京都の町をぶらついてみると、やはり人が蟻みたいにうじゃうじゃいて、それにバスやら車やら人力車やら原付やらが、慌ただしく道路を走っていた。
とりあえず、明日の祇園際に向けて、今日一日何とかして潰さないといけない。あとお金は一万円ちょっとあるだけで、食料はあるけど、水は買わなきゃだし、あと、出発したときからずっと同じ服だから、少し黄ばんできてるし、べとべとするし、汗臭いから、パリッとした新品の服が着たいし、あと、このキナ臭い体を何とかしたかった。あとはできることならふかふかのぽよぽよに体を埋めさせて寝たかった。
たった2日間の旅で僕は、挙げればきりがない程あと、あとって、欲求が発生していることに気づいた。そりゃあ金持ちの豪華旅行だったら毎食美味しいもん食べて有名な観光地に行っちゃったりして、買い物なんかもして、最高級のホテルに泊まってみたいな感じだけど、極貧で若いってだけが取り柄の僕らには、あとお金がいくらあって、今日は泊まれそうな公園があるのかとか、できることならお風呂に浸かって、あ~極楽極楽なんて言っちゃったりしたいけど、今はそんな最低限度の欲求すら叶えられそうにない僕らはとりあえず、今日眠れそうなところだけは探そうと決意した。
ここらへんの道は何一つ知らない僕らは、適当にぶらぶらと歩いた。まだ昼の三時だし、明日までは結構な時間があったから、とりとめもなくぶらぶらと歩いた。すると、近くに少し古びた昔ながらの銭湯があった。僕はその姿を捉えると、今さっき封印したばかりの欲求が、やあこんにちは、と僕の横に現れていた。そんな素直に欲求が出てきたんじゃあ、公園の水で体を洗うなんてしょぼいことはできやしない。
「先輩、銭湯行きましょう」
「体べたべたしてるしな」
先輩もお風呂に浸かりたかったみたいだ。
「では、行きましょう」
「ちょっと待て、お前お金あったっけ?」
「へっ?」
この言葉ひとつで先輩と僕の主従関係はすぐにできあがる。
「お~か~ね~」
嫌みったらしく先輩は言いやがった。ただ、今はお風呂に入るためなら僕はウンコをしたあとの、それも下痢気味の時のおケツでも躊躇なくふくだろう。僕はすかさずいつものように先輩にべったりとくっつき取り入った。
「わかった、わかったから離れろって!べたべたするから!」
「あざーす」
というわけで、銭湯に入った。
お金を払い中に入ると、僕と先輩はすぐさま裸になり、体も洗わず湯の中にダイブした。湯に入った瞬間、僕らにこびりついていた疲れやら垢やらが一斉に取り払われて、空気のように体が軽くなったような気がした。そして自然と口からこぼれた、あ~、という言葉が僕らを至福と快楽の湯の中に溺れさせた。僕はこんなにもお風呂が気持ちいいもんだなんて初めて知った。
何回も出たり入ったりを繰り返し、お風呂を最大限に満喫したあと、僕らはピカピカにリフレッシュした体で、銭湯をあとにした。 外に出ると、少しだけ空は茜色に変わっていた。昼ごろのじめーっとした暑さはすっかり消えうせ、爽やかな夏風が僕らを出迎えてくれた。
「さて、今日の寝床を探しますか」
すっかり疲れも取れた僕らは、きびきびと歩き今日の寝床になりそうなところを探した。すると、探し始めて5分ぐらいで公園を見つけたので今日の寝床はあっさりと決定した。
茜色の夕日を見ながら、武田さんにもらったパンを食べ、楽しくおしゃべりしながら夜を迎えた。
「さて、もう寝るか」
「そうしましょうか」
「おやすみ」
今日はぐっすり眠れそうだった。
そんな時先輩の携帯がなった。