか謎の広告コメントも結構くるのと、

質問箱のが通知が来る⇒内容を見る⇒Twitterで返事する、という流れが

スマホでスピーディーにできるかもしれません。

…返事が来ないのはどちらにしろ白瀬の怠惰が原因です、すみません泣くうさぎ

全ての感想やご意見はありがたく読ませていただいてますあせるあせる

 

ただ、白瀬の生態を知りたい、という奇特な方は、

Twitterのがブログよりもちびちび呟いているので、

フォローしていただけると良いかもしれないです←謎の上から目線

「@tsubameshirase」がアカウント名です。

ただ、最近謎のステマ的捨て垢みたいなのからめっちゃフォロリクがくるため、

ちょこちょこ見ているつもりなのですが、

フォロー許可されないビックリマークという方はすみません、

DM(メッセージリクエスト)送っていただけると助かります。

 

それでは長々といろいろ失礼いたしましたあせる

今年も残り少しですが、引き続きよろしくお願いいたします!!

「はい、じゃあお膝おいで。」

 

「っ…」

 

連れてこられたのは仁絵の寝室で、風丘は早々にベッドに腰掛けて膝を叩いた。

 

仁絵がお仕置きを受けるのはかなり久しぶりだ。

風丘の繁忙期中は、どれだけ大変な生活かを間近で見てきているから、

学校でも家でも、余計な仕事を増やさないように

かなり気を遣って生活してきていた。

そもそも特に家においては、風丘は元々緩いし、

2年ほど生活してきて、どんなことで風丘が怒るのか分かってきたので、

家でお仕置きされる、という状況は気を遣わずともあまりなくなってきてはいるのだが。

 

「……」

 

久々故に恥ずかしくて、仁絵は一歩も動けない。

寝室のドアの前で立ち尽くす仁絵を、風丘がもう一度呼ぶ。

 

「仁絵。おいで。」

 

「…やだ…」

 

風丘の再度の呼びかけにも、仁絵はぽつりとそう零して動かない。

行かなければどうなるかは重々承知だが、

久方ぶりのこの状況に、素直に従えず抗ってしまう。

 

風丘は風丘で、(これはやっぱりお久しぶりな駄々っ子モードかな)と

リビングから寝室まで連れてくる時から

仁絵の甘えスイッチがほぼ入りかけていたように感じた自分の勘が確信に変わり、

内心苦笑しながら長期戦を覚悟したのだが、仁絵はそんなこと知る由もない。

 

「あと3つ数える内に来れなかったら、お尻ぺんぺん100回確定ね。

来れたら、50回にまけてあげる。はい、いーち。」

 

とにかく動くきっかけを与えてあげようと、風丘は無情なカウントを宣言した。

 

「やっ、待って…」

 

「待ちません。にーぃ。」

 

どう考えたって行った方が良い。50回と100回なんてすごい違いだ。

仁絵だって分かってはいるものの、

あからさまに風丘に作ってもらったきっかけで

今更言われたとおりに動くのも葛藤があって、なかなか動けない。

ようやく数歩踏み出した時には

 

「さん。」

 

カウントが終わっていた。

4歩ほど元居た場所からは進んだが、

風丘が手を伸ばしてもまだ少し仁絵に触れられないくらいの距離がある。

 

「もう…ほら、いつまでも駄々っ子してないの。」

 

「わっ…待ってやだっ…」

 

風丘はおもむろに立ち上がると、

あと少しだった距離を詰めて、仁絵の腕をつかんで引っ張り込んだ。

そこからはもう慣れたもので、

仁絵の抵抗をものともせず膝に固定し、履いているものを全ておろす。

 

「さぁ、じゃあ100だね。」

 

バチィィンッ

 

「いったぁっ」

 

家でのお仕置きで、(仁絵としては無意識だが)甘えモードに入っていることもあり、

仁絵は1発目から音を上げた。

しかし風丘もこうなることは織り込み済みで、動じずに罪状を並べ立てていく。

 

「食べ物粗末にしたこと、」

 

バチィンッ

 

「あぁぁっ」

 

「みらちゃんの録画消して黙ってたこと、」

 

バチィンッ

 

「いたぃぃっ」

 

「素直にお膝に来れなかったこと、」

 

バチィンッ

 

「うぅぅっ…」

 

「それから…」

 

風丘が一呼吸おいて言った。

 

「自分のこと下げて傷つけたこと。」

 

「え…」

 

最初の3つは自覚していたが、これは無自覚だった。

風丘が続ける。

 

「『自分の料理なんか』とか言ってたね。自分の作った料理を捨てることもそう。

仁絵自身でも仁絵の心を傷つけるようなことは許しません。」

 

「っ…」

 

指摘されて何も反論できない。

確かに、あの言葉を言った時、卵を捨てようとした時、

心がモヤモヤしたのを感じたのを自分自身がよく分かっている。

あのモヤモヤは、心が傷ついていたのだろう。

 

そして、身を固くする。経験上、この罪状は風丘が一番嫌うものの一つ。

 

風丘は、仁絵の予想通り、ひときわ高く手を振り上げた。

 

バッシィィンッ

 

「あぁぁっ!? いっ…ぅぇ…」

 

とはいえ痛い。お尻に真っ赤な手形がついて、仁絵の涙腺は早々に決壊した。

ぐすぐす泣いているが、

しかし、仁絵がいくら甘えモードでも風丘のお仕置きは甘くない。

 

「反省しなきゃいけないこといっぱいだねぇ。

それじゃ、久々にたっぷりいたーいお尻ぺんぺんしなくちゃね。」

 

「ぅぇ…ふぇっ…」

 

赤い手形の上からお尻を撫でながらの穏やかに恐ろしい一言。

そのお尻を撫でる手が離れた時…

それが、厳しいお仕置きタイム幕開けの合図だった。

 

 

 

 

 

バシィィィンッ バチィンッ ビシィンッ バチィィンッ バチィィンッ

 

「あーっ いたいっ うぇぇっ…いたいぃぃっ…」

 

緩急織り交ぜられた厳しい平手を間髪入れずに容赦なくお見舞いされ、

仁絵はなりふり構わず大泣きだった。

 

バシィィンッ バシィィンッ ビシィンッ バシッ バチィィンッ

 

「ひぅっ…あ~~っ! いたいっ ひくっ…いたいってばぁっ…」

 

「言ったでしょ。たっぷりいたーいお尻ぺんぺんだって。まだ45回だよ。

先は長いねぇー。」

 

「やだっ…ふぇっ…もうやだぁぁ…」

 

この痛みでまだ当初の50回も到達していないこと、

カウント内に素直に膝に行っていればあと5回で終わったのに、

あと5回我慢してもまだ半分しかいっていないこと、

絶望的な事実を突きつけられ、仁絵が更に泣くが

風丘は、そんなにやだやだ言っても聞きません、と更に平手を落とす。

 

バチィィンッ バチィィンッ バチィィンッ

 

「うぁぁっ…いったっ…うぅぅ~~~」

 

バシィィィンッ バッシィィィンッ

 

「あぁぁぁっ!? 待って、ちょっと待ってっ、すとっぷっ…」

 

「あー、こらー、手出したな?」

 

ちょうど半分の50回目、今日一番とも思えるいたーい1発に、

仁絵は思わず手を出して庇ってしまった。

庇ってしまったからには後戻りできなくて、

手をそのままに風丘に待って、と真っ赤な目で訴える。

 

「待たないよ。これは…最初からやり直しかな?」

 

「やだっ…待ってやだっ…」

 

とんでもない言葉に、仁絵は慌てて手をどける。

そんな滅多に見られない必死な様子に風丘は内心かわいいなぁ、と笑いながら、

口からはさらに意地悪い言葉。

 

「素直にお膝に来れなかったこともお仕置きの罪状なのに、

そのお仕置きの最中にお尻庇っちゃうんだもんねぇ…

さっきからやだやだばっかりだし、

お仕置きいい子に受けられるようになるまで

カウント止めてお仕置き付きのお仕置き受ける態度のレッスンしようか。」

 

「やっ…ちがう、あっ…待って、」

 

また「やだ」と言ってしまいそうになって慌てて口をつぐみ、言い直す。

 

「もうしなっ…もうちゃんとするからっ…つ、続きにして、

ふぇっ…ごめんなさいっ…

すぐいかなかったのも、手出したのもっ…」

 

必死すぎて無意識なのか自然に「ごめんなさい」まで出た仁絵。

縋るようなその様子に、風丘は虐めすぎたな…と少し反省して、

仁絵の乱れた髪を整えながら分かった、と頷いた。

 

「じゃあ、さっきの50回目だけもう1回。

次庇ったらほんとに一旦カウント止めるからね。あぁ、あと…」

 

「!?」

 

このタイミングで、風丘は足を組んだ。

まさかの展開に仁絵が固まると、風丘はにっこり一言。

 

「さっきの倍は痛いのいくから頑張って。」

 

「っ…」

 

仁絵が息をつめたその瞬間。

 

バチィィィィンッ バッチィィィィンッ バッチィィィィンッ

 

「いたぁぁっ…ふあぁっ!?…ふぇっ…いたぁぁぁぁぃっ!」

 

もう手を出すわけにいかない仁絵は、シーツを握りしめて耐えようと必死に身構えた。

そこへ1発落とされて、何とか耐えたと思ったら、

それを超える2発が立て続けに降ってきたのだ。

 

いきなり膝を組んできた上に、

どう考えてもとりあえず1発であろう展開でこの仕打ち。

なんとか耐えたものの、

これで仁絵が手を出したら「レッスン」が始まっていたかと思うとなんてドS。

お仕置き中でなければ確実にバカ鬼悪魔とか叫んでいた。

が、口に出したらどんな恐ろしい展開が待っているかわからない。

 

仁絵が泣きながら頭の中で風丘への悪口を次々と思い浮かべていると、

突然頭を撫でられ、ふわっと抱き起された。

 

「うぇっ…?」

 

「ふふっ…あー、ダメ、可愛すぎ、あはははっ…」

 

風丘の膝の上で抱き上げられているような体勢で顔を覗き込まれた。

目が合った瞬間、風丘に思いきり笑われ、

仁絵の頭の中は悪口に替わって一瞬で?に埋め尽くされる。

 

「予想通り、『このドS、鬼、悪魔』って顔してるね。」

 

「なっ…ちがっ…」

 

あっさり見透かされ焦る仁絵に、

風丘は、いいよいいよ、とクスクス笑いながら続けた。

 

「まぁ、ちょっと虐めすぎちゃったしね。

口に出したわけじゃないし、ちゃんと手出すのも我慢してたし。」

 

「んっ…」

 

また頭を撫でられ、それで?と問われた。

 

「ちゃんと反省できた?」

 

「ん…ごめん…なさい…」

 

風丘の問いに、仁絵が俯いてぽつりと言うと、

風丘は仁絵の頬を両手で包み、顔を上げさせた。

 

「…よし、じゃあお仕置き終わりかな。」

 

「え…っ」

 

目を合わせてにっこりと微笑まれ、仁絵が目を丸くすると、風丘が可笑しそうに笑う。

 

「なーに、嬉しくないの?」

 

「だって100って…まだ50…」

 

「まぁ、足組んで今までよりいたーい平手にしたから1発で15発くらい換算?

不意打ちの精神攻撃も含めて。

で、あと5発分は…」

 

風丘は仁絵のおでこをつん、と人差し指で突いて笑った。

 

「みらちゃんに正直に言って謝ること。

あの様子じゃ、俺がみらちゃんと出掛けちゃったからわざと消したんでしょー。」

 

「う…」

 

幼稚な行いをズバリ指摘され、仁絵が恥ずかしさに目をそらす。

 

「もう。嫌がらせもかわいいんだから。

でもちゃんと謝らなきゃダメ。お約束できる?」

 

「…うん。」

 

「はい、じゃあお仕置き終わりっ 頑張ったね~~」

 

「ふっ…うぇっ…ふぇぇぇぇぇっ」

 

風丘のその一言と笑顔で、仁絵の感情は箍が外れて爆発し、

風丘に大泣きで抱き着いた。

お仕置きが終わってホッとしただけでなく、

ここ数週間風丘と過ごす時間が減っていた

寂しさも(もちろん仁絵は無意識だが)あるのだろう。

そんな仁絵を、風丘はニコニコ受け止める。

背中を撫でながら、ありがとね、と仁絵に優しく語り掛ける。

 

「みらちゃんも絶賛してたけど、ご飯、すっごく美味しかった。

わざわざご馳走作ってくれて。それも嬉しかったし、

あと、忙しい間気遣って家事とか全部やってくれるのも、本当にありがとう。

いつも助かってるよ。」

 

「っく…っうん…」

 

風丘の肩に額をのせて、仁絵が恥ずかしそうに頷く。

あぁ、あとそれから…と風丘が笑う。

 

「俺が忙しい間、必要以上にいい子になろうとしなくていいんだよー?

構ってほしいなら、かわいい悪戯とかおっちょこちょいくらいしてもいいのに。

ちょっとしたお尻ぺんぺんなら俺も気分転換になるし?」

 

「なっ…なっ…」

 

まさかお仕置きされないように気を遣っていたことも見透かされ、

それを指摘されからかわれ、

仁絵は恥ずかしさに耐えられず真っ赤になって絶叫した。

 

「風丘のバカァァァァッ」

 

 

 

 

 

 

 

あの後少しお尻を冷やし、なんとか仁絵が落ち着いて二人でリビングに戻ると、

空城がソファに寝転んでスマホを眺めていた。

二人に気付くと、スマホをローテーブルに置いて起き上がる。

 

「お、終わったー? 買い出しから戻ってきてもまだ降りてこないからさぁ」

 

でも泣いてる声とか聞こえなかったな…と一人考え込む空城に、

お仕置き中の声は聞かれなかったらしいことに仁絵はホッとしつつ、

今日はぐずぐずになってしまったから回復までにだいぶ時間がかかり、

そのことを風丘が触れないかひやひやする。

 

「終わった後、ちょっと話し込んじゃって。」

 

「ま、そーだよね。あ、ねぇねぇ、それでさっ」

 

「あの、空城…」

 

風丘の雑な説明にあっさり納得した様子の空城が買い出しの袋を手にしようとした時、

仁絵が空城に声をかける。

 

「さっきの録画の話…あの…」

 

「あぁ、そうそう、それが…」

 

「俺がわざと消した…ごめん…なさい…

なんかあの…二人で出掛けてったあとなんか…」

 

むかついて…と説明しながら、

我ながらなんて恥ずかしい理由だと仁絵の語尾がどんどん小さくなっていく。

そんな仁絵を見て、一瞬きょとんとした空城は、話を理解したのか豪快に笑った。

 

「アッハハハハ、なんだやっぱそーゆーこと!

よかったー、いや、やっぱほら、あの瞬間はなんで!?って思ったけどさ、

あの後時間置いて冷静になればなるほど、

そんなに仁絵に嫌われるようなことしちゃったかなとか

なんかもっと悪い方向に考えちゃってさ。

なんだなんだ、葉月の家族に嫉妬してもらえるような存在になれてるってことなら

喜ばなくちゃな! 

花月ちゃんはあんまり私に対してそういうの出さないからさー。」

 

空城からさらっと風丘の「家族」と言われ、

訂正しようという気持ちより嬉しさが勝る。

仁絵が風丘の約束を果たし、空城にも許してもらえそうでホッとしていると、

それでねそれでね、と空城が続ける。

 

「もう放送から1週間経ってたからあきらめてたんだけどさ、

特番だからかまだ配信残ってるんだよね!

ってことで、おつまみも追加のお酒も買い出ししてきたしっ 見ながら飲も!

葉月ももう飲めるでしょ?」

 

「フフッ、そうだね。そうしようか。」

 

こうして、3人仲良く団欒、大団円、となるはずだったのだが…。

 

 

 

 

 

「っていうか、私が録画消されたんだから、

私だって仁絵にお仕置きする権利あるんじゃないのー。」

 

「え…」

「もー、みらちゃん? 仁絵君はもうそれ謝ったでしょ。」

 

酔った空城がとんでもないことを言い出し、

仁絵は自分が悪いのは重々承知なので反論できずに固まり、

風丘は苦笑して水の入ったグラスを空城に差し出す。

 

一人夕食の時から飲んでいる上に好きなテレビ番組を見てご機嫌だった空城は

もうだいぶ出来上がっていた。

気に入った番組はディスクにダビングしたりして残しているから、

配信で見れるとはいえ、消された惜しさはやっぱり残っているのだろう。

酔っ払って本音が出てきている。

 

「飲みすぎだよ~? ほら、お水飲んで…」

 

「私にもちょっと叩かせろ!」

「え…あっ」

「あ、こらちょっとみらちゃ…」

 

風丘の制止も聞かず、空城は仁絵の腕を引っ張った。

空城は一般的な女性より力が強い。

そして、酔っぱらいは力の加減ができない。

空城とはいえ女性相手、

しかも自分に後ろめたいことがある状況で抵抗できなかった仁絵は

あっさり捕まってしまった。

そして…

 

ベシィィィィンッ

 

「っあぁ~~~~っ…」

 

数時間前にお仕置きされたばかりのまだ赤く腫れているだろうお尻に、

服の上とはいえ、恐らく全力の平手を食らった仁絵はその場に崩れ落ちる。

しかし空城は、今度はそんな仁絵の腰を抱えようとしてきて、

仁絵がさすがに勘弁してくれと風丘に助けを求めようとした時。

 

「実嵐? その辺にしておかないと明日の朝もっと後悔するよ?」

 

風丘の低い声で、空城が動きを止めた。

冷たい嫌な空気がリビングに漂う。

 

「も、もー、やだなぁ、冗談だよー」

 

その一瞬で酔いが少し落ち着いたのか空城が仁絵から離れ、

風丘からの冷たい空気も薄まり、仁絵もホッとする。

 

「って…」

 

お尻を擦る仁絵に、風丘が申し訳なさそうに背中をポンポンと叩く。

 

「ごめんね、仁絵君。大丈夫?」

 

「まぁ…俺悪かったし…でも酒癖悪すぎ…」

 

しかし結構なことをやっておいて、

空城はもうけろっとテレビの前に戻って大笑いしている。

 

「今日はなかなか飲んでるねぇ…」

 

外じゃこんなことないんだけど、という風丘の言葉。

楽しそうにケラケラ笑う空城を見て、二人して苦笑するしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「おはよー…」

 

「…はよ。」

 

その夜は結局空城も泊っていったのだが、

翌朝、起きてきた空城が朝食を食べるとき、

心なしか椅子に座るのを躊躇していたように見えたのは、

知らなかったことにしよう、と

昨日の空城との出来事も含めて一連の記憶を消そうと試みる仁絵なのだった。

7月に入り、期末テストも終わり、

仁絵たち学生が夏休みまでのカウントダウンを始めている一方、

風丘たち教員は、大繁忙期の真っ只中だった。

 

6月末の期末テストの作成、丸付けからの1学期の成績付けという流れは、

恒例とはいえ、どんな教員も慌しくなる。

風丘は教員としてはかなり要領のいい方で、

普段はあまり残業や休日出勤もせずに業務をこなしている方だが、

この時期は例外だった。

個人情報の取り扱いが厳しい昨今、

生徒のプライバシーに関わる一切の情報は持ち出せないため、

夜遅くや土日も学校で成績つけの作業が続く。

家になかなか帰れないため、

この期間は家事の一切を仁絵が担うのも恒例化していた。

 

風丘と暮らしてもう何度目かのこの毎学期末のルーティンにも慣れた。

むしろ、普段あまり頼ってくることのない風丘が、

この期間は申し訳なさそうにしながらも仁絵を頼ってくれることが、

なんとなく嬉しかったりもしている。

 

とはいえ、仁絵たちが高等部に上がって初めて…

すなわち、風丘が高校教員になってから初めての学期末、

以前にもまして忙しそうなのは気のせいではなかった。

 

というのも、風丘は、高等部の世界史の教員と並行して、

何クラスか中等部の社会科も引き続き教えていたのだ。

経緯を聞くと、元々高等部の社会科教員の枠が一枠空く関係で、

クラス担任とともに世界史の教科担任として風丘がスライドすることになり、

風丘が高等部に上がる分、

元々もう二人いた中等部社会科の教員と、

もう一人異動してくる社会科教員の三人で中等部を回すはずが、

元々いた二人のうち一人が親の介護で急遽休職となってしまったそうだ。

追加補充を試みたが、

風丘曰く、「教員不足の世の中だからねぇ」ということで見つからず、

結局風丘が高校の世界史の間を縫って中等部に出張している状況になっていた。

普段の授業については、去年まで中等部で教えていたこともあり、

特に問題なさそうだったのだが、

テストと成績付けは単純に対象の生徒数が爆増しているのだから、

作業量も増えている。

気付けば、テスト期間を終えてから、

仁絵と風丘はほとんど夕食を共にしていなかった。

それどころか、仁絵が一人で夕食を食べ、風呂を終え、

あとは寝るだけの状態になってなお、風丘が帰ってこないこともザラだった。

そんな時、仁絵は意地でも先に寝ない、と決め、

帰宅後の風丘の世話を焼くのだった。

 

 

 

「よーやく今日で終わりだー」

 

金曜日の朝。

さすがに目の下の隈がだいぶ目立ってきた風丘が、伸びをして言う。

 

「良かったじゃん。もう終わってんの?」

 

控えめにご飯を盛った茶碗を風丘の前に置きつつ仁絵が問うと、

風丘はありがとう、と受け取ってまぁ大体ねー、と苦笑する。

ゆったりと茶碗を持って、仁絵と会話する余裕があるということは、

今日は大丈夫そうだ。

仁絵は風丘の様子を見てホッとする。

 

朝食も、最後の追い込みであろう今週になってからは

風丘が「ごめんね、今日ちょっと先に出るね」と宣言して

猛スピードで平らげて先に席を立ってしまう光景が続いていた。

それでも仁絵の作った朝食は完食してくれるのだが、

とはいえ昨晩あんなに夜遅くに帰ってきて、

翌朝もこんなに早く出ないといけないとはどういうことだ、と

いよいよ腹立たしくなってきていたところだった。

 

「今日はラスト放課後軽くチェックして、提出してくるだけかなー。

今回はさすがに締め切り当日になっちゃった。

ごめんね、今日から家事の当番元に戻せるから。」

 

「いいよ。キリ悪いし次の日曜日からで。今日は帰ったらとっとと寝ろ。」

 

「えー、でも…」

 

「いいっつってんじゃん。」

 

「…じゃあ、お言葉に甘えるね。」

 

「ん。」

 

こうして、久々に会話のある朝食の時間を過ごし、

繁忙期前のように、風丘が少し先に家を出て、続いて仁絵が家を出る、

いつもの朝となったのだった。

 

 

 

「んー、今日の夜は軽いものにして、明日ちょっと奮発するかぁ…」

 

放課後、主婦が群がる夕方を避けて、早々にスーパーに立ち寄った仁絵。

 

金髪のいかにも「不良高校生」という仁絵が

買い物かごを手に野菜や肉を見ている姿はやはり目立つもので、

奇異な目で見られるのは日常茶飯事だった。

多少なりともその居心地の悪さをどうにかしたくて、

仁絵が買い物に行くのは学校が早く終わる日の午後3時頃か、

夜7時過ぎと決めていた。

 

今回の風丘の忙しさはこれまでとは桁違いだった。

それをずっと見てきた仁絵は、いままでそんなことしたことなかったが、

さすがに今回は労わらなければ、と

先週くらいからこの週末はちょっと頑張った料理を作ろうと思っていた。

 

鮮魚コーナーと精肉コーナーをうろうろし、

魚は処理が難しいし…豪華な料理といえばやっぱり肉か、

とはいえ、働きづくめでやっと解放された今日、

いきなり豪華な食事は負担がかかるだろうから、明日の夜にしよう…、と

そんなことを思いながらブロック肉を吟味する仁絵の姿は、

主婦も顔負けの様相だった。

 

 

 

スーパーから帰宅後、すぐに仁絵は食事の支度にとりかかった。

悩んだ末に買ってきたブロック肉は、

明日の夕食のメインディッシュとなるローストビーフにする。

寝かせる時間もあるので、1日空くのがむしろ好都合だった。

結構手間をかけて仕込みをして、ようやく形になったタレに漬かったブロック肉を、

冷蔵庫の奥の方に置く。

その後、今日の夕飯のスープパスタの準備に取り掛かった。

 

 

 

「ただいまぁー。」

 

「おつかれ。結局今日も遅めじゃねーかよ。」

 

夜7時半ごろ。

帰宅した風丘に、よく今日から当番戻そうと言えたな、と

仁絵が苦笑いで風丘を出迎える。

 

「ごめんごめん、最後ちょっと手直し入れちゃって。

いい匂い~ 何か手伝おうか?」

 

「もうパスタとスープ合わせるだけだからへーき。

着替えてきて、とっとと食おうぜ。」

 

仁絵に促され、風丘もはーい、と素直に返事をした。

 

 

 

「祝杯でもあげる?」

 

着替えてきた風丘に、冷蔵庫に入っていた缶ビールを手にして仁絵が問うと、

風丘はんー、と少し悩んでやめとくよ、と笑った。

 

「寝不足の体でいきなり飲んだら胃がびっくりしてすごく酔っちゃいそう。」

 

「そしたら動画撮った後に介抱してやるけど 笑」

 

「それは尚更飲めないなー」

 

こんな軽口の言い合いも久々な気がする。

シーフードのスープパスタにサラダという軽い夕食だったが、

ここ数週間で一番満たされた夕食だった。

 

 

 

「風丘、明日はー?」

 

夕食を食べ終え、早々に風呂に入って出てきた風丘。

ここ数週間は髪の乾かし方がいつもより雑だったが、それは今日も変わらなかった。

やはり一刻も早く寝たいのだろう。

 

「さすがに家でゆっくりするよ。

当番明日まで変わってもらっちゃったから、ごろごろしようかな。」

 

「ん。わかった。ごゆっくりー」

 

「ありがとね。おやすみ。」

 

「おやすみー」

 

早々に部屋に引っ込む風丘を見送り、仁絵も風呂に向かう。

明日1日ゆっくりするなら、夜にはしっかり食べられるだろう。

土曜の夜だから、その時さっきの缶ビール出すか…

湯船につかりながら、明日のプランを決めた。

 

久々に長時間料理をしたこともあり、

仁絵も風呂から上がると、充実感で珍しくスマホをいじることもなく

すぐに眠りについたのだった。

 

 

 

翌日土曜。

 

昨日の言葉通り、風丘はもうほぼ昼前の11時頃に起きてきて、

仁絵と二人でブランチを食べ、

その後はリビングのテレビの前のソファに腰掛けて、

溜めに溜めていた録画番組を消化すべく物色していた。

仁絵もローテーブルに突っ伏してスマホを眺めつつ、たまにテレビに目を移す。

風丘が録画するのは映画が多い。

普段は音楽番組やドラマも人並みに見ているが、録画するほどではなかったようだ。

 

1本、地上波初放送の話題の洋画を見終わり、時刻は3時過ぎ。

風丘が次の番組を漁り始めて、

仁絵はそろそろ洗濯物を取り込むか、と腰を上げた時だった。

 

「葉月~~~~~!!!!」

 

「あれ、みらちゃん、今日は仕事じゃなかった?」

 

空城が飛び込んできた。

 

「だってようやく葉月の繁忙期終わったじゃん、午後休暇もぎ取ってきた!

ね、この後どっか出かけようよ! 夜は美味しいもの、私が奢るから!」

 

「えぇ!? すごいいきなりだねぇ…」

 

「…。」

 

まさかの横槍に、一瞬仁絵の中の時が止まる。

そんな仁絵の様子を知ってか知らずか、風丘が嬉しいけど、と言葉を濁す。

今日は…と風丘が口を開いた瞬間。

 

「いいじゃん、行って来いよ。」

 

仁絵が割って入るように風丘の言葉を遮った。

 

「え」

 

「半月くらいろくに会ってなかったじゃん。久々にイチャイチャしてくれば。」

 

仁絵の後押しに、空城はより乗り気になっていく。

 

「おー! さっすが仁絵! 気が利くっ」

 

「俺は夕飯適当に食べるから。ってか夜泊めれば?

俺邪魔だろうから洲矢か夜須斗んち行くわ。」

 

「え、でもそんな今日の今日で…」

 

「へーきへーき。ま、どうしても行き場所見つかんなかったら連絡入れるから、

空城んち行くかどっかホテルでも取って(笑)」

 

とっとと着替えろ、と風丘の背を押し部屋に追い立て、

着替えて出てきた風丘は、ここまでされれば、じゃあ…、とやっとその気になり、

空城と連れ立って出かけて行った。

 

 

 

「あー、ったく…柄にもないことするもんじゃねーな」

 

二人が出掛けて行って静まり返ったリビングに、仁絵の呟きがこだまする。

 

そりゃあ風丘のハードワークが終わるのを

誰よりも待ち焦がれていたのは空城のはずだ。

あそこで「今日はもう夕飯の準備してある」

「夕飯は一緒に自分の作った料理を食べよう」なんて

水を差すようなこと言えるはずがない。

風丘だって、仁絵がレシピを見て初めて作ったローストビーフなんかより、

大切な人と良い店で美味しい料理を食べた方がこれまでの疲れも癒されるだろう。

 

「はぁ… なんで俺へこんでんの? ダッサ…」

 

全部少し考えれば分かる自明のことだ。

分かっている。

なのにこんなにイライラして、ダメージを受けている自分が気持ち悪い。

悔しいとか寂しいとか、これではまるで恋人に家族を取られたようではないか。

別に本当の家族でもないのに。

 

仁絵がふと顔を上げると、

リビングのテレビに、先ほどまで風丘がいじっていた録画番組の一覧画面が映っていた。

追い立てるように家から出したから、テレビはつけっぱなしだ。

ほぼほぼ映画とたまにドラマが並ぶ番組の一覧の中に、

数件異色を放つバラエティー番組があった。

それは、空城が見るために録ったものだ。

空城は家に録画機器がないらしく、

録画したいものがあると風丘や仁絵に連絡してきて録画を頼み、

たまに訪れた時にそれを消化していった。

仁絵はそもそも録画してまでテレビを見ようという感覚があまりないし、

風丘とは番組の好みがまるで違うから、一目で分かる。

 

空城は悪くない。だって風丘の恋人という唯一無二の存在だ。

分かっている。

でも、それでも空城にほんの少し、

このイラつきの矛先が向いてしまうのは許してほしい。

子供じみた報復だけれども、勢いだった。

仁絵はリモコンを手にし、並んだ録画番組一覧の中から、

バラエティー番組を一つ、消去した。

 

 

 

あまりにも幼稚な自分の行いに更にへこんで

2時間ほどふて寝していた仁絵だったが、

夕方5時を告げるチャイムを合図に起き上がって向かったのはキッチンだった。

 

「…で、これどうするかなぁ…。」

 

冷蔵庫の中には、一晩寝かせたローストビーフと、

今朝風丘が起きてくる前に副菜として出そうと思って作っておいた

スパニッシュオムレツの卵液。

ローストビーフはさすがに勿体ない。もう一晩ならいけるか…? 

ただ明日どう説明してこれを出すか…と悩みながら、

とりあえず卵液を手に取った。さすがにこれはもう溶いてしまっているし、

調味料も混ぜているし、このままというわけにもいかない。

かといって今更焼く気力もない。

 

「んー…」

 

良くないこととは分かっているが、仁絵は卵液が入ったボウルをシンクに傾けた。

卵液が傾き、ボウルを流れてシンクに少し流れたその時だった。

 

「何してるの?」

 

「うわぁぁっ!?」

 

突然背後から話しかけられ、仁絵はとっさにボウルをシンク横に戻した。

振り返ると、少し怒ったような困ったような顔をした風丘が立っていた。

 

「え、なんで…」

 

まだ外食してきたにしては早すぎる。

目を丸くする仁絵だが、風丘は仁絵の問いには答えずに、

シンク横に置かれた、先ほどの仁絵の所業により

淵から少し卵液が流れた跡のついたボウルを手に取った。

 

「これなーに?」

 

「え、いや…俺の夕飯に…オムレツでも…作ろうかと…」

 

「いや、どう考えても一人分じゃないでしょ(笑)」

 

「腹減ってたから…」

 

最初はありえないタイミングで現れた風丘への驚きが勝っていたが、

だんだんと最悪のタイミングで見つかってしまった気まずさで俯く仁絵。

そんな様子の仁絵に、風丘は穏やかに尋ねた。

 

「仁絵君、今日の夕飯、もう準備してくれてたでしょ?」

 

「えっ…」

 

「実は今日、明け方1回起きちゃってね。

お茶でも飲もうかなぁって冷蔵庫開けた時に、見慣れないタッパーが入ってたから…

好奇心でこっそり開けちゃったんだー。」

 

「な…」

 

それはごめんね?と謝って、風丘は続ける。

 

「そしたら、ローストビーフ漬け込んでるやつだったから。

あぁ、ごちそう作ってくれてるのかなぁって

聞いてもいないのに勝手に嬉しくなっちゃって。

でも、みらちゃんが来た時、遠慮してそのこと言わなかったでしょ。」

 

「いや、だって、俺なんかが見様見真似で作ったローストビーフなんかより、

店で美味いもん二人で食った方が…」

 

仁絵が俯きながらそんなことを宣った時、

もう一人が現れ、思いっきり仁絵の背を叩いた。

 

「いって!?」

 

「バカ仁絵、そんな大事なこと隠してないで早く言って!

私明日朝から仕事なんだぞ、仁絵のローストビーフ食べ損ねるとこだったじゃん!!」

 

「…は?」

 

呆気にとられる仁絵に、風丘が笑う。

 

「出掛けた先でみらちゃんにその話したら、俺が夕飯は家に帰ろうって提案する前に、

みらちゃんから外食のキャンセルが入りました。

と、いうわけで。」

 

風丘は仁絵にニコッと笑って言った。

 

「俺も一緒に準備するから、指示くれるかな? 今日の夕食当番さん。」

 

いきなりの展開に、それを「嬉しい」と感じてしまっている自分が気恥ずかしくて、

仁絵は声にすることなくこくりと頷いた。

 

 

 

「お、おいしそ~~~~~~!!!」

 

ローストビーフにスパニッシュオムレツ、

風丘が追加で作ったミネストローネスープという豪華な料理が並び、

空城が目をキラキラさせる。

 

「いやー、ほんと、安易に外食する前でほんとよかった~~~」

 

「いや、店の料理のが…」

 

仁絵の言葉に、空城が分かってないなぁ、と熱弁する。

 

「このメニューを一度に食べて美味しさを味わえるのはここだけだから!

大体私は、二人が作った料理をこの家で食べるのが

一番美味しいって心底思ってるから!」

 

「そ、そりゃどーも…」

 

空城のストレートな誉め言葉に仁絵がどもると、風丘が噴き出す。

 

「フフッ、仁絵君照れてる♪」

 

「っ違う!」

 

言葉で否定しても、うっすら紅潮した頬は隠せていない。

仁絵は、自分の頬の赤さと、

大事なことをいくつか都合よく忘れてしまっていることに気付いていないのだった。

 

 

 

「ふぅー 食べた食べた、おいしかったぁっ」

 

夕食を終え、少し酒が入ってより上機嫌になった空城は満足げにソファにドカッと座り、

リモコンを手に取る。

 

「そういえば葉月、なんでお酒飲まなかったの? 

持って来いのメニューだったじゃん。

明日だって休みでしょ?」

 

「あぁ、それは…」

 

視線はテレビ画面のまま、何気なく投げかけられた空城の問いに、

風丘が口を開いたのだが。

 

「あぁぁぁぁぁ!!!???」

 

答える前に、空城の悲鳴にかき消された。

 

「え、どうしたの、みらちゃん…」

 

「…えてる…」

 

「なんだよ、いきなり…あ。」

 

後片付けを終え、空城の悲鳴を聞いてリビングに戻ってきた仁絵は、

その光景を見てやばい、と固まった。

テレビ画面に映っていたのは録画番組の一覧。

 

「〇●トーークの特番が消えてるぅぅぅぅっ!!! なんで!? 

葉月にちょっと前に録画頼んだよね!?

まさか録り忘れたのか!?」

 

「えぇ? それって先月の3時間スペシャルでしょ? 

ちゃんと録ったし、

何なら俺が昼間別の録画見たときリストの中にあったけど…あ。」

 

そう言いながら、風丘は何かにピンと来て、

今一番話題を振られたくないだろうこの場にいるもう一人に問いかけた。

 

「仁絵君? 何か知ってる?」

 

「え、いや…」

 

仁絵は口ごもる。

これは状況が悪すぎる。

空城本人がまだ見てもいない録画を消すはずがないし、

風丘はその番組が出掛ける直前まで存在していたことを覚えている。

間違えて消してしまったと言うか?

でも結局、消した事実に変わりはなく空城が怒るのは目に見えてるし、

言わずに隠していた、となって結果は変わらない気がする。

ぐるぐる思い悩んでも、結論としては言い逃れのしようがない。

さしもの仁絵も白旗を上げた。

 

「俺が…ちょっと…」

 

「な、なんっ…」

 

なんで、と空城が詰め寄ろうとしたが、

それは間に入った風丘によって阻まれ、

代わりにあーあー、と緩い風丘の声が仁絵に向けられた。

 

「もう一つお仕置きのタネ増えちゃったねぇ。」

 

「っ!?」

「え? もう一つ? 仁絵なんかやらかしてんの?」

 

ほぼほぼ感付かれている仲とはいえ、

空城の前ではっきり「お仕置き」を宣言されて面食らって赤面する仁絵と、

予想外の展開に毒気を抜かれた空城。

固まる仁絵に、風丘は緩い調子のまま容赦なく指摘した。

 

「オムレツの卵液捨てようとしたこと、忘れてないよねぇ?」

 

都合よく頭の隅も隅に追いやっていた事実。

いきなりこの場で持ち出されるとは思っていなくて、

心の準備ができていなかったことも手伝って言い逃れが口をつく。

 

「で、でもちょっとだけ…」

 

「俺が来なかったら全部捨ててたでしょ。」

 

「う…」

 

反論はあっさり封じられ、仁絵は言葉を失う。

 

「はい、じゃあさすがにここじゃかわいそうだからね、仁絵。お部屋行くよ。」

 

「や…」

 

「やじゃありません。はい、おいでー。」

 

風丘は逃げようと一瞬後ずさった仁絵の腕を取り、リビングの出口に向かって歩き出す。

 

「あぁ、そうか!」

 

ここで、いきなり納得した、と空城の痛烈な一言が放たれた。

 

「仁絵をお仕置きする予定があったから葉月お酒飲まなかったのか。」

 

「っ…」

「(苦笑)」

 

こんなにすぐバレるのなら録画番組1つといわず全部消せばよかった、と

空城の言葉に苦笑する風丘に連行されながら、

空気を読まない無神経な空城を睨む仁絵だった。

「ミャケ~ トラ~ タマ~ 遅くなってごめんね、ご飯だよ~」

6月に入り、梅雨の足音が近づいてきた頃。

 

ある日の昼休みも後半、洲矢は校庭から保健室のベランダに向かい、3匹の名前を呼んだ。
中学生の頃、大分痛い思いをしながら校内で飼う許可を勝ち取った3匹の猫たちは、その後もすくすく成長していた。
普段は保健室教師の雨澤や、何だかんだ校医の雲居が面倒を見てくれて、
洲矢が熱心に通っている以外、4人や猫の存在を知っている生徒たちは気が向いたときに構いに行く程度だったが、
気まぐれな猫たちにはそれがちょうどいいようで、平和に飼われていた。

 

この日は、雨澤が休みの日で、雲居も午後にならないと来られない。
洲矢はそのことを昨日雨澤から聞いていて、昼ご飯をあげに行かなきゃと思っていたのにすっかり忘れてしまった。
急ぎ保健室のベランダに向かい、3匹の定位置の寝床を覗いた時だった。

「トラ…? え、トラは!?」

三毛猫のミャケと白猫のタマは寝床で丸くなっているが、トラ猫のトラがいない。
辺りを見回してもそれらしい影はない。

「どうしよう… ご飯探しに行っちゃったのかな…」

元々トラは他の2匹に比べて活発で、
どこからかトカゲやらヤモリやらを捕まえてきて女子たちを絶叫させていることもあった。
いつもの時間にご飯が来ないから、獲物を探しに行ってしまったのだろうか。
このまま待っていて帰ってくればいいが、そんな保証もない。
ここ数年おとなしく飼われているものの、本能的には3匹とも野良猫だ。


「校内だけでも…探してみようかな…」

何かあったら遅い。洲矢はそう思い、とりあえず用意したご飯を置いて2匹の頭を撫でると、トラ探しに出発した。



「トラ~ トラどこ~!? ご飯あげるからお家もどろ~!」

3匹は飼われ始めてから雨澤が校舎に入らないよう厳しく躾たようで、
今では決して校舎の中には入ろうとしない。
洲矢はいるなら外だろうと見当をつけ、
トラの名前を呼びながら、猫が好みそうな隠れる場所の多い校庭の隅を中心に歩き回っていた。
そして十数分が経過した頃、突然

“ニャァー”

「トラ!?」

猫の鳴き声が聞こえた。振り返ると、校庭と外の道路を隔てる塀の上にトラの姿。
洲矢はギョッとして、慌ててトラを呼ぶ。

「えっ、こらトラ、ダメだよ、こっちおいで!」

手招きをするものの、トラは洲矢をじっと見つめて動かない。

「もー、トラ!!」

そして、焦る洲矢をからかうつもりか、普段自分を叱らない洲矢に大きい声で呼ばれたのが癪だったのか。
トラの気持ちは分からないが、トラは柵から、なんと道路側に降りてしまった。

「ちょっ…トラ待って!!」

洲矢は意外と思い立ったら即行動派だ。
トラが飛び降りたのを見て、一目散に一番近い校門に走った。
午後の授業開始5分前の予鈴が鳴っていたことも、
雲行きが怪しく西の空には真っ黒な雲が浮かんでいることも、
携帯電話は教室の机の中に入れっぱなしのことも、頭の中には1ミリもなかったのだった。



「なー、洲矢遅くね?」

授業開始10分前。
空が暗くなってきたからと早めに屋上から引き上げてきた4人だが、教室にまだ洲矢の姿はなかった。

「まだミャケたちに夢中なんじゃない? 洲矢大好きだよねー」

「いやー、マジであいつらのために俺らはケツを犠牲にしたからな…」

惣一が遠い目をすると、つばめも横でうんうん、と頷く。
何回その話するんだ、と仁絵が苦笑しながら2人に突っ込むのを聞きつつ、
夜須斗も内心あの時のことを思いだしてため息をつき、自分の携帯を手に取った。

「今日雨澤いないからそろそろって声掛けてくれるのがいないんじゃない?
とりあえずメッセージ…ってあいつ携帯置きっぱなしじゃん…」

机の中にある洲矢の携帯が見えて、夜須斗はあーあ、と携帯を机に置く。

「ほっとけよー、予鈴鳴ったら気付くだろ。」

「そーそー、遅刻したって数分でしょ。次の授業水池だし、大丈夫だって!」

惣一とつばめの言葉に、夜須斗がそれもそうか、と思い直したタイミングで予鈴が鳴る。
すると、1人ぼんやり窓の外を眺めていた仁絵がボソッと呟いた。

「悪ぃ、夜須斗。俺5限洲矢とサボり。水池誤魔化しといて。」

「はぁ? 仁絵、洲矢どこにいるのか知ってんの?」

「これから探す。」

「「「…はぁ?」」」

置いてけぼりの3人に目もくれず、
仁絵は教室の出口にある傘立てからもはや持ち主不明の使い古されたビニール傘を1本手に取り、
教室から出て行った。
ちょうど授業に向かう水池にその姿を見られ背中越しに声をかけられたが、
聞こえないふりをして、玄関に向かった。

 

 

仁絵が眺めていた窓から見えたのは、校門に向かって走る洲矢の姿だった。
大方、猫が逃げでもしたのだろう。
放っておけば良いとも思ったが、周りが見えていない洲矢の危なっかしさを仁絵はよく知っていた。
猫のことになるとかなり無我夢中になる様子だし、携帯も持っていないし、万が一のこともある。
水池の授業と天秤にかけたら即決でこちらを取ってしまった何だかんだお人好しの仁絵だった。



「さて…どう探すか…って…これしかないか…」

校門を出てどちら側に曲がったかまでは視認していた。
そして、ここからは…。
仁絵は息をつくと、制服のポケットから携帯を取り出して何やらメッセージを打ちつつ、校門を出た。




 

「トラ! 待ってぇ~~~(涙)」

一方洲矢は、何とか校門を出て少ししたところでトラを見つけたものの、
トラは走り出して全然止まってくれない。
体育があまり得意でない洲矢は、周囲の人には目もくれず、必死ですばしこいトラを追っていた。
しかし、なかなか追い付けない。
これがつばめならあっという間に追い付けるのに!と心の中で思うもののどうしようもない。
そんな折、追い討ちをかけるようにポツポツと雨が降り出した。


「うわ、雨っ…」

しかも雨はあっという間に勢いを増してくる。
すると、トラも濡れるのを嫌がったのか、路地裏に入り、
そのまま突き当たりにある、古ぼけた「テナント募集中」の看板と、
後から付け足されたのか鎖に「立ち入り禁止」の看板がくくりつけられた
いかにも廃墟風の建物の中に入って行ってしまった。


「ちょ、ちょっとトラダメだよーーっ」

洲矢も流石に一瞬躊躇ったが、結局そのまま追って、建物の中に入った。



「もーっ、トラ… 追いかけっこしたかったの?」

建物の中に入って、しばらくしてすぐトラは捕まった。
満足したのか洲矢を見ても逃げないどころか自ら洲矢にすり寄ってきたのだ。
洲矢は脱力しつつも安心して、トラを抱き上げた。

「それにしても困ったねぇ…外大雨だ…」

傘も当然持ってきていないし、ここでようやく、携帯を教室に置きっぱなしなことにも気が付いた。
あー、これは怒られる…と、内心焦ったが、今この天気の中出て行ってトラをずぶ濡れにするわけにもいかない。
落ち着くまでここにいるしかないか…、と洲矢がトラを抱きしめて座り込んだ時だった。

「ったくいきなり降りすぎだろ」
「濡れたー うぜー」
「タバコ無事ー?」

「!!!」

洲矢が座り込んだ場所からほど近いところに、柄の悪い男が4人ほど入ってきた。
ほぼ全員いきなりタバコを吸い出したが、制服を着ているから高校生のようだ。
勝手知ったる、という感じなので、いつもたまり場にしているのだろう。

(どうしよう…。)

勝手に入り(それ自体は向こうも一緒だろうが何となく)、
タバコを吸っているところを見てしまった。
バレたらまずいかも、と洲矢が困り果てて縮こまって必死に考えを巡らせている時だった。

“ニャァー”

「ちょっ!! トラ!!?? ヤバッ…」


突然トラが鳴き声を上げた。それに慌てて洲矢も声を上げてしまい、
咄嗟に自分とトラの口を押さえるがもう遅い。


「なんだお前!」

あっさり見つかってしまい、洲矢が涙目で何も言えずにいると、どんどん男たちが詰め寄ってくる。

「何勝手に入って見てんだよ!」

「ご、ごめっ…」

「口止め料。財布置いてけよお坊ちゃん。」

「お、お財布、今持ってなくてっ…」

「あ゛あ゛!? 金がないなら、痛い目見てもらうしかねぇなぁ?」

そう言って男の1人が洲矢の胸ぐらを掴もうと近づいた時だった。

ガンッ

「ってぇっ!?」

どこからともなく飛んできたのはビニール傘。
洲矢に近づく男の体に当たり、男がよろめいて後ずさる。

「その辺にしろよ。そんなの殴ったって張り合いねぇだろ。」

そう言って暗がりから出てきたのは仁絵だった。

「ひ、ひーくんっ」

「あんまりこういう場面で気安く呼ぶなって…」

仁絵はため息をついて、男たちに向き直る。

「お、お前、女王っ…」

そう呼ばれ、仁絵が眉間に皺を寄せてそのかつての二つ名を呼んだ男を睨むと、男はすぐに口を噤んだ。
仁絵は男と洲矢の間に落ちたビニール傘を取り上げると、自分の背後に洲矢を隠す。

「たまり場荒らして悪かったな。こいつは連れて帰るから。」

「あっ…もしかしてメッセージのっ…」

そう言って一番後ろに控えていた男が携帯を取り出そうとすると、
仁絵は持っていたビニール傘を振り上げ突然床を叩いた。


ビシィィィンッ

「ひぃっ!?」

「メッセージ、読んだらすぐ消せって書いてあったと思うけど?」

「け、消します消しますごめんなさいっ」

「勝手に入り込んだのはこっちだから、ここのことは口外しない。
その代わり、そっちもこっちのことを誰にも話すなよ。」

そう言って、仁絵は髪をかき上げながら微笑んだ。

「俺もう、喧嘩したくないから。」





「ありがとう。またひーくんに助けられちゃった。」

「まぁ、勝手に追っかけただけだけどな。」

あの後、固まる男たちを残して仁絵は洲矢を連れて廃墟を出た。
床をぶっ叩いたビニール傘は、骨が曲がったものの何とか無事で、2人仲良く傘に収まって学校に戻っている。

「どうして分かったの?」

「まぁ、昔の嫌なネットワーク使ってな。
昔知り合って、俺にびびって敵対してこない奴ら何人かに、
制服姿で猫追いかけてる浮いてるヤツいたら連絡しろってメッセージ送った。」

「それで、さっきの人もメッセージ、って…。」

「昔の繋がりはあんまり使いたくねーんだけど…、
この時間帯にうろついてるヤツを探すんだったらそれが一番手っ取り早いからな。
…これ、風丘には黙っとけよ。面倒くさいから。」

「うん。分かった。…風丘先生に、怒られるかなぁ…。」

「…だろーな。水池は夜須斗に頼んできたけど、風丘は最初から諦めた。」

時間は帰りのホームルームも終わって完全に放課後になっている。
実は仁絵の携帯にはもう数件風丘からの着信と留守電が入っていたが、
どうせこの後説明させられるのだから面倒なことは後回しにしようと、見て見ぬ振りをしていた。

「まぁ、結果的にはただのサボりだしそんな厳しくされねーだろ。」

「うぅ…そうかなぁ…」

不安げにトラを抱きしめて俯きながら歩く洲矢に、そう思うなら追いかける前に相談をしろとも言いたくなるが、
意外と猪突猛進なのが洲矢だしな、と仁絵は1人納得し、洲矢の腕の中にいるトラの額をくすぐった。

「ったく…お前のために洲矢が尻叩かれんの2回目なんだからな。お前もちょっとは反省しろ。」

“ニャーン”

「もう…2人とも意地悪…」

ストレートに言ってくれた仁絵と暢気に鳴くトラを、恨めしそうに見つめる洲矢なのだった。




 

「佐土原…柳宮寺…全く2人とも…」

学校に戻った途端、玄関で待ち構えていた風丘に部屋まで連行され、部屋に着くなり説明を求められ、
しどろもどろの洲矢と淡々と話す仁絵の説明が終わった途端、お説教が始まった。

「先生ごめんなさい…」

「佐土原、思い立ったらすぐ行動って良い時と悪い時があるよって言ったでしょう。
今回みたいなことは、まず相談して欲しかった。
僕らが捕まらなくても、誰かに何か一言残していくとか。」

「はい…。」

洲矢が申し訳なさそうに俯く隣で、仁絵は気怠げに立っている。
その姿を見て、風丘は苦笑いして仁絵に呼びかける。

「柳宮寺はもうちょっと反省してるフリできないのかなー?」

「いや、別にただのサボりじゃん。俺ちゃんと連絡したし。」

「あのねぇ…。『俺と洲矢5限からサボり』ってだけのメッセージ、
何にも説明になってないんですけど。」

「風丘嘘ついたらよけい怒るから、正直にサボりって言ったんじゃん。
説明はどうせ後でさせられるから割愛。」

全く悪びれない仁絵に、ハァ、と息をつきつつ風丘も笑った。

「まぁ、嘘つきのお仕置きは厳しいからね。それを覚えててくれてるだけ成長としますか。
でもお仕置きはするよ、とりあえず柳宮寺おいで。」

風丘が仁絵を呼ぶと、慌てて洲矢が割って入る。

「せ、先生待って、ひーくんは僕を心配して来てくれただけですっ」

「そうだねー。でも、サボりはサボりでしょう。柳宮寺もそれぐらいの覚悟はした上での行動だっただろうし。」

「いや、まぁ…。」

「サボりのお仕置きは佐土原にもするからそこは平等にしなくちゃね。
あー、じゃあ2人一緒にする? そこのテーブルに手着いて。」

「いやそれは…」
「せ、せんせぇ僕そんなつもりじゃ」

突然の提案に仁絵は面くらい、洲矢は余計に仁絵に嫌な思いをさせてしまうと狼狽える。

「2人仲良く受けるなら服の上から物差しで5発にしてあげる。」

風丘に続けざまに迫られ、最初に諦めたのは仁絵だった。
息をつくと、洲矢の腕を取って風丘に示されたローテーブルまで連れて行き、自分はさっさと手をつく。

「とろいと服下ろせって言ってくるぞ。」

「う、うん…」

仁絵の反応に驚きつつも洲矢は急いで自分も手をついた。

「はい、よく出来ました。」

ビシィィィンッ ビシィィィンッ

「っ…」「いたぁぁぁぃっ」

ビシィィィンッ ビシィィィンッ

「ぅ…」「いたいぃぃっ」

仁絵は身動ぐもののほとんど声を出さないが、洲矢はすぐに悲鳴を上げた。
お仕置き経験が少ない上に、やっぱり相手は洲矢といえど風丘は威力を高校生仕様にきっちり上げている。

ビシィンッビシィンッ ビシィンッビシィンッ
「っく…」「うぅぅ…いたぁぃっ…」

右左と連打の後に最後の1発。

「さーいご。」

ビシィィィィンッ ビシィィィィンッ

「っぁっ…」「やぁぁぁっ」

ちょうどお尻の天辺にクリーンヒットの一撃をもらって、サボりのお仕置きは終わった。

カタン、と風丘が物差しを2人が手をついていたローテーブルに置き、2人の背中を叩く。

「そしたら仁絵君はもうおしまい。どんな理由があれ、サボったらお仕置きなんだから、程々にね。」

「ん。…洲矢。先出てる。」

「うん…」

不安そうな瞳の洲矢を見て、仁絵は少し意地悪な笑みを浮かべて言った。

「待ってるよ。その間にもう1人の戦犯いじめてるわ。」

「そ、それはダメぇっ」

慌てて声を上げる洲矢に、仁絵は冗談だよ、と吹き出す。

「とっとと終わらせて早く来いよ。」

そう言って、部屋を出ていった。





「さて、後は佐土原は黙って学校出て行ったお仕置きね。
今回は仁絵君が気付いてくれたからいいけど、心配するでしょう。」

「はい…先生、ごめんなさい…。」

「ちゃんとすぐ反省してごめんなさい言えるのは佐土原の良いところなんだけどね。
今日はちゃんとお仕置きするよ。はい、お膝おいで。」

ソファーに座った風丘の膝に恐る恐る乗ると、
あっという間に履いているものを全て下ろされ、赤い筋がうっすら入ったお尻が露わになる。
洲矢が身を固くしていると、頭上から思ったよりも厳しい風丘の声が降ってきた。


「そうだねぇ…あと30発と仕上げ、ってところだね。
でも…佐土原にもそろそろこの『思い立ったら即行動!』の
危なっかしいところ考えられるようになって欲しいから、
いつもよりもちょっと痛くしようかな。
今度何か行動する前に、もうあんな痛いのやだ、って思えるようにね。」


「えっ…せんせっ…」

洲矢が振り返ろうとしたが、それよりも先に痛みが襲ってきた。

バチィンッバチィンッバチィンッバチィンッバチィンッ

バチィンッバチィンッバチィンッバチィンッバチィンッ

「っ…!?!? いやぁぁぁぁぁっ」

息つく間もない10連打に、洲矢は一瞬息が詰まり、その後大声を上げた。
間違いなく今まで洲矢が経験したお仕置きで一番の痛みだった。
痛みを感じた瞬間に次の痛みで上書きされて、
10回分の平手が蓄積された痛みはお仕置き経験の少ない洲矢には衝撃的なものだった。


「せんせっ…それやっ…もういやぁっ…」

ポロポロと泣きながら訴えるが、これで絆されてくれるほど風丘は甘くない。

「ダメだよ。これをあと2セット。」

「ちゃんとっ…ちゃんと受けるからっ…その叩き方は嫌ですぅっ…」

「ダーメ。嫌だからお仕置きになるんでしょう。はい、我慢ねー。」

洲矢の訴えは無情にも受け流され、次の連打が始まってしまった。

バチィンッバチィンッバチィンッバチィンッバチィンッ

バチィンッバチィンッバチィンッバチィンッバチィンッ

「いたぁぁぁぃぃっ もういやぁぁぁっ」

「あー、こらこら、あんまり暴れない。」

珍しく洲矢がなりふり構わず足をバタバタさせるので、
風丘は少し驚きながら、押さえ込んで両の太ももをペシペシ叩いて注意する。


「あんまりイヤイヤしてると最後の1セットの平手、厳しくしちゃおうかな?」

「っ!!?? いやぁっ…もう無理ぃぃ…」

「この痛いお仕置き、ちゃんと覚えておこうね。」

風丘の膝の上でシクシク泣く洲矢の頭を撫でながら、風丘はしっかり最後の連打の手を振り上げた。

バチィンッバチィンッバチィンッバチィンッバチィンッ

バチィンッバチィンッバチィンッバチィンッバチィンッ

「うわぁぁぁぁぁんっ」

3セット目の10連打が終わると、洲矢は大泣きで風丘の膝からずり落ち、しがみついて更に泣いた。
よほど痛かったのだろう。目を真っ赤にして泣きはらす洲矢に、風丘は困ったように呼びかけた。

「佐土原。」

「!? せんせっ…なんでっ…」

まだ名字で呼ばれたことに、洲矢は涙いっぱいの大きな目を更に見開いて、
信じられないものを見た、という驚愕の顔をした。

「まだ仕上げがあるよ。ここから、1つ選んで、それで3発。物差しはさっき使ったからそれ以外ね。」

「そんなっ…もう無理ぃ…」

ソファ横に置いてあった衣装ケースの蓋を開けて指し示され、洲矢は悲痛の声を上げた。
中身は、物差しがまだマシと思えるほどの凶器の数々。

「せんせぇ…」

「…しょうがない。そしたらあんまり痛くないのを俺が選んであげるから。」

衣装ケースから顔を背けてしまった洲矢を見て、
風丘が苦笑いで衣装ケースから取り出したのはスリッパだった。
一度仁絵に使ったとき、音が大きくて仁絵曰く「恥ずかしいからやだ」な道具らしいが、
痛みはそうでもなかったらしい。
痛みに強い仁絵の意見ではあるが、まぁ靴ベラや洋服ブラシよりはマシだろう。


「はーい、おいで。」

「いや、もう痛いの嫌です~~~」

引っ張り上げられ、再び膝の上にセットされながら、最後の懇願をする洲矢だったが、
ろくな抵抗にもならず、すぐに仕上げの3発がお見舞いされた。

パチィィンッ パチィィンッ パチィィィンッ

「あぁぁぁんっ ごめんなさいぃぃぃっ」

洲矢の泣きながらの「ごめんなさい」を聞いて、
大泣きしながらも最後はちゃんと謝るのが洲矢らしいな、と風丘は微笑ましく思うのだった。







「…で? これどういう状況?」

猫たちにちょっかいをかけつつ待っていた仁絵が、意外と長いな…と思い始めていた頃。

 

突然風丘から「ごめん仁絵君、ちょっとヘルプー」という
これこそ「何にも説明になっていない」メッセージが届き、仁絵が風丘の部屋に戻ってみると、
目を真っ赤にした洲矢が駆け寄ってきて仁絵の背中にしがみついた。

「ちょっとお仕置き厳しかったからかなぁ…。怖がられちゃって。」

仕上げ終わった瞬間、お尻しまって膝から降りて、こんな調子なんだよねぇ、
と言う風丘に、仁絵が目を丸くする。

「は? 厳しくしたの? 何で?」

「ひーくん嘘つきだった…」

「え、いや…」

予想が外れて驚く仁絵に、洲矢がボソッと拗ねたように言って、仁絵も困ってしまう。
そのやり取りを聞いて、あー、と風丘は困ったように笑った。

「洲矢君が後先考えないで行動しちゃうの、結構危なっかしいって前から思ってたからね。
今回ちゃんとお灸を据えておこうと思ったんだけど…タイミングが悪かったかな。」

「あー…」

むしろ自分が余計なことを言ったな、と仁絵は頭をかき、背後霊のように動かない洲矢に声をかけた。

「尻冷やしたのかよ。厳しかったんだろ。」

「…まだ。」

「ちゃんとやってもらえよ。散々引っぱたいてきたのはあっちなんだから。」

「うぅ…先生怒ってる…」

「いやもうどう見ても怒ってねーだろ。ほら…」

仁絵が洲矢を風丘の前に連れて行く。
洲矢が仁絵の後ろから顔を出し、怖ず怖ずと風丘を見上げる。

「あの…せんせっ…」

「そんなに怖がらないで。もうお仕置きはおしまい!」

そう言って風丘が頭をポンポンと撫でると、
ようやく安心したのか洲矢はまた涙をこぼして、
「先生ごめんなさい~~~」と泣きながら抱きついた。
それを見届けた仁絵がそっと部屋を出た後、
やっと洲矢は真っ赤なお尻を冷やしてもらい、痛ーいお仕置きは幕を閉じたのだった。




 

とは言え、洲矢にとってあのお仕置きは風丘の狙い以上の効果を発揮してしまい、
しばらく自分だけではなく、惣一たち4人までもお仕置きを受ける事態を回避させるべく、
4人がちょっとした悪さをしようとすると半泣きで制止する洲矢、
という図が続くことになった。

その間仁絵は、洲矢のプライドを守るため直接聞かなかったものの、
(風丘のヤロー、洲矢に何したんだ…)と独り考えあぐねる日々なのだった。

ブログでの正式な告知がめっちゃ遅くなってしまい申し訳ありません泣くうさぎ

日程アンケートご協力ありがとうございましたビックリマーク

 

「ゴールデンウィークなので久々のツイキャス」
予定日時:5月4日 木曜日 21:30頃~(終了時間未定)←当初予定より少し遅くなりそうです💦

主な内容:フリートーク(マシュマロに来た質問等)・話すネタ用に用意したいくつかの100の質問回答しながらだらだらおしゃべり

URL : http://twitcasting.tv/tsubameshirase
閲覧パスワード:spa

 

今回はぐだぐだになりそうなので

バックナンバーは全部残すかはちょっと未定です💦

(*過去のツイキャスバックナンバーも近々整理予定です。)

また今回は今のところパソコンから配信予定ですが

久し振りなのとそもそもパソコンが古いのとで

序盤音量調整とかが頻繁かもしれませんがご了承くださいあせる

 

そして、質問は匿名メッセージサービス「マシュマロ」で受付中です音譜

個人情報に関わることを除いて(笑)

基本全てにお答えしようと思ってますので、

よろしければ下記からご質問くださいニコニコ

キャス中リアルタイムでも大丈夫ですビックリマーク

https://marshmallow-qa.com/tsubameshirase

 

マシュマロがうまく使えない場合は、ブログのコメントでもOKです。

(白瀬が承認しなければ公開されないのでご安心くださいー)

それでは、ご都合つく方、是非流し聴きしてやってください(笑)

コメント・マシュマロ等で参加していただけると更に喜びますほっこり