しばしの間、物思いに耽っていた。練習生と思われる車がコース内をぐるぐると回っていた。レーシングカーがコーナーでドリフトをする姿はとてもカッコよく、それにその時に発生する、タイヤと地面との摩擦音は豪快でいてとても気持ちがいい音だった。ただ、最初の三十分だけの話だけど。
言うまでもなく、僕は、F1には興味がなかった。
そして次第に眺めていることにすら飽きてきてしまった。なんていうか、言ってしまえば、そこはただのサーキット場だし、練習生と思われる人たちが走っているだけで、レースが行われているわけでもないし、それにレースクイーンがいなきゃあ僕らは、というか僕がここにくる理由なんてなきに等しかったからだ。僕はちょびっとだけ寂寥感に包まれていた。
「行きましょうか」
僕は先輩に言った。
「そうだな」
多分先輩も飽きていたんだと思う。
結局レースクイーンことサーキット場の天使たちを見ることができなかった。でも、今回は先輩を責めようとは思わなかった。先輩も結構ショックだったんだと思う。レースクイーンが見れなかったことが。先輩の顔は絶望とまでは言わないけど、三浪が決定した今年の春のときよりも悲しい顔をしてたから。
僕らは鈴鹿サーキットを後にして、ヒッチハイクを再開した。スケッチブックに、どこかへ、って書いて。僕らは一刻も早くここから抜け出したかった。早くしないと、レースクイーンを見れなかった後悔の念に駆られて膨れ上がった性欲にわが身を包まれそうだったから。先輩もこの時ばかりは真剣にヒッチハイクをしていた。すると一台の白い車が止まった。
「どこ行くんや?」
五十代ぐらいのおっちゃんだった。
「どこでもいいです。ここから移動できれば」
「今から滋賀の家まで帰るんやけど、それでもええか?」
「はい!」
僕らは車に乗り込んだ。車は滋賀に向けて出発した。
「兄さんらどこからきたんや?」
走り出した途端、おっちゃんは僕らにしゃべりかけてきた。
「愛知県の田舎の町です」
僕は答えた。
「へー、そうなんや。愛知ねー」
おっちゃんは愛知県に特に興味はなさそうな感じだった。
その後、何度か質問をされたんたんだけど、会話はあまり盛り上がることもなく、車内の空気はギクシャクしていた。僕は特に話すこともなかったから、流れているラジオでも聞いていた。ラジオでは、クイーンが流れていた。タイトルは忘れてしまったけど、以前ドラマの主題歌になっていたから、聞いたことがある歌だった。アイワズボーントゥーラブユウって歌だっけな?まぁ、とりあえず、それに耳を傾けていた。
先輩は会話をするのが面倒だったのか寝ているフリをしていた。
そして、走ること一時間ぐらいで、峠を越え滋賀県に突入した。更に車は三十分ほど進んだ。そして車は止まった。
「ここら辺でええか?」
「はい、ありがとうございました」
僕らはお礼を言い、車から降りた。
辺りは茜色の夕日に包まれていた。
看板を見ると、大津と書かれていた。
僕にはここがどこかよくわからなかった。